急性胃腸炎(特にウイルス性)
感染性の胃腸炎にはウイルス性と細菌性があります。症状はどちらも同じですが、治療法が異なります。初期の臨床症状では両者の鑑別は困難です。ここでは、一般的なウイルス性の胃腸炎についてご説明します。
原因
原因ウイルスは、アデノウイルス、ロタウイルス、ノロウイルスが主なものです。
ノロウイルスが老健施設などで流行したニュースはまだ記憶に新しいことと思います。ノロウイルスはカキなどの二枚貝を摂取した際に感染します。このウイルスは非常に感染力が強く、患者さんの吐物や排泄物が感染源となり、集団発生がみられます。
ノロウイルス | ロタウイルス | アデノウイルス | |
年齢 | 主に成人 | 乳幼児 | 乳幼児 |
流行時期 | 秋〜冬 | 冬〜春 | 通年 |
感染経路 | カキ、二枚貝、吐物、便 | 食物、吐物、便 | 便 |
潜伏期 | 18〜48時間 | 1〜3日 | 7〜8日 |
便の性状 | 下痢 | 水様下痢、白色〜黄色便 | 下痢(比較的長期間) |
症状 | 嘔吐、下痢、腹痛 | 嘔吐、下痢、腹痛、発熱 | 嘔吐、下痢、腹痛 |
罹患期間 | 1〜2日 | 3〜7日 | 8〜12日 |
診断方法
便や吐物からウイルスを検出します。しかし、検査は保険適応ではないので、自費扱いとなります。また、検査の結果が出るには3〜5日かかりますので、結果が出た時には既に治っているというケースが多くみられるため、検査をする意義がないようです。それ以上に、治療法はどのウイルス性腸炎でも大して変わりませんので、敢えてウイルスを同定する必要性も少ないです。よく、老健施設、保育園や幼稚園で集団発生することがありますが、この際はウイルスの同定が必要となります。また、細菌性腸炎が疑われる、下痢が続く、血便が出る、そういう場合は便の培養検査や血液検査などが必要となります。
症状
嘔吐、下痢、腹痛が主症状で、37℃台の発熱を伴うこともあります。これにより脱水をきたすと、小児や高齢者では重症化することもあります。
治療
ウイルス性の胃腸炎の場合、ウイルスに対するお薬はありませんので、症状にあわせた治療が主体となります。制吐剤、整腸剤を処方し、脱水に対しては水分を補給し、経口摂取が困難であれば点滴をします。基本的に抗生剤は不要ですが、細菌感染が疑われれば出すこともあります。
感染防御対策
感染者は手洗いをまめに行い、タオルは共用しないことが重要です。患者さんの吐物、排泄物を処理する際は手袋、マスクをしましょう。終わったら、手洗い、うがいをし、雑巾など使ったものは捨てる方がいいでしょう。患者さんの入浴は最後にしていただくようにしましょう。会社への出勤や学校への登校は症状が消失してからとなります。ただし、食品を扱っている人は症状消失後も2〜3日は休んだ方がいいでしょう。