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 | 「デビッド・フィンチャー監督『セブン』見ました」 |
 | 「ブラッド・ピット演ずるミルズ刑事とモーガン・フリーマン演ずるサマセット刑事が連続猟奇殺人鬼を追います」 |
 | 「これは強烈な映画です。見終わった後得も言われぬ余韻が体内に残ります」 |
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 | 「さて、なにを話しましょう。強烈な印象でしたね。何がこう強い印象を引き起こしたのだと思いますか」 |
 | 「猟奇殺人ですからね。ある程度耐性を持った人でないのなら、強く迫るものがあるのは当然なのですけど。うーん、ホラー的な、おぞましさ、不気味さ、サスペンスのハラハラする感じ…。グロテスクな死体も一応出てきますし……。といって、ホラー映画のように、死体でびっくりしてくださいなんてことはなくて、画面の端に映るくらいであまり見せないようにしていましたけど」 |
 | 「怖さが強烈だったと」 |
 | 「いえ、違います。結局演出力としか言いようのないものだと思いますね。ホラー的なものもあるのですけど、びっくりさせるのではなく、じわじわと這い寄ってくるような怖さ、でしょうか。怖さというよりじりじりと不気味な気持ち悪さに絡められているような感じですね」 |
 | 「ホラー映画ではないですね」 |
 | 「ホラーではないと思います。怖いですけど、サスペンスが見れるのなら充分見られると思います。私もホラーは見られませんけど、サスペンスなら何とか。怖いもの見たさは私にもありますから」 |
 | 「とにかく演出がすごいですね」 |
 | 「何か不気味でよくわからない感じがずっと続いているんですよね。画面も薄暗く、おそらく視聴者が見たいものをはっきりと映さないようなカメラワークをしていると思うんです。交わされる会話も、わかるようなわからないような。主人公の一人ミルズ刑事が、赴任してきたばかりで、街にまだ馴染めていないのも、そうした居心地の悪さを感じさせる一因かもしれません。猟奇殺人というテーマの、嫌な感じをよく演出できていると思います」 |
 | 「とにかくずっとスッキリしませんね」 |
 | 「怖いもの見たさも人間にはありますから、こういうのもエンタテインメントとしてありなんですよね。というかやっぱりすごいものが見たい。それで『セブン』はすごい映画ですから、それで十分なわけですね」 |
 | 「よくわかりませんけど」 |
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 | 「とにかくラストシーンですね」 |
 | 「いや、ラスト以外もすごいですけどね。画面にずっと緊張感がみなぎっていますから。とはいえあのラストの独白は、あれ以上のラストシーンというのもそうないだろうと思うような、最高の独白ですね。映画関係なく、あの独白だけ、人生の中で時として思い出したりします」 |
 | 「ん、この映画以前に見たことあったんですか?」 |
 | 「えと、確か最後の部分だけなぜか見たことがあったんですね。多分テレビでやってたのを、最後だけチャンネル回してみたことがあったと思います」 |
 | 「じゃあラストの展開も」 |
 | 「知ってました」 |
 | 「ネタバレ…」 |
 | 「だから見たかったというのもありますけどね。でも、良い映画はネタバレなんて関係ないですから」 |
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 | 「俳優の演技はすごいですね」 |
 | 「ピットもフリーマンも最高ですね。かっこいいし重みがある。そしてなんといってもケヴィン・スペイシーですよ。もう最高の演技ですね。彼がいいから映画もいいんです」 |
 | 「パルトローもかわいかったですね」 |
 | 「彼女が愛されないと映画が成立しないですから。視聴者に愛されるヒロインしてたと思います」 |
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 | 「テーマの一つである七つの大罪については、あまりピンときませんでした。英語圏の人なら良くわかるんでしょうか」 |
 | 「七つの大罪に絡めならが殺人が行われていくわけですけど、宗教的なテーマは薄かったように思います」 |
 | 「キリスト教が身近にある人なら違う感覚になるのでしょうか。私にはよくわかりませんでしたね。むしろ都会に生きる人というのがテーマになっていたように思いますけど」 |
 | 「ミルズは都会になじめていない新参者ですし、サマセットも都会人に疲れているか愛想をつかしているかしているように見えます」 |
 | 「主要なテーマではないですけどね。殺人鬼も、都会に住む人々へ何らかの主張がしたかったあるいは彼らからの注目を浴びたかったかのようにも描かれます。ただ彼の思惑もはっきりとは描かれません。わからないから不気味なわけですけどね」 |
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 | 「とにかくすごい映画です。世の中にサスペンス作品は数ありますが、こうも迫力のある、猟奇殺人をテーマにした作品はそうないのではないかと思います」 |
 | 「有名な作品ですしね。有名なのは伊達じゃないということらしいですね」 |
 | 「死ぬ前に見といてよかった、というところでしょうか」 |
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