2000年
大量離脱後、初の武道館大会。この日は、新日の興行はないので、もしかすると、初の交流戦が、と期待してチケットを早々と入手していたのだが、そういうことはなかった。
しかし、予想もしなかった天龍の電撃復帰があって満足。
せっかく行ったのだから、観戦記を。
(○が勝ち)
第1試合
○渕 正信 VS 奥村 茂雄× (片エビ固め 9分57秒)
たった二人しか残っていない全日レスラーのうちの一人、渕は第1試合。
おまけに、第1試合から和田京平レフェリー。ただし、レフェリーのコールはない。
第2試合からはウォーリー山口がレフェリーで、彼はどの試合でもコールされていた。
「新東京プロレス」所属の奥村は今後、全日所属になるらしい。
そこそこプロレスのできる人で、渕の顔面へのエルボーなどで気を吐くが、しっかりお返しされてバックドロップからフォール負け。
何と、試合後、渕がマイクをとり、「全日本はこれからも躍進していきます」とアピール。
大拍手。
第2試合
×SHINOBI VS SHIIBA○ (クロスアーム式原爆固め 8分48秒)
どちらも覆面のルチャドール、ということだったんだが。
SHIIBAの入場テーマは黒田節。和太鼓を担いで現れて、何をするのかと思ったら、コール後に太鼓を叩くパフォーマンス。何なんだ。
二人とも固くなっているのが動きが鈍い。コーナーに二人とも直立してのフランケン・シュタイナーなど、大技は決まるのだが、つなぎの技がしっかりしていない。途中でSHINOBIは右肩を痛めたらしく、試合後しばらく動けない。
第3試合の途中からSHIIBAはセコンドについていたが、SHINOBIは現れなかった。
武道館でこんな試合では、と、全日の先行きが不安になる。
第3試合
×相島 勇人 VS ジャイアント・キマラ○ (ボディプレスから体固め 10分19秒)
相島は、今シリーズに全戦参加している助っ人。「世界のプロレス」という西日本限定の団体の所属。
報道に寄れば、開幕戦では、モスマン相手に何もできず、試合後号泣していた、ということだったが、入場から余裕があり、声もよく出ている。攻めても攻められても声を出していて、感情移入がしやすい。
第2試合では全く声が聞こえなかったのを思い出し、声も重要であると認識。
試合内容も決して悪くなく、よく頑張っている。敗れはしたが、声援を受けていた。
後の試合では、セコンドも勤めていた。
次のシリーズも参加するそうだ。
第4試合
○マイク・バートン G・ハインズ
W・ホークフィールド VS スコーピオ× (片エビ固め 15分8秒)
外人選手だけのタッグマッチ。マイク・バートンは入場の時から大人気。
リングインする前に、一周して観客の手にタッチ。
試合はもちろんしっかりしていて、見せ場の連続。
最後は、スコーピオがロープを飛び越えて入ろうとしたところを捕まえて、バートンのダイヤモンドカッターが決まり、それが決め技に。
第5試合
○藤原 喜明 ワキ固め VS ジョニー・スミス× (ワキ固め 19分52秒)
日英職人対決。
観客が皆、地味な展開を期待している、という妙な試合なのだが、期待通りに地味な技の掛け合いが続き、歓声が起こる。
それでも藤原組長は心得たもので、スミスをリング下に落とし、反対側のロープに走って反動をつけ、飛ぶふりをして見せたりする。
藤原は、途中から、スタミナが切れてふらふらになったふり。スミスのジャーマンを受けたりする。スミスは投げても腕を放さず、強引にもう一発ジャーマン。
誰がどう見たって藤原組長はチャンスをうかがっているのだが、スミスは正直にひっかかり、一瞬の返し技で脇固めが決まり、ギブアップ。
試合後、リングを降りた組長、花道を間違えたのかと思ったら、何と本部席のマイクをとり、
「オレは全日本プロレスが大好きだ。どうかみんな、見捨てないでくれ」と絶叫。これには驚いた。
気持ちはうれしいが、「見捨てないでくれ」はちょっと淋しい言い方だった。
第6試合
×新崎 人生 VS S・ウイリアムス○ (片エビ固め 21分11秒)
人生にもウィリアムスにも声援が飛ぶ。拝み渡りを期待したが、とてもそんなことができるような試合にはならなかった。
何と、人生を高々と差し上げたウィリアムスが、ロープ越しに、鉄柵の向こうの本部席のそのまた向こうに人生を放り投げた。
これを見たときには我が目を疑った。殺す気か。
もちろん、人生は動けなくなり、このまま試合終了かと思ったが、だいぶたってから這うようにしてリングへ向かう。
ウィリアムスが自分もリングの外へ出ようとするが、これは和田京平レフェリーが身をていして防ぐ。期せずして起こる京平コール。
人生はやや動きは鈍るものの、何とか勝機をつかもうと奮戦。
最後はバックドロップを食らって敗れ、しばらく動けずにいた。やはりプロレスラーというのは尋常ではないと再認識。
ウィリアムス、取り返しのつかないことになったら、どうするつもりだったんだ。
第7試合(メイン・エベント)
○川田 利明 スタン・ハンセン
天龍 源一郎 VS M・モスマン× (エビ固め 23分12秒)
第6試合が終わったら、黄色い旗の準備を始めた観客が何人もいた。そして、花道に15人ほどが集まり、それぞれ、天龍の名の書かれた旗を立てる。
入場は一人ずつ。
まず、モスマン。もちろん観客はみな、拍手で迎えたが、続いてハンセンの入場テーマが流れると会場全体が狂乱状態。一気に精神が高揚し、まさに割れんばかりの拍手でハンセンを迎え入れる。
次は川田か、と思ったら、何と天龍だった。旗に囲まれ、日焼けした天龍が入ってくる。場内から声が飛ぶ。
そして川田。ガウンをまとい、一番身なりがいい。
コールも川田が最後。名実ともに全日のトップであるという披露でもあったのだ。
この試合でのみ、和田京平レフェリーの名もコールされる。
試合が始まると、ハンセンと天龍のからみに期待が膨らむが、なかなかチャンスが来ない。
二人がリングにはいると大歓声。かつてはタッグを組んでいた二人だ。
ハンセンの胸は、天龍のチョップですぐに真っ赤になる。
一度、場外で、鉄柱にもたれた天龍にハンセンがチョップを打っていったが、天龍が身を沈めたために、ハンセンノ右手が鉄柱に直撃。カツンという音が武道館に響いた。いかにも痛そうな音だったが、実際痛かったらしく、ハンセンはしばらく右手を抱えていた。
天龍と川田のダブルタックル、ダブルキックなど合体技もあったが、燃えているモスマンとハンセンに比べ、二人の情念のようなものはあまりなく、あっさりしたタッグ。
最後は、場外でハンセンと天龍がやりあっている隙に、川田がモスマンを高々と抱え上げてパワーボムで決まり。
抱え上げられたモスマンの顔がよく見えたが、恐怖を感じていたようだった。背中からではなく、後頭部からたたきつけられ、モスマンは全く動けない。
試合が終わると、何と、外人勢がそろってリングにはいり、ウィリアムスとスコーピオが川田を抱え上げ、賞賛。
川田たちがさっても、モスマンは動けない。すると、ウィリアムスがマイクをとり、「もうちょっと」コールを観客に要請。確かに「もうちょっと」と聞こえたのだが、「モスマン」と言っていたのかもしれない。(これは後で雑誌を読み「元子」コールだったことを知った)
ウィリアムスは、川田が引き上げていった方を盛んに気にするが、和田レフェリーが一度その花道の奥へ消え、すぐ戻ってきて、指で×を作ってみせると、モスマンを抱え上げて讃え、みんなでモスマンを囲んで去っていった。
川田が戻ってきて何かアピールすると思ったのだろうか。その点だけがよく分からなかった。
正直なところ、試合開始までは、空席が目立つのでは、と不安があったが、蓋を開けてみれば大入り満員。
ただし、レベル低下は否めない。
9月にも武道館大会がある。その時は、天龍VS川田で一杯にできるだろう。
問題はその後だ。テレビ中継がないのも寂しいし。
ちょっと不安。