『夜の学校』     文研出版より 2012年11月30日発売

 






   ある女性カメラマンの、不思議な写真を見ました。それは、女子校のクラス写真で、制服を着た四十人ほどの生徒と、担任の先生が写った、何の変哲もない写真でした。
 でも実はーーそれはカメラマン本人が髪型や表情を変えて、四十人分の被写体になりすまし、合成して出来上がった奇妙な集合写真だったのです。

 不良っぽい子もいれば、優等生もいて、大人びた子もいれば、幼い子もいる・・・。写真には、いろいろな個性の少女が写っているのに、どれも同じ人だったなんて、と驚いたものです。
 人間って、同じ顔でも、表情や態度ひとつで、ぜんぜん違う性格に見えることがあるんだなぁ、と感心しました。
 だけど、よく考えれば、どの人の心の中にも、たくさんの“顔”があり、状況や立場に応じて、それを使い分けているのが普通なので、奇妙だとは言い切れないかもしれません。
 この本の主人公は、自分そっくりなのに、性格が真逆な“もう一人の自分”と入れ替わり、とまどい、否定しながら、やがて自分やまわりの“隠していた本当の顔”に気づいて、“なりたい自分”を思い描けるまでに成長していきます。
 主人公と共に、真夜中の学校生活を体験し、変わっていく様子を見守っていただけたら、嬉しいです。
 佐竹美保さんの絵も、光と影のコントラストが印象的で、夜の張り詰めた空気、昼のまばゆさを感じる挿絵を描いてくださっています。

 あらすじ
  クラスのリーダー的存在、加門蘭は、中学受験を控え、焦りと苛立ちの日々。 親友だった少女を、軽い気持ちでイジメていました。
  ある日、塾へ行くバスを乗り越し、幼い頃に遊んだ公園へとやって来て、野原のまん中に不思議な灯台を見つけます。その灯台の光をあびた瞬間から、蘭の世界は逆転し、町は夜に動き出し、蘭はイジメられっ子になっていて・・・。
                    (続きは、ぜひ本で)

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