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なぜ今HS-500?

なぜって使っているスピーカユニットがすごいんです。
ウーファがL-200、トゥイータがH-70HD、以下にご説明いたします。

オリジナルのHS-500の音は?

現代のスピーカに比べるとはっきり言ってちょっとおニブな感じです。女声ボーカルはあまり前に出てきませんし、ややハスキーぎみで高音の張りが感じられません。全体に遠慮がちな鳴り方です。
クラシック向きと言われてきたのはこのためだと思います。
ピアノを聞くとさすがに素性の良さが感じられます。でもスタインウェイピアノのきらびやかな高音はややくすみがち。
発売当時としては実質的な許容入力など画期的に優れていて
非常に歪みの少ないスピーカの評判をとっていたわけなのでもちろん悪くはないのですが今となっては...???


じゃなんでHS-500なの?

スピーカユニットはすごく豪華版で現代でもこんな磁気回路使っているスピーカはあまりお目にかかれません。
問題は、ネットワーク回路のパーツとスピーカ内の配線材です。
コイルは空芯なんですが線径が細すぎます。コンデンサは電解コンデンサでリードはCP線(鉄に銅プレーティングしてある)です。磁性材の使用は現代のハイエンドのオーディオではまず考えられません。
配線材は本当に細いニッケルメッキ線で悲しくなるようなものが使われています。
それとサランネットの真中の桟がめちゃくちゃ悪さをしています。
サランネットの有無であまりに音が違うので調べたらこの桟が原因であることがわかりました。このサランネットの有無の差はHS-500のオーナーであれば気づいている方が多いと思います。
これらを改善すると、音は一変します。
改善後はクラシックでも、ジャズ、ボーカルでも特にジャンルを選ばない張りのある音になります。
改造の詳細は改造方法のページを見てください。


改善後はどの程度?

これについての見解は個人の好みもあるのでなかなか難しいかもしれません。また、本当の比較は他の条件を同じにして並べて聞かないと正確ではありません。
以下は完全に私見です。
最近、B&Wのノーチラス804/803を聞く機会があったんですが女声ボーカルとピアノははるかにHS-500改善版のほうが勝っていると思います。ノーチラスは3Wayなのでどうしてもボーカルやピアノの音像が大きくなること。また、ノーチラスでは女声がハスキー気味になります。これもウーファ/スコーカ/トゥイータのつなぎの位相に関係しそうです。また、私の好きなスタインウェイピアノの輝きのある高音の転がり方もHS-500改善版の方が明らかによいと思います。B&Wのノーチラスは個人的には音場の良さが売りだと思いますのでオーケストラで比べると違った結果になるかもしれません。HS-500は定位はいいのですが音がくっきりしている分、雰囲気作りはやや苦手かもしれません。現役(?)時代も雰囲気が売りのAR-3aなどと比べられて辛い点をつけられたことがありました。
ただ私はハッキリ言って3Wayまたはそれ以上のマルチWayのスピーカは嫌いですのでそれはご考慮ください。私は定位のよいスピーカが好きでどうしても3Way以上にはなじめない部分があります。
ノーチラス801の前身のMTX801Vを聞いたときもあんまり感心しませんでした。Powerが入ることは認めますが。


3KHzクロスオーバーの2Way

HS-500は2Wayであることのメリットもさることながら3KHzでウーファ/トゥイータをクロスさせていることもポイントです。
人間の声の基音の周波数は大体90Hzから1.2KHzですがこの辺とそのもう少し上あたりの領域が人間の聴覚の一番敏感なところです。従って、昔から150Hz-3KHz位まではひとつのスピーカにもたせてクロスさせないほうがよいとよく言われていましたが、これはいまだに真理のように思います。クロスオーバー付近はどうしても2つのスピーカの干渉で位相が乱れてそれが耳につくからです。
この点でもHS-500は理にかなっています。


Woofer (L-200)



あの有名なギャザードエッジはこのスピーカに初めて使用されました。磁気回路には巨大なアルニコマグネットと鋳造の壷形ヨークの最強コンビを使用しています。壷形のヨークは底が丸い形状になっており、磁気回路的に理想を求めたものとなっています。ボイスコイル径は97mmと20cmのスピーカユニットとしては破格の大きさで振幅は±6mmとこれも巨大なものです。この振幅はギャザードエッジの恩恵です。ロングトラベル・ショートボイスコイルの設計で振動部の質量を極力小さくし、ピストン運動領域の拡大を図っています。バスレフのキャビネットとの組み合わせで軽やかな低音を得ています。低音は70Hzくらいまではまったくフラットです。(カタログ上の再生周波数帯域は40-20KHz) さすがにこのスピーカに30Hzを求めても無理というものですが、実用的には十分だと思われます。市販のスーパーウーファでもそんな低音は出ないんですから。このスピーカの再生帯域をさらに低い方に伸ばすためには超大型のウーファシステムの追加が必要でしょう。
日立はこのあと世に出したアルミサンドイッチコーンのL-205(HS-400のウーファに採用)などではフェライトマグネットとロングボイスコイルの組み合わせを採用しています。たぶんアルニコマグネットがコバルト資源のひっ迫により入手困難となったためにそうなったのでしょう。ロングボイスコイルでは質量の増加のためピストン運動領域の拡大の点では明らかに不利だと思われます。このためか、またはアルミサンドイッチコーンの質量によるものかはわかりませんがL-205のピストン運動領域はL-200よりも狭いようでHS-400のクロスオーバー周波数は1.1KHzになっています。


Tweeter (H-70HD)



アルミ丸棒から削り出したホーントゥイータで20KHzまで±3dbくらいの偏差の周波数特性を持ちます。また、ホーントゥイータとしては画期的に低い(1%以下)の歪率を実現しています。
ネットワーク改善後はこのホーントゥイータの恩恵を満喫できます。
スタインウェイのピアノのきらびやかな高音をきれいに鳴らしてくれます。ホーントゥイータにありがちな女声のホーン臭さとも無縁ですし、もちろんコーンやドーム型のトゥイータにみられるサ行の強調もありません。高域は十分伸びているのですが、非常に自然な、トゥイータの存在を意識させない鳴り方です。

(上のH-70HDの写真はストーンテクノさんのホームページからお借りしました)



参考 ‐ K&K(管理人)宅での周波数特性

参考までにK&K宅で測定した周波数特性を以下に示します。
K&Kのメインシステムの設置場所はリスニングルームと呼ぶには恥ずかしすぎるリビングルームの一角です。
グランドピアノと同居しているためスピーカの置き場所の自由度はあまりありません。

以下の3つのグラフのうち、上の特性はスピーカ軸上50cm離れた位置でのものです。

まん中の特性は聴取位置でのもので当然ながらスピーカの軸上からは25度近くずれています。

一番下のグラフはマイクロフォンを除く測定系の特性で発信器(WaveGene)の周波数スイープ時間とFFT(WaveSpectra)のサンプリング数の設定の関係で低域と高域でのレベルが落ちていますので、上記2つの周波数特性はこれを考慮する必要があります。
WaveGeneとWaveSpectraは efu さんのホームページからダウンロードさせていただいたものです。この測定系の低域と高域でのレベルが落ちているのはあくまでも上記パラメータ設定の影響であり、ソフトウェアのせいではないことを念のため申し添えておきます。



      スピーカ軸上50cmでの周波数特性

スピーカ軸上50cmの特性はさすがHS-500。なかなかのものです。
測定系の50Hzでのレベルは1KHzに比べると‐6dbになっていることを考慮すると実際の特性は50Hzくらいまではほとんどフラットといえると思います。
50Hz以下は急激に下がる典型的なバスレフの特性です。
バスレフによる弾むような豊かなHS-500の低音ではありますが重低音の再生には限界があります。




      聴取位置での周波数特性

聴取位置での特性は部屋の条件があまり良くないのにもかかわらず幸運にもまあまあ。(もちろん、定在波によるディップはあるのですが) 2、3KHzくらいから高域に向かって-10db/Decadeくらいで下がっていきます。聴取位置としてはちょうどいいくらいの特性かと思います。強いて弱点を挙げると400-600Hzくらいに中だるみが見られることでしょうか。




      測定系の周波数特性 (マイクロフォン除く)

Referenceとしての測定系の特性です。Notebook PCのヘッドホン出力をマイクロフォン入力にダイレクトに接続した状態で測定しています。
1KHzを基準にすると、40Hzで-8.3db、50Hzで-6db、60Hzで-4.8dbとなっています。この特性を考慮した上で、スピーカ軸上および聴取位置での特性をご覧ください。
実際の測定の20KHz付近は使用マイクロフォンの特性の影響もあると思われます。


測定条件

 ‐ 40Hz-100Hz : 
    40Hz-160Hzまでの正弦波による30秒のSweep
    FFT Sampling数16384 ハニング窓、ピークホールド
 ‐ 100Hz-600Hz :
    100Hz-1KHzまでの正弦波による30秒のSweep
    FFT Sampling数8192 ハニング窓、ピークホールド
 ‐ 600Hz-20KHz :
    500Hz-20KHzまでの正弦波による30秒のSweep
    FFT Sampling数2048 ハニング窓、ピークホールド
    (上のグラフは上記3帯域の測定結果を合成したものです)

 ‐ 使用マイクロフォン RODE NT-1 (コンデンサ型)

 ‐ 使用ソフト
      発振源             WaveGene ver.1.20 (efuさん提供)
      FFT (周波数アナライザ)  WaveSpectra ver.1.20 (efuさん提供)

 ‐ 使用PC  IBM Thinkpad  i シリーズ 1157 Celeron 500MHz
 ‐  OS     Windows 2000
 ‐ 測定日   2003年8月31日
 ‐ スピーカ  HS-500 ネットワーク改造品
    (バッフルのトゥイータ回りの吸音材なし・オリジナルどおり)




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