全日本プロレス観戦記

2000年

2000.10.14(後楽園大会)

 10月14日は、全日本プロレスのジャイアント・シリーズ開幕戦。三冠王者決定トーナメントシリーズでもある。
 ふんばっている全日本プロレス、さすがに、今までのようにチケットが手に入らない、などということはなく、すぐに手に入れることができたので、ほかの用事のついでに見てきた。

 試合前、渕がリングに立ち、挨拶。
 太陽ケアが故障のため欠場すること、「友人」である越中詩郎が、ケアの代わりにトーナメントに出場することになったことなど、落ち着いて説明。

第1試合

○新崎人生    相島勇人×
 渕正信  VS 奥村茂雄

 当初発表されていたカードは、相島VS奥村だったが、越中の扱いがかわったので、変更になったようだ。
 相島と奥村がどこまでがんばれるか、がポイント。
 相変わらず相島は人気があり、声援が飛ぶ。
 人生が、奥村をつかまえて、お約束の拝み渡りに入ろうとすると、何と、相島がその足にしがみついて阻止。その後、奥村が逆に拝み渡りを仕掛けたりして奮闘。
 しかし、結局は「極楽固め」で相島がギブアップ。

第2試合
 愚乱・浪花        望月亨 ×
 TARU      VS 神田裕之
○ジャイアント・キマラ   望月成晃

 みちのくプロレス→大阪プロレス→みちのくプロレス、と揺れ動いていた浪花は、今はフリー。
 まさか浪花をこの目で見ることになるとは。
 浪花とキマラを除く四人は闘龍門所属。まさか闘龍門の選手をこの目で見る日が来ようとは。
 浪花もいることだし、ルチャになるのかと思ったが、そういうわけではなく、わりに普通のプロレス。
 TARUに声援が飛んでいたが、闘龍門の中でいろいろあるらしい。
 望月たちは、浪花とTARUには強気だが、キマラが出てくるとびびりまくり。
 最後は、ボディプレスから体固め。

 第二試合の後休憩があり、その後、「三冠王座トーナメント」の選手入場式。
 式の前に、背の高い外人がリングに上がり、あれ、いつもの会長とちがうな、でも、どこかで見た顔だな、と思っていたら、何と、立会人として招聘された“荒法師”ジン・キニスキー!
 まさか、ジン・キニスキーをこの目で見ることになろうとは!

第3試合
 荒谷信孝       ジョージ・ハインズ×
 天龍源一郎   VS ウルフ・ホークフィールド
○スタン・ハンセン   マイク・バートン

 選手が入場して気づいたが、マイク・バートンとジョニー・スミスはトーナメントに出場するのに、ウルフは入っていなかった。
 貢献度ではスミスに劣らないと思うのだが。
 冬木に引っ張られてWARに入り、その後、天龍につくことになった荒谷も登場。意外に体が大きい。
 最後はハンセンのラリアットで決まり。
 ただ、天龍も、ハンセンも、肌に張りがなく、衰えを感じさせられたのが淋しかった。

第4試合
○越中詩郎 VSジョニー・スミス×

 これまた、まさか越中の試合をこの目で見る日が来るとは思っていなかった。
 試合開始前からスミスにばかり声援が飛び、越中は面白くない様子。
 「越中帰れ」という野次も一度だけ飛んだが、こんな野次を飛ばしてはいけない。
 「うるせぇ」連発しながら、盛んに腰を使い、最後は侍パワーボム。

第5試合
○川田利明 VS スティーブ・ウイリアムス×

 メイン。
 最初からウィリアムスが飛ばす。9日のノートンとの試合で脇腹を痛めており、テーピングをしているが、痛がる様子はない。
 「脇腹を攻めろ」という声も飛ぶが、川田は決して脇腹をねらわない。ずっと受け身。
 リング下でドクター・ボムを食らったり、さんざんパンチを食らったり。
 しかし最後はジャンピング・ハイキック2連発であっさり勝利。
 ウィリアムスはしばらく起きあがれなかったが、やっと立ち上がると、客席へ向かって、両手の指で三角形を作るポーズをしてみせる。
 なんて言ったかな、ウィリアムスのチームのサインだったんだけど、忘れてしまった。

2000.7.23(武道館大会)

 大量離脱後、初の武道館大会。この日は、新日の興行はないので、もしかすると、初の交流戦が、と期待してチケットを早々と入手していたのだが、そういうことはなかった。
 しかし、予想もしなかった天龍の電撃復帰があって満足。
 せっかく行ったのだから、観戦記を。

(○が勝ち)

第1試合
 ○渕 正信 VS 奥村 茂雄× (片エビ固め 9分57秒)
 たった二人しか残っていない全日レスラーのうちの一人、渕は第1試合。
 おまけに、第1試合から和田京平レフェリー。ただし、レフェリーのコールはない。
 第2試合からはウォーリー山口がレフェリーで、彼はどの試合でもコールされていた。
 「新東京プロレス」所属の奥村は今後、全日所属になるらしい。
 そこそこプロレスのできる人で、渕の顔面へのエルボーなどで気を吐くが、しっかりお返しされてバックドロップからフォール負け。
 何と、試合後、渕がマイクをとり、「全日本はこれからも躍進していきます」とアピール。
 大拍手。

第2試合
 ×SHINOBI VS SHIIBA○ (クロスアーム式原爆固め 8分48秒)
 どちらも覆面のルチャドール、ということだったんだが。
 SHIIBAの入場テーマは黒田節。和太鼓を担いで現れて、何をするのかと思ったら、コール後に太鼓を叩くパフォーマンス。何なんだ。
 二人とも固くなっているのが動きが鈍い。コーナーに二人とも直立してのフランケン・シュタイナーなど、大技は決まるのだが、つなぎの技がしっかりしていない。途中でSHINOBIは右肩を痛めたらしく、試合後しばらく動けない。
 第3試合の途中からSHIIBAはセコンドについていたが、SHINOBIは現れなかった。
 武道館でこんな試合では、と、全日の先行きが不安になる。

第3試合
 ×相島 勇人 VS ジャイアント・キマラ○  (ボディプレスから体固め 10分19秒)
 相島は、今シリーズに全戦参加している助っ人。「世界のプロレス」という西日本限定の団体の所属。
 報道に寄れば、開幕戦では、モスマン相手に何もできず、試合後号泣していた、ということだったが、入場から余裕があり、声もよく出ている。攻めても攻められても声を出していて、感情移入がしやすい。
 第2試合では全く声が聞こえなかったのを思い出し、声も重要であると認識。
 試合内容も決して悪くなく、よく頑張っている。敗れはしたが、声援を受けていた。
 後の試合では、セコンドも勤めていた。
 次のシリーズも参加するそうだ。

第4試合
 ○マイク・バートン     G・ハインズ
 W・ホークフィールド  VS スコーピオ×  (片エビ固め 15分8秒)
 外人選手だけのタッグマッチ。マイク・バートンは入場の時から大人気。
 リングインする前に、一周して観客の手にタッチ。
 試合はもちろんしっかりしていて、見せ場の連続。
 最後は、スコーピオがロープを飛び越えて入ろうとしたところを捕まえて、バートンのダイヤモンドカッターが決まり、それが決め技に。

第5試合
 ○藤原 喜明 ワキ固め VS ジョニー・スミス× (ワキ固め 19分52秒)
 日英職人対決。
 観客が皆、地味な展開を期待している、という妙な試合なのだが、期待通りに地味な技の掛け合いが続き、歓声が起こる。
 それでも藤原組長は心得たもので、スミスをリング下に落とし、反対側のロープに走って反動をつけ、飛ぶふりをして見せたりする。
 藤原は、途中から、スタミナが切れてふらふらになったふり。スミスのジャーマンを受けたりする。スミスは投げても腕を放さず、強引にもう一発ジャーマン。
 誰がどう見たって藤原組長はチャンスをうかがっているのだが、スミスは正直にひっかかり、一瞬の返し技で脇固めが決まり、ギブアップ。
 試合後、リングを降りた組長、花道を間違えたのかと思ったら、何と本部席のマイクをとり、
「オレは全日本プロレスが大好きだ。どうかみんな、見捨てないでくれ」と絶叫。これには驚いた。
 気持ちはうれしいが、「見捨てないでくれ」はちょっと淋しい言い方だった。

第6試合
 ×新崎 人生 VS S・ウイリアムス○ (片エビ固め 21分11秒)
 人生にもウィリアムスにも声援が飛ぶ。拝み渡りを期待したが、とてもそんなことができるような試合にはならなかった。
 何と、人生を高々と差し上げたウィリアムスが、ロープ越しに、鉄柵の向こうの本部席のそのまた向こうに人生を放り投げた。
 これを見たときには我が目を疑った。殺す気か。
 もちろん、人生は動けなくなり、このまま試合終了かと思ったが、だいぶたってから這うようにしてリングへ向かう。
 ウィリアムスが自分もリングの外へ出ようとするが、これは和田京平レフェリーが身をていして防ぐ。期せずして起こる京平コール。
 人生はやや動きは鈍るものの、何とか勝機をつかもうと奮戦。
 最後はバックドロップを食らって敗れ、しばらく動けずにいた。やはりプロレスラーというのは尋常ではないと再認識。
 ウィリアムス、取り返しのつかないことになったら、どうするつもりだったんだ。

第7試合(メイン・エベント)
 ○川田 利明     スタン・ハンセン
  天龍 源一郎  VS  M・モスマン×  (エビ固め 23分12秒)
 第6試合が終わったら、黄色い旗の準備を始めた観客が何人もいた。そして、花道に15人ほどが集まり、それぞれ、天龍の名の書かれた旗を立てる。
 入場は一人ずつ。
 まず、モスマン。もちろん観客はみな、拍手で迎えたが、続いてハンセンの入場テーマが流れると会場全体が狂乱状態。一気に精神が高揚し、まさに割れんばかりの拍手でハンセンを迎え入れる。
 次は川田か、と思ったら、何と天龍だった。旗に囲まれ、日焼けした天龍が入ってくる。場内から声が飛ぶ。
 そして川田。ガウンをまとい、一番身なりがいい。
 コールも川田が最後。名実ともに全日のトップであるという披露でもあったのだ。
 この試合でのみ、和田京平レフェリーの名もコールされる。
 試合が始まると、ハンセンと天龍のからみに期待が膨らむが、なかなかチャンスが来ない。
 二人がリングにはいると大歓声。かつてはタッグを組んでいた二人だ。
 ハンセンの胸は、天龍のチョップですぐに真っ赤になる。
 一度、場外で、鉄柱にもたれた天龍にハンセンがチョップを打っていったが、天龍が身を沈めたために、ハンセンノ右手が鉄柱に直撃。カツンという音が武道館に響いた。いかにも痛そうな音だったが、実際痛かったらしく、ハンセンはしばらく右手を抱えていた。
 天龍と川田のダブルタックル、ダブルキックなど合体技もあったが、燃えているモスマンとハンセンに比べ、二人の情念のようなものはあまりなく、あっさりしたタッグ。
 最後は、場外でハンセンと天龍がやりあっている隙に、川田がモスマンを高々と抱え上げてパワーボムで決まり。
 抱え上げられたモスマンの顔がよく見えたが、恐怖を感じていたようだった。背中からではなく、後頭部からたたきつけられ、モスマンは全く動けない。
 試合が終わると、何と、外人勢がそろってリングにはいり、ウィリアムスとスコーピオが川田を抱え上げ、賞賛。
 川田たちがさっても、モスマンは動けない。すると、ウィリアムスがマイクをとり、「もうちょっと」コールを観客に要請。確かに「もうちょっと」と聞こえたのだが、「モスマン」と言っていたのかもしれない。(これは後で雑誌を読み「元子」コールだったことを知った)
 ウィリアムスは、川田が引き上げていった方を盛んに気にするが、和田レフェリーが一度その花道の奥へ消え、すぐ戻ってきて、指で×を作ってみせると、モスマンを抱え上げて讃え、みんなでモスマンを囲んで去っていった。
 川田が戻ってきて何かアピールすると思ったのだろうか。その点だけがよく分からなかった。

 正直なところ、試合開始までは、空席が目立つのでは、と不安があったが、蓋を開けてみれば大入り満員。
 ただし、レベル低下は否めない。
 9月にも武道館大会がある。その時は、天龍VS川田で一杯にできるだろう。
 問題はその後だ。テレビ中継がないのも寂しいし。
 ちょっと不安。

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