財団法人平岡環境科学研究所
自然環境科学研究
Vol. 3 (1990)
【論文 Article】

1 座間丘陵北西部のローム層

  [工藤周一,高野繁昭,柚木裕二]

 Zama B Pumice bed, Uwabami Pumice bed, Ontake dai-ichi Pumice bed, Tokyo Pumice bed, Kanto Loam formation, Standard penetration test

 神奈川県座間丘陵のボーリング調査によりTP, UP, ZBP等の軽石層を確認した.ZBPはUPの下位にあり,大磯丘陵のTu-7に対比すべきであるが,層相が異なり,対比には問題を残す.多摩丘陵では,層序から予想されるHmPとは対比できず,シモフリ帯中の軽石層に対比する.


2 熱帯性きのこオオシロカラカサタケの京阪神地区(近畿地方)への侵入

  [横山和正]

 Chlorophyllum molybdites, tropical fungi, distribution, poisoning, Kinki District

 熱帯性毒きのこオオシロカラカサタケは1980年に大阪府高槻市で記録され,以後,京阪神の内陸部へ北上し分布を拡大していることが分かったので,産地と中毒例を報告する.この分布の拡大は,都市化により京阪神地区の冬季の最低温度が上昇し,菌の越冬を可能にしたためと考えられる.


3 Relative frequency and spatial distribution of the different plant types in the
 Heterotropa hexaloba populations

  [UCHINO Akinori, HAMAMURA Masao]

  サンヨウアオイ集団におけるいろいろな植物型の相対頻度と空間分布(英文) [内野明徳,濱村政夫]

  distribution pattern, Heterotropa hexaloba, m*-m method, morphological variation, stamen combination

 熊本県大通峠と次郎丸岳のサンヨウアオイHeterotropa hexaloba集団において,花器の形態で区別された植物型の相対頻度は,3年間を通じて安定していた.また,各植物型の個体は集団内でランダム分布を示した.これは,自家受精による類似の遺伝子型の個体が発育段階で淘汰されたためと推察される.


4 阿寒湖の珪藻(3. 羽状類−広義のFragilariaを除く無縦溝類)

  [河島綾子,小林 弘]

 araphid diatom, diatom, Diatoma, Martyana, Synedra, Lake Akan

 前報に続き,阿寒湖から採取した羽状類の無縦溝類珪藻のうち8属17分類群について,光学顕微鏡,走査型電子顕微鏡の写真を示し,若干の考察を述べる.


5 長野県入笠山におけるニホンアナグマMeles meles anakumaの行動圏と環境選択

  [山本祐治]

 badger, Mt. Nyugasa, radiotelemetry, home range, habitat preference, activity rhythm

 ラジオ・テレメトリー法によりニホンアナグマの行動圏サイズと利用状況を調査し,繁殖ステージと季節変動について検討した.95%調和平均法で算出した行動圏サイズは200.5-407.1haで,冬季には行動圏が縮小し活動も低下した.育仔期のメスは一日中活動していた.環境では,冬季を除き,山小屋周辺を選択しカラマツ植林を忌避する傾向があった.


【資料 Data and Notes】

6 日本のハイゴケ属 II

  [安藤久次]

 Hypnum, Musci, Japan, classification

 前報に続き,残り15種について,それぞれを詳細に解説・図示した.まとめとして19種の世界における分布型を示し,最後に全種の形質・日本における分布,生態の一覧表を付した.


7 大気清浄度指数(IAP: Index of Atmospheric Purity)計算法のコンピュータプログラム化

  [南 佳典,田邊光夫]

 IAP, computer program, bryophytes, lichens, air pollution

 大気清浄度指数(IAP)は着生植物の被度や組成から大気の状況を判断する有効性の高い指数であるが,計算に手間がかかり,データの追加にはほとんど全てを計算し直さなければならない点で扱いにくいものであった.今回この計算を容易に行えるコンピュータプログラムを作成したので報告する.


8 高尾山(東京都)の蘚苔類 I. 蘚類

  [渡辺良象,岩片紀美子,大橋 毅,菅邦 子,杉村康司,平岡照代,本郷順子]

 flora, Mt. Takao, Tokyo, mosses

 高尾山から採集した蘚苔類標本により,152種の蘚類を同定したので報告する.植物地理学的に興味深い種としてフウリンゴケ,キヨスミイトゴケ,ヒロハヒノキゴケ,カシミールクマノゴケがある.一部の種についてはカラー写真を掲載した.


9 蘚苔類における重金属および放射性物質の蓄積とその影響

  [南 佳典,平岡正三郎]

 heavy metals, radioactive substances, bryophytes, indicator plants,
  pollution

 蘚苔類は大気汚染の有用な指標植物とされており,その植物体内に蓄積する重金属及び放射性物質についての研究が様々に行われてきた.本論では国内外で発表された論文,報告について概説する.