台風の去った後の空は、とても澄み渡っている。
色んなものを巻き上げていくし、雨風が強い厄介な台風だけれど、空にある不純物を取り除いてくれるのがいい点だ。 朝、学校へ向かう途中私は頻繁に空を見上げながら歩いた。 それは陽が落ちてからも変わらない。 部活が終わる頃には秋の空はすっかり暗くなっていて、しんとした寒さの中校門に向かいながら空を仰ぐととても綺麗に月が見えた。 街の明かりのせいで星はそれほど見えないけれど、それでも普段よりずっと多くの星が色濃く見える。 そんな中ふと、月の下に一際輝く一粒を見つけて私は思わず立ち止まった。 (あ、泣きボクロみたい) そう考えて一人で笑う。誰かに言いたい衝動に駆られたけれど生憎私は一人だった。 でもどうしてもこの気持ちを分かち合いたくて誰かにメールでもしようかと携帯を取り出すと、 「あれ、さんやん」と後ろから声が聞こえた。 「あ、白石くん。めっちゃええとこに」 「ん?何や困ってたん?」 「うん」 振り向くと立っていたのは大きくて重たそうなバックを背負って自転車をひく白石で、 私は(立ち止まってて良かった)と彼と出会えたタイミングに感謝する。 「あんな、見てあれ」と私の隣に並ぶ白石くんに『アレ』と月を指差すと、 私の指先を追って彼は空を見上げた。 「アレて…ユーフォーでも飛んどるん?」 「ちゃうよ、よく見て!月や月!」 「ん〜、満月近いなあ」 「あー駄目や白石くん、全然アカン」 「ええ、駄目出しされてもうた」 困ったような声色で、それでも何でか嬉しそうに笑う白石くんに「しゃあないなあ」 と今空で起こっている面白い(私の感覚で、だけれど)事を教えてあげようとすると、 彼は「待った」と言って私を見た。 「歩きながら考えるわ。正解出るまで一緒に帰らへん?」 「もしかして態とやってへん?」 「わざとやったらアカンの?」 しれっとそういう事を言うあたり、手馴れていると思ってしまう私は卑屈な女なのだろうか、 「全然」と言う口調が少しぶっきら棒で可愛げなかったかもしれない。 |