花粉症
花粉症は今や国民病となってきまして、春先にはあちこちで大きなマスクをした人を見かけます。この季節の診療においては、風邪なのか花粉症なのか判断が難しい場合もあります。今回は花粉症についてのお話です。
1.花粉症とは
花粉症は花粉が原因で起こるアレルギー性の炎症です。症状としては、アレルギー性鼻炎とアレルギー性結膜炎が有名ですが、そのほかに皮膚炎、喘息などが出ることもあります。
原因は花粉以外にハウスダスト、ダニ、動物の毛などがあります。
2.花粉症の診断、分類
症状が花粉の暴露によって起こることが条件です。アレルゲンの確認には、皮膚反応、鼻粘膜誘発試験、血液検査(IgE抗体の測定)が行われます。
花粉症はその症状によって3つの病型に分けられます。
(1)「くしゃみ・鼻漏」型〜くしゃみ、水性鼻漏、鼻のかゆみなどが主
(2)「鼻閉」型〜くしゃみはないかわずかで、粘性鼻汁があり、かゆみはないが鼻閉がひどい
(3)充全型〜(1)、(2)の混在
原因抗原による分類
期間 | 原因 | |
通年性鼻アレルギー | 一年中 | ダニ、ハウスダストが主 イヌ、ネコ、ハムスターなどのペットの毛 アスペルギルス、カンジダなど |
季節性鼻アレルギー | 季節 | 1〜4月:スギ 4〜5月:ヒノキ 初夏:カモガヤを中心としたイネ科植物 秋〜晩秋:ブタクサやヨモギなどのキク科植物 |
3.予防、治療について
(1)アレルゲンの回避
花粉の飛散が多いときは外出を控える。外出時にはマスク、メガネ、帽子を使用。帰宅したら洗顔、うがい、鼻をかむ。衣類を替える。
在宅時は窓を開けっぱなしにしない、洗濯物や布団を外に干さない、など。
(2)薬物治療
本格飛散前治療(初期療法)と本格飛散後治療に分けられます。
a)初期療法
花粉飛散開始と共に、または症状が少しでも現れた時点で薬物療法を開始します。
ここで選択されるのはケミカルメディエーター遊離抑制薬、第2世代抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬です。
b)飛散後治療
@軽症
第2世代抗ヒスタミン薬と点眼薬(抗ヒスタミン薬または遊離抑制薬)で治療を開始し、必要に応じて鼻噴霧用ステロイド薬を追加します。
A中等症
鼻噴霧用ステロイド薬を第1選択とし、くしゃみ・鼻漏型では第2世代抗ヒスタミン薬を併用し、鼻閉・充全型では抗ロイコトリエン薬と第2世代抗ヒスタミン薬を併用します。
B重症・最重症
鼻噴霧用ステロイド薬と第2世代抗ヒスタミン薬を主体とし、症状が強い充全型では抗ロイコトリエン薬を併用し、さらに経口ステロイド薬を4〜7日程度使用します。また、必要に応じて点鼻用血管収縮薬を7〜10日間程度使用します。点眼薬は抗ヒスタミン薬、遊離抑制薬またはステロイド薬を用います。
附)副腎ステロイド剤の筋注療法について
ガイドラインでは推奨されていません。しかし、症状のコントロールが出来ない場合には使用されることがあります。但し、全身的な副作用に注意して投与します。例えば糖尿病や高血圧のコントロールが悪くなる、満月様顔貌、月経異常、副腎皮質機能低下など起こす危険性がありますので、当クリニックではあまりお勧めしない治療です。