公立学校教職員に君が代斉唱の際に起立・斉唱を強制する 大阪府条例 案提出に関する日弁連会長声明 2011.5.26 |
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地方自治体の首長が当該自治体の教職員に対し、免職を含む処分の制裁を公言して君が代斉唱時の起立・斉唱を求め、これを条例によって強制することはかつてない事態であり、思想・良心の自由等の基本的人権の保障に加え、教育の内容及び方法に対する公権力の介入は抑制的であるべきという憲法上の要請に違反するものとして、看過できない。 個人の内心の精神的活動は、外部に表出される行為と密接に関係しているものであり、自己の思想・良心に従って君が代斉唱時に起立を拒否する外部的行為は、当然、思想・良心の自由の保障対象となる。そして、君が代については、大日本帝国憲法下において天皇主権の象徴として用いられた歴史的経緯に照らし、現在においても君が代斉唱の際に起立すること自体が自らの思想・良心の自由に抵触し、抵抗があると考える国民が少なからず存在しており、こうした考え方も憲法19条の思想・良心に含まれるものとして憲法上の保護を受けるものと解されるから、国や地方自治体が、教職員に対し君が代を斉唱する際に起立・斉唱を強制することは、憲法の思想・良心の自由を侵害するものと言わざるを得ない。なお、地方公務員である教職員は、「全体の奉仕者」ではあるが、そのことが、公務員の職務の性質と無関係に、一律全面的に公務員の憲法上の権利を制限する根拠となるものではないことは言うまでもない。 さらに、教師と子どもとの間の直接の人格的接触を通じてその個性に応じて行わなければならないという教育の本質的要請に照らし(1976年5月21日旭川学力テスト事件最高裁大法廷判決)、子どもの学習権充足の見地からは、教育の具体的内容及び方法に関して、子どもの個性や成長・発達段階に応じた教師の創意や工夫が認められなければならない。したがって、子どもの学習権に対応するため、教員には、公権力によって特定の意見のみを教授することを強制されないという意味において教育の自由が保障されている。この趣旨は、教育行政の独立を明確に定めた教育基本法16条1項にも現れている。 当連合会は、上記観点に立って、大阪府議会に対し、提出された条例案が可決されることのないように求めるとともに、大阪府議会及び府知事に対して、府内公立学校の教育現場に介入して、教職員に対し君が代斉唱の際の起立・斉唱を含め国旗・国歌を強制することのないよう強く要請する。
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