【論文 Article】
1 Systematic studies of Asian Aconitum (Ranunculaceae) III. Notes on Aconitum
tanguticum (Maxim.) Stapf from Central China
[KADOTA Yuichi]
アジア産トリカブト属植物(キンポウゲ科)の分類学的研究 III. 中国中部特産の種Aconitum tanguticumについて(英文) [門田裕一]
plant systematics, Ranunculaceae, Aconitum, Tibet, nectary shape, root
system
チベット東部に分布するAconitum tanguticumについて,レクトタイプの選定を行うとともに,本種について得られた知見を報告する.
2 Spatial distribution of plants with different growth stages and with
various
karyotypes in a Paris tetraphylla population
[WANG Li, UCHINO Akinori]
ツクバネソウ集団における各生育段階の個体および種々の核型を持つ個体の空間分布(英文) [WANG Li,内野明徳]
C-banded karyotype, m*-m method, Paris tetraphylla, plant population, spatial distribution
熊本県菊地のツクバネソウParis tetraphylla集団(4×4m)の個体について分析を行った結果,1-3葉個体は集中分布,4葉個体は集中分布からランダム分布,規則分布を示した.また,開花個体はC-バンド核型に関して広範な多様性を示した.これは本種が主として自由交雑によって繁殖しているためと考えられる.
3 Vegetations in and around the minorities' villages in Western Yunnan,
China
[KONTA Fumihiro, WANG Lisong]
中国雲南省西部に於ける少数民族の集落の中及び周辺の植生(英文) [近田文弘,王立松]
vegetation, Yunnan minority, firewood and charcoal, ethnobotany, environment
少数民族の集落6集落について植生調査を行った.大きな農家では敷地内で有用植物が栽培され物質両面の生活の豊かさを感じさせること,集落の中と周辺には帰化植物や雑草が多く周辺からの隔絶は感じられないこと,宗教的な意味で集落内の巨木群や森が保存されており自然保護状の機能も果たしていることが注目された.
4 阿寒湖の珪藻(6.羽状類−縦溝類:Cavinula, Diadesmis, Geissleria, Hippodonta,
Navicula, Placoneis)
[河島綾子,真山茂樹]
raphid diatom, diatom, Navicula, Placoneis, Lake Akan
前報に引き続き,阿寒湖の珪藻資料から羽状類の縦溝類に属する36分類群について,光学顕微鏡,走査型電子顕微鏡の写真に若干の考察を付して報告する.
5 Crabs collected from submarine caves in the Palau Islands
[TAKEDA Masatsune]
パラオ諸島の海底洞窟から得られたカニ類(英文) [武田正倫]
crabs, Majidae, Portunidae, Pilumnidae, submarine caves, Palau Islands
コロール島周辺の海底洞窟からクモガニ科1種,ワタリガニ科3種,ケブカガニ科2種を採集した.うちSchizophrys dahlakは紅海南部,Charybdis paucidentataはペルシャ湾,紅海,インド洋西部からのみ報告のある稀種である.また,調査結果からクモガニ科とワタリガニ科は当地の海底洞窟の代表的な種であると推測された.
6 マルキマダラケシキスイの幼虫について(甲虫目:ケシキスイ科)
[林長閑]
leaf-litter, Stelidota multiguttata, larval form, Nitidulinae larvae, common structure
マルキマダラケシキスイStelidota multiguttataの幼虫形態を,ケシキスイ亜科幼虫の共通形態とともに記載した.
7 亜高山帯域における巣箱を利用したヤマネGlirulus japonicusの環境利用
[山本祐治]
Japanese dormouse, sub-alpine belt, habitat utilization, nestbox
長野県入笠山を中心に調査を行い,ヤマネ,ヒメネズミ,ヒガラ,シジュウカラ,スズメバチの巣箱利用を確認した.ヤマネは4-11月に巣箱を利用し,9,10月の利用率が最も高かった.11-3月の利用はみられなかった.環境別の利用率は常緑針葉樹林の巣箱が最も高く,次いで落葉広葉樹林,カラマツ植林地であった.
【資料 Data and Notes】
8 埼玉県比企郡玉川村の後期更新世,田黒含植物化石層から食痕のある球果化石の産出
[楡井 尊]
fossil cone, stripped by rodent, late Pleistocene, Taguro peaty bed
食痕と判断される形態を呈するPiceaの球果化石が産出したので報告する.鱗片の基部を除く大部分が欠損し,ささくれ状の断片が残存している点などからリス類の食痕に類似していると推察する.
9 ホトケドジョウ(ドジョウ科ホトケドジョウ属)の生息環境調査
[大澤進,高野繁昭,田邊光夫,平岡正三郎]
Lefua costata echigonia, habitat condition, Tama Hill
関東地方多摩丘陵の8地点で,ホトケドジョウ生息地の水質につき,pH,電気伝導率,溶存酸素,化学的酸素要求量等の継続調査を行ったので結果を報告する.
10 平岡環境科学研究所実験林追跡調査報告(1997-1998)
[杉村康司]
flora, tree census, forest ecology, succession, floristic change, Tama Hill
植物相の追跡調査により実験林の現況を把握するとともに,既往調査(1987-88)との比較によって植生の動態を考察し保全の方向性を検討した.実験林は,落葉広葉樹の衰退と常緑広葉樹の増加・分布拡大が明らかとなったが,今後も必要最低限に留めた植生管理を行い自然に近い状態で保全して行くことが望ましいと考えられる.
11 平岡環境科学研究所実験林の大型菌類(きのこ)相(1997年度調査結果)
[井口 潔]
macrofungal assemblage, ectomycorrhiza, experimental forest, Kawasaki City, Kanagawa Prefecture, Japan
通年調査の結果24科45種を報告した.10月には例年の14%の降雨量しかなかったため,子実体形成が抑制されたと推測され,継続調査が必要と考えられる.また,実験林における外生菌根形成菌の位置づけについて考察を行った.
12 フクロウ
[浦野守雄,大澤 進]
Ural owl, photographs, bihavior
フクロウをカラー写真で紹介するとともに,生態につき若干の解説を加えた.