06:)ひっぱる (靴擦れ白石バージョン)

「白石くんは、誕生日に何もらったら嬉しい?」

帰り道に、決めかねていた友達の誕生日プレゼントの事を思い出し唐突に投げかけてみた。 すると隣を歩く白石くんは即効「自分やな」と私を指差した。

「いやいや、私あげられるものじゃないし」
「せなやあ、自分、もう全部俺の物やからなあ」
「ええー、そうだったの?初耳」
「ええー、そうやったんやでー」

わざと私の真似をしてくる白石くんを隣からちょっとどつく。
「いやでも、本気」という白石くんにちょっと照れる(満更でもない)。

「まあ、その話はおいといて、」
「おいとかれても切ないんやけど」
「友達の誕生日プレゼントに悩んでてね、明日買いに行こうと思ってたんだけど」
「あー、ほな俺も行く。一緒に悩んだるし?」
「いいの?」
「ん。ちゃっちゃと選んでデートしよ」




そんなこんなで翌日白石くんとデートする事になった。
忙しい彼氏だから私からのデートのお誘いにはためらうものがあり、 中々自分から一緒にショッピングしたいとは言い出せないのだけれど、 こんな風にタイミングよく白石くんは私をうまく誘導してくれたりする。
(何気ない優しさが、嬉しいんだよなあ)

でもって出かけるのが久しぶりという事で私はばっちりおめかししようとはりきっていた。
その甲斐あって待ち合わせ場所で合流した時白石くんは「可愛え」と私を褒めてくれたし (まあきっと、何を着て行っても彼ならそう言っただろうと思う)、 「優越感感じるわ」と彼は笑った。
(そんなの、私の方が感じてる)



「これ可愛い」「あれも可愛い」と目移りしてしまうのが女の性というものか、 結局日が暮れる頃までプレゼント探しに明け暮れてしまった。 そんな優柔不断な私に白石くんは文句ひとつ言わずにずっと隣に居て一緒に悩んでくれた。
で、やっとコレと言うものに出会えた頃には私の足は結構悲鳴を上げていた(頑張ってヒールなんかはいたから)。

「何か引っ張り回してごめんね、白石くんはこれから行きたいとこ、ある?」
「ん〜、とりあえずどっかで座って休憩しよか」
「あ、ご、ごめんね、私自分の事ばっかりで…疲れたよね」

(それに、今日は折角のデートだったのに)としゅんとすると、 白石くんが「ちゃうちゃう」と笑って私の頭をぽんと撫でた。

「足、痛いんやろ」
「え?」
「休ませてやらな」
「…私、そんなにわかりやすかった?」
「いや、俺が特別よう出来る彼氏やから気付いただけや」
「ほんとパーフェクトな彼氏だよ。でも、大丈夫、白石くんの行きたいとこに行こう?」
「バカ、俺が休憩したいんや」

ぐいっと腕を引っ張られて、私は「わ、」と白石くんに縋りついた。 「そうやって歩いてくれたらそれだけで嬉しいわ」と、彼が笑う。

(きっと、彼の事だからあれこれと今日のデートプランを考えていたに違いない)
(久々だから、行きたいところだってあったかもしれない)
けれど、何も言わずに隣で笑いながら、私の事を一番に考えてくれる白石くん。
(私には、勿体ないなあ)そんな事を考えてちょっぴり泣きたくなった。

「白石くん、」
「ん?」
「ありがとう」
「何や、急に」
「好き」
「うわ、不意打ち」
「私、今凄く胸がいっぱい」
「アカン、そういう事は二人っきりのときに言うて」

「我慢できなくなるやろ」と白石くんが私の腰に腕を回した。
私はただ、彼の腕に自分の腕を絡めて歩いた(足なんて、もう痛くない!)。



白石はさりげなく、何気ない異変に気付いてくれる人だと思う。