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やっぱり都会で暮らしたい(2)

■フォー

仕事で行ったベトナムはとても活気あふれる国だった。
朝早くからカブに乗った通勤者であふれ、祭りのような騒ぎだ。

ベトナムの朝は早く、仕事は7時半頃から始まる。
夫婦共働きが通常なので、家事は基本的にフィフティ・フィフティである。
朝あんな早くから仕事をしているとなると、朝食はどうしているんだろう。と、ベトナムに来たばかりの頃は疑問に思っていた。

朝ベトナムの街を歩いているとあちこちでフォー屋を見つけることができる。フォーとは米から作られるベトナム製の麺料理のことだ。ラーメンに似たものだが、味はもっとさっぱりしているし、ヘルシーである。ハノイやホーチミンではフォー屋が日本のラーメン屋以上の密度で分布しており、たいてい朝早くから営業している。
このフォー。大変おいしい。ベースが鶏肉か牛肉か魚かによって、それぞれメニュー名に違いがあるのだが、同じ鶏ベースのフォーでも店によって味、具は異なる。お好みで大量のモヤシ、コリアンダー(パクチ、香草とも言う)をドバドバ投入する。朝フォーを食べると「よーし頑張るぞ!」というただごとではない気持ちになるのだ。
ホテルの味気ない食事を嫌って、毎朝フォー屋を探索することがホーチミンでの僕の日課になっていた。

■ホーチミンでの出勤前風景

朝フォーを食べていると、通勤途中のカブから次々にベトナム人が降りてくる。彼ら、彼女らは吸い込まれるようにフォー屋の屋外テーブルに座り、フォーを食べる。同じテーブルの他人や店員と楽しそうに談笑し、フォーをかきこむ。食べ終わったら、さっさと席を立つ。

朝早いベトナム人には悠長に朝食を作っている暇はない。食事もアウトソーシングなのだ。東欧風の街並にフランスの香りがする街・ハノイやカオスとパワーのアジアンタウン・ホーチミンの街並を眺めてみると、メインストリートに沿ってぎっしり並んでいるのはほとんど食堂や喫茶店、フルーツ屋、薬屋といった生活関連の店だ。その中に観光客相手の店がポツポツ点在する。
そして、メイン通りから一歩路地に入り込むとそこは完全な迷路。時折小売店を見かける他はぎっしりと中層階建のアパートメントが立ち並ぶ。
彼らはそこから数分歩いてフランスパンを買い、フォーを食べ出勤する。あるいはカブを停め、行きつけのフォー屋で朝食を取る。

朝食は自宅で作るのが当たり前と思っていた僕にはそういう時間のセーブの仕方があるのかと感心するばかりだった。確かに独身の頃あるいは子供が産まれる前、朝ご飯は外食が基本だった。こちらの方が気の利いたものが食べられるのだ。しかし、子どもが生まれると日本人の伝統として、朝ご飯をしっかり作るのが日課になっていたようだ。
それにしても、東洋人でありながら朝食に見るベトナム人の徹底した合理主義。ただただ感心するばかりだった。
しかし、驚かされたのはこれだけではなかった。ベトナム特にホーチミンでの夜も僕には驚愕だったのである。

眠らない街

ホーチミン夜8時。街はさらに活気づいていました。4時半に仕事を終えた人々が、家で夕食をとり、再び街に戻ってきたのです。戻ってくると言っても、ほんの数ブロック先に住んでいるのですからすぐです。基本的に店はどこもオープンタイプなので、歩道と店の境界はないに等しいようです。道端でゲームをしている人々。女性はパジャマのような格好で(パジャマじゃないと言う説もあるが、どう見てもパジャマ)ふらふら歩いたり、歩道に座り込んでお茶を飲んだりしています。子供達でさえ、サッカーボールを蹴ったりして遊んでいました。

仕事が終わったら家に帰って、夕食をとり、ゆっくりくつろぐ。あるいは、職場近くのレストランで食事をとり、アルコールを摂取し、家路につく。こんな夜の過ごし方が日本人にとっては(少なくても僕にとって)当たり前でした。往復2時間から3時間の通勤時間に縛られているからです。そして、それは家庭と職場の往復、という単調な生活を生み出す大きな因子となり得ましょう。

もしこの時間を半分以上減らすことが出来たら、余った時間で好きなことを習ったり、仕事が終わってから、自宅近くのレストランで家族と食事をしたり、いったん家に帰ってから自転車に乗って、都内に勤務している友人達と会ったりすることができる。それは、きっと生活の質の向上をもたらすに違いない。
そう考え、2001年4月引っ越しを断行したのでした。