胆石症
胆石は最近では人間ドックでの腹部超音波検査で見つかるケースが多いようです。今回は胆石症の原因・症状・治療についてご紹介します。
原因
胆汁中のコレステロール濃度が高くなると、コレステロールの結晶が析出しやすくなり、それが徐々に大きくなって胆石となります。以前から、胆石の出来やすい人として5つのF"、すなわち、Female(女性)、Forties(四十歳代)、Fatty(肥満)、Fair(色白)Fecund(経産婦)が知られています。これは動物性脂肪や蛋白質の摂取増加などの食生活の欧米化が発症の増加に関与しているようです。また、慢性肝疾患の方、胃切除術を受けた方にも胆石ができやすいとされています。
分類
上の図のように胆石のできる部位による分類があります。大きく分けると、(1)胆のう結石、(2)総胆管結石、(3)肝内結石です。
また、石の成分による分類もあります。(1)コレステロール結石、(2)ビリルビンカルシウム結石、(3)黒色石、と分けられます。
症状
典型的な症状は、食後に起こる上腹部(右側)の疼痛、違和感です。胆のう炎を併発すると発熱や黄疸もみられます。
しかし、胆石があっても全く症状の出ない場合があり、これを無症状胆石と言い、胆石患者の半数以上を占めています。健診での腹部超音波検査で偶然見つかることも多く、この場合は定期的な(1年に1回程度)超音波検査を行います。
検査
(1)腹部超音波検査
侵襲がなく、手軽に行える検査です。但し、食後だと胆のうが収縮してしまうので観察が不十分になることがあります。また、充満胆石でも観察が困難となります。
(2)腹部CT検査
胆のうだけでなく、周囲の臓器(胆管・肝臓・膵臓など)の情報が得られます。腹部超音波では時に描出困難な総胆管結石も検出できることもしばしば。
(3)MRCP
これは胆のうよりも総胆管、膵管の情報を得るのに有用な検査です。内視鏡を用いたERCP(内視鏡的逆行性胆膵管造影検査)が侵襲的な検査であるのに比べ、非侵襲的な検査です。以前は画像が悪く、情報量はERCPに比べると劣っていましたが、最近のMRIは画像がきれいになり、ERCPとそれほど遜色ない画像が得られるようになってきました。
(4)ERCP
内視鏡を総胆管の出口まで近づけて、そこにある穴(十二指腸の乳頭部)にチューブを挿入し造影剤を流して総胆管から胆のう、肝内胆管、そして膵管をうつす検査です。(はっきり言って辛い検査で、自分ではやられたくない検査のナンバーワンかも)しかし、得られる情報は多く、同時に治療も可能ですので、総胆管結石の患者さんには有用な検査です。
治療
(1)無症状胆石の場合
無治療で経過観察
食事療法(暴飲暴食をしない、高脂肪食、飲酒を避ける)
胆石溶解療法(ウルソを服用します)
(2)有症状胆石の場合
発作時の治療と維持療法に分けて行います。
A疝痛発作時
絶食の上、補液、鎮痙剤を投与します。多くの場合、胆のう炎も併発していますので、抗生物質を投与します。
B維持療法
a)内科的治療
i)内服治療
とりあえず痛みがおさまってから内服薬を飲みます。胆石溶解剤(ウルソ)の結石溶解率は10〜20%と言われていますが、胆石発作を減らすことが知られています。
ii)内視鏡的治療
内視鏡的に総胆管結石を除去することが可能です。(胆のう内の結石は対象外です)内視鏡的乳頭切開術(EST)、内視鏡的乳頭バルーン拡張術(EPBD)がよく知られた治療法です。また、閉塞性黄疸を軽減するためのドレナージ(減黄術)としての内視鏡的経鼻胆管ドレナージ(ENBD)という治療法もあります。
iii)対外衝撃波結石破砕療法(ESWL)
読んで字のごとく外から衝撃波を与えて結石を破壊して、自然排石させる方法ですが、胆石の大きさ、個数、胆のうの機能でその適応は限られています。最近では行っている施設は少ないようです。
b)外科的治療
従来からの開腹術と腹腔鏡下胆のう摘出術があります。どちらにもメリット、デメリットがあり、最近の流行の腹腔鏡での手術が適応とならないケースもあります。胆石の性状、場所、合併症の有無、腹部手術の既往の有無などを考慮して治療法を決めます。
手術の適応
胆石発作が頻発する
胆のう炎の併発
胆のう癌の合併
充満胆石 が挙げられます。
最後に、胆石症では胆のう癌の発生が少なからずありますので、定期的な超音波検査が必要です。