08:)泣きわめく (ピアス財前ver)

昼休み、友達と遊んでいて転んで結構派手に擦り剥いてしまい、 消毒して貰おうと保健室に向かうと入り口でばったり光くんと遭遇した。 彼は丁度保健室から出てきたところで、手にはアイラップに入った氷を持っている。

「どっか怪我したん?」と声を掛けると、彼はしれっと「別に」と言った。

「え、じゃあ何に使うん?」
「これからピアス開けたろ思て」
「ええ、そんな理由でよく氷貰えたね」
「虫さされかゆいんすわーとか言うたら簡単にくれるで」
「うわ…ていうか何でピアスに氷?」
「冷やして感覚奪うねん。痛いん勘弁やし」
「そうなんだ。私光くんはむしろ痛いの快感てタイプかと思ってたわ」

茶化すように笑ってみせると、光くんは「どんなイメージやねん」と私の頭にチョップしてきた。

「せやかてもう4個もあいとるし」
「4個やからもう1個増やすねん。やっぱ俺奇数の方が調子ええみたいやしシンメが気に食わん」
「ふうん。ピアスの数に調子ええとか悪いとかあるんや」
「まあ、一般的に奇数がええとか言うな。ピアス開けると運命が変わるとか」
「そうなん?」

光くんのピアスを正面から眺めてみて、(ああ確かに、4個だとバランスがあんまりよくない、かなあ?) とぼんやり考える。 多分、言われなかったら別にそんな風に思わなかっただろう(私、美的センス無いし)けれど、 光くんが言うならそうなんだろう。

それに、確かに彼はアシメの方がしっくりする気がする。

「人間顔自体シンメとちゃうからな。パッと見ピアスの数でバランスとんねん。 奇数のが見た目ええ言われとんのはそういう事やろな。 お前の場合右に2つ、左に1つやったら可愛えんちゃう」

耳にかかっていた私の髪に、さらっと触れた光くんに私は驚いて固まった。
その動作があまりに自然でいやらしくなく、そのせいか逆に恥ずかしかった。
(だって、そういうキャラ、ちゃうやん!)

「そ、そう?でも私痛いんムリ。運命はちょっと変えたい気するけど」
「運命どうこうも迷信やけどな。 大体、ピアスて何やかんや節目の時に開けるヤツ多いから人生変わるん当然やろ」
「あっ、なるほどね」
「……それより保健室に用あったんちゃうんか」

その言葉にハッとしてすりむいた足に目をやると、滲み出した血が膝から下へと伝っていて急にじくじくと痛み出した。 その事に半泣きになると、私の傷口を見た光くんも思い切り顔を顰めて「うわ、無いわ…」と言う (あ、ほんとに痛いの駄目なんだ)。
ピアスは、自主的に開けるくせに。



「ほな俺行くわ」と言って去っていく光くんの後姿を見ながら、 この傷の痛みに耐えられるなら私もピアス開けられるかなあ(どの位痛いんだろう)と考えて、 しばらくその場に留まってどくんどくんと言う膝の痛みに耐えていた。
(ばかみたい)


私の人生を変えられるかどうか、今それが膝の痛みにかかっている(光くんが、可愛いなんていうからだ!)。



この後傷口がえらいことになって泣きわめくことになるんだよ、っていう。
膝って擦りむくと結構痛いんですよね。
それから財前は白石(綺麗に開けてくれそう)か師範(力があって安定してそう)のところに行くかな。
謙也はびびって開けてくれなそうです。