「空は何でおっこちてこねえんだろうなあ」
「…いきなり何やねん。」

席替えをしたばかりで教室はざわざわと騒がしかった。偶然にも宍戸と前後の席に当たり、「お前かよ」「お前かい」となんとも素っ気無い暴言の挨拶を簡単にすませ席に着いた。
ラッキーだったことと言えば夏の窓際というところだろうか。窓を開ければ風が頬を撫でてくれる、まあそのかわり太陽の熱い視線に応えなければならないのだが。それでも発見のないこの狭い教室の中から見る外の景色というのは開放的でいい。

しばらく頬杖をついて外を眺めていると、後ろの宍戸も同じ事をしていたらしく眠たそうな声でぽつりと声を漏らした。

「何で青いんだろうな」
「ロマンチストかい。きもいわ」
「お前の顔の方がキモい」
「傷ついた。傷ついたで。謝んなら今がチャンスやねんけどなあ」
「うざ」
「…………………」

内心構ってほしい俺は宍戸を振り向かそうと声をかけるが、そんなそぶりは少しも見せずに宍戸はぼーっと空を眺めた。熱心なこって。

「思うによお、何かこう、でっけえ透明な怪物が支えてくれてんだよ」
「あんな宍戸、空がおっこちてこーへんのにはちゃんと理論があんねんで」
「多分、戦ってんだよなあ。だからいつか落ちるな。空は」
「ちょお、俺の話聞きや」



体を完全に後ろに向けて宍戸の机をガタガタ揺らすと、しんそこめんどくさそうな顔でやっとこっちを向いた。
かみ合ってないようで、かみ合ってるこんな昼下がり。

ちっぽけな君が作り出す壮大な世界観