教育基本条例案に対する教育委員の見解 |
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今回の教育基本条例案が提起されて以来、私たち教育委員は困惑と苦悩の中で、大阪の教育の発展の道筋を求め、さまざまな議論を行ってきた。教育制度の構築には、本来もっと多くの時間をかけ、各界の広範な意見を集め、しかるべき手続きを経るべきと考える。しかし、教育基本条例案が選挙の争点となるという切迫した状況下、私たちは教育委員の責任として、一つの見解を出さざるを得ない。私たちの見解は次の通りである。 1、私たちは、憲法・教育基本法を柱とする現行教育法令を尊重する。 私たちは、現行法令のもとで知事ともよく話し合い、学力向上や教育機器の整備、学校給食制度づくり、府立高校の特色づくりなど様々な成果を上げてきた。もちろん、まだ残された課題も多い。例えば、学校運営への住民参加などもある。しかし、それらについては国のガイドラインがあり、これらを無視し勝手な制度設計をすることは、現行法令の考え方に反する危険性がある。その他、条例案で提起された問題についても、現行法またはそこに示された理念に即して、教育委員会が更なる改善を進めることが可能であり、今後も力を尽くして解決に当たるべきと考える。 2、私たちは、教育という全ての子どもたちにかかわる根本的な重要課題を、短期間の審議や選挙で決めるべきではないと考える。 私たちは府立高校の特色化を進め、それぞれの子どもたちが自分に適した力を伸ばし、たくましく生きる方策を学ぶように図ってきた。しかし、今回の条例案は、大阪府の教育の責任者である私たちの一切知らないところで準備され、その理念の根底には「競争主義・管理主義」が貫かれている。競争・管理を一面的に追及することによって教育の質が向上しないことは英米の教育改革等で既に立証されている。したがって、この条例案の現場に与えた衝撃はすさまじく、校長や教師に激しい動揺が起きているのも当然である。 3、私たちは、今回の条例が生み出す教育委員会の無力化、教育と政治の一体化を認めるわけにはいかない。 今回の条例案の議論では、個々の条文に対するものが多いが、もっとも問題なのはこれら条文をつなぐ骨組みにある。修正の有無にかかわらず総辞職するという理由は、まさにそこにあるのであり、以下、条例案に沿ってその骨組みを呈示する。 上記のとおり、本条例案はその内容のみならず、枠組みそのものが政治の介入を厳格に戒めようとする教育基本法や諸法規の精神に反するものである。そして、この条例案は、教育の条例と言うより日本の統治原則の変更を迫る意向を含むといえる。したがって私たちは、本条例を決して是とすることができない。 強く大阪府民のご賢察を額う次第である。 平成23年10月25日 大阪府教育委員会 |