文化祭のクラス企画委員に謙也と一緒に選ばれた。 謙也の事が好きだった私はちょっと歓喜した。いつも明るく振舞っていてよかったと思う (盛り上げ役なら謙也とで満場一致、というのがクラスの意見だった)。 でも、ちょっと憂鬱でもある。 それは謙也が空気の読めない男だからだ。 「なあ、の好きなヤツ誰なん、うちのクラス?せめてヒント」 謙也はさっきからこればっかり。 クラス企画について考えていたはずなのに、いつの間にか謙也の頭の中で議題はそっちに入れ替わってしまったらしい。 元々このネタは結構前に好きな人がいるかいないかという話から始まり、 「いる」と答えた私に謙也は「誰や」と当然のごとく突っ込んできて、 けれどまさか「あんただ」と言えるはずもなく何となくはぐらかしたら謙也は煮え切らない思いでいるらしい。 「謙也」 「あ?」 「今、文化祭の話しとるんやけど」 「それが?」 「それがやなくて、全然考えてないやんか」 「が正直に白状したらスッキリして集中できるわ」 「あんたは小学生か」 結局謙也は何も考えないまま(話し合いではなく私だけが考えて)今日のミーティングが終わる。 翌日、「何か進展あった?」と聞いてくる白石に「最悪やった」と告げ口する。 彼は私が謙也を好きな事を知っている。だからたまに相談に乗ってもらったりさりげなく後押ししてくれたりする。 「望み薄なのはよくわかったんやけど、にしても謙也は鈍すぎ」 「あいつ自分の事となると全く見えてへんからなあ」 「好きな人誰やねんて引っ張るし、長電話で帰ってこんし、自分の初恋の話とか言ってくるし、 おまけに文化祭の事まったく考えてへんし意味わからん」 「何であんな男好きになってもうたんやろ」、呟いてうなだれる。 好きになるのに理由なんて無いと言うが、本当にそうだ。あんな鈍感で酷いヤツでも私は謙也が好きだった。 一緒に居て楽しいし、楽だし、気の遣えるヤツだし(ただし恋愛以外に限る)。 白石が「しゃーないわなあ」と私の肩をぽんと叩く、 丁度そのタイミングで向こうから歩いてきた謙也と目が合った。 「おお、おはようさん。何や朝から仲良しでお似合いやなあ」 二カッと笑ってサラッとそんな事を口走った謙也は固まる私と白石の横を通り過ぎてどこかに消えた。 取り残された私たちは、しばらく無言のまま立ち止まりお互いにかける言葉を探していた。 先に口を開いたのは白石だった。 (それは、どういう意味で) あいつのあの性格には諦めもつきました(悔しいけれどそれでも好きです) |