開発の中でもっとも苦労したもののひとつに、雨センサーの開発がある。

雨がビニールハウスの中に入ると、内張りしてあるビニールに雨が溜まりその重みでハウスが倒壊する。

勿論、雨をそのままハウスの中に入れてしまっては、湿度で作物が全滅してしまう。

雨が降った後、安心していられるようになるまでに10年はかかった。

櫛状のセンサーに水滴がついたときの
電気抵抗の減少を検出するのだが、方法はポンプ盤でよく用いられる水位検出電極と全く同じで

何ら目新しいものではない。

実際、後発メーカーのなかにはオムロンのフロートレススイッチを利用しているところもあった。

小雨のときは問題はないのだが、
どしゃぶりになると突然センサーが利かなくなってしまう

雨は地表の水が蒸発した蒸留水でもともと電気抵抗は高いのだが、空中の塵を含んで低くなっており土砂降りになると塵がほとんど

なくなって電気抵抗が高くなるというのが定説であった。そこで
検出感度を降雨強度に合わせて高くして対策することにした。

ところが、検出感度を上げたために、雨が上がってもセンサーの表面が完全に乾燥するまで降雨検出状態がつずいてしまって、五月頃

のにわか雨のときなどカンカン照りになっているのに閉まりっぱなしで、ハウス内の温度は50度を越えてしまったこともあった。

10月頃の晴天のつずいた日の夕方突然閉まってしまうこともあった。これにはマイッタ。原因が全く分からないのである。最初特定の

ハウスだけなので周囲環境を調査していたら、あちこちのハウスで出始めた。

感度が高いためセンサー表面の結露現象で動作していると分かるまでに2年センサー基盤の裏側にヒーターを貼り付けて対策したが、

ヒーターの種類や容量を決めるのも至難の技であった。

これで安心していたらまたまた問題発生。今度は表面が乾きすぎて小雨のときに閉まらないのである。

降雨量と温度、温度とヒーター容量、乾燥時間と温度およびヒーター容量等々の相関関係の答えを導き出すのも大変であった。

センサーの形状や取り付け角度によっても、雨水がセンサーに玉のようになって残ったり、センサー面の仕上げ状態によっては、

表面張力により水滴の玉ができたりなかなかめんどうな問題があった。

現在では、ほとんどクリヤーされ動作のソフトで対策を行い、実用上は問題はなくなっている。

 ところで開発の途中、水の塵と電気抵抗にどのような関係があるのか、シリコンウェハー工場から超純水をもらってきて試験をやって

みた。ところが、動作するはずのない全く塵のない超純水で問題なく動作するのである。

世に言う、
雨が降りつずくと雨水の電気抵抗が上がるというのは、あまり関係がないようである。

その後、いろいろな実験の結果土砂降りのときに雨センサーが動作しなくなる原因が分かった。

今後、後輩たちに新しいセンサーの開発を期待したいが、原因の発見は彼らの苦労を見ていることにしよう。

 雨センサーの開発中のある夜中、雨降りのビニールハウスで試験をやっているとパトカーがやってきて、職務質問を受けてしまった。

どうやらハウス泥棒と間違えられたようである。警察官の顔をよく見てみると、かって”ネズミ捕り”と称せられるスピード違反取締りの

レーダー式速度計のサービスをやっていたときに顔見知りだった警察官であった。

ビックリの様子だったが、顔見知りでなかったらとても簡単に信用してもらえなかったのではないだろうか。
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 30数年前、東京にて独立し測定装置や制御装置の開発を行う仕事を始めたが、ちょうど日本列島改造とかで世は増産増産。

工作機械も自動制御装置が進められ、毎日徹夜の連続でとうとうパンク。故郷宮崎に帰り疲れ切った心身の回復をはかっていました。

そのとき農協(現JA)に勤務していた実兄との焼酎を酌み交わしながらの話のなかで、施設園芸が伸びており、温度管理をはじめ

いろいろと問題があるのでお前の今までの経験を生かして何か出来ないかとの相談をうけました。思いがけない事故とはいえ、多くの方々に

迷惑をかけていたので同じような仕事はやりたくないと思っていましたが、気持ちもリセットされ縁あって制御盤メーカーに勤務することになりました。

さらになんと不思議なめぐりあわせか、その会社でビニールハウス開閉装置の開発をすすめており、担当の工場長が退社、私に担当が回ってくるこ

になりました。 気持ちをリセットしてくれ、新しい発見をしてくれた兄も、ビニールハウス開閉装置の普及を目にしながら、若くして癌に倒れ

今は亡き人となってしまった。
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制御動作ソフトの開発

雨センサーの開発

話のたね

それまで某大手電気メーカーの開発した、ビニールハウス開閉装置が発売されていた。

動作方法はON−OFF制御であった。設定温度よりハウス内温度が高くなると全開し、温度が下がると全閉

するというものでした。

確かに手動によって開閉するのに比べると楽になり、ハウス内温度も安定している。然しながら一挙に全開

することにより、真冬に

なると冷気が強烈に吹き込んでくるので、冷風障害や生理落花をおこしたりという問題をかかえていた。

開発した制御動作には比例制御動作を取り入れた。設定温度とハウス内温度との温度差分だけ開閉するという方法である。

問題は相当改善された。

制御機器も、当時の農業では考えも及ばなかった本格的なコンピュータ制御を取り入れた。

この方法にも欠点がある。ハウス内温度が設定値になっても比例制御では制御出力を出しつずける。不感帯を設けてなるだけ出

力が出ないようにしたが、それでも全開まで動作することがあり、結果ON−OFF制御と同じになってしまうことがある。ヒーター制

御や換気扇制御なら制御出力を出しつずけないといけないが、この装置では開閉動作を行った後は待機状態でないと困る。

そこで、比例制御とON−OFF制御の特徴を合わせた、温室・ビイールハウス制御用のハイブリッド制御を考えついた。

今ではビニールハウスには欠かせない装置となっている。

機構部については、平成8年2月に特許第2026304号を取得できました。

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ビニールハウス開閉装置開発の思い出

開発へのきっかけ