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 | 「マーティン・スコセッシ監督『グッドフェローズ』見ました」 |
 | 「巨匠スコセッシ監督の代表作ともされるギャング映画ですね」 |
 | 「さすがに名作といわれるだけのことはある作品だと思いました。満足です」 |
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 | 「さて感想を」 |
 | 「筋書きはドラマという程のものはなく、ギャングの生活を描いているという風に思いました。裏社会の人間が日々どういうことを考え、どういう人と過ごし、どういう生業をしているかが描かれています。俯瞰して描くというのではなく、主人公がいて主に彼と彼の所属しているグループのことが描写されるのですが、彼を一つの典型としてギャングの実態を描く、という感じでしょうか」 |
 | 「色々なギャングが出てきてそれらの生活を点景していくということではないということですね」 |
 | 「あくまで話は主人公が中心です。だから彼の恋なんかも描かれるのですが、基本的にはサラッと流されて、生活の中に溶け込んでいってますね。ドラマとドキュメンタリーの折衷、折衷といって、8:2くらいだと思いますが、とにかくドラマティックに演出してはいない」 |
 | 「とすると筋書きに抑揚がないのですか」 |
 | 「そんなことは無く、物語はすごく起伏に富んでいます。ギャングですからね。実態を描くだけでも、いわゆる普通の生活をしている私たちからすればすごく非日常的です。もちろんエンタテインメントとして楽しませるように描いているのですけど、ラスボスがいてそれを倒そう、とかいう筋書きではないということです」 |
 | 「ギャングといえば、少年漫画的には逆説的にヒロイズムと結びつかれがちですけど」 |
 | 「ヒロイズムは完全にないです。ギャングはギャングです。一般人からすれば迷惑で怖い対象でしかありません。ただ、ならばなぜギャングというものは存在するのか、という問いかけが作品には含まれます。主人公は冒頭からギャングに憧れているのですが、ある種の人間にとって、裏社会の生き方、自らの欲望のほしいままに行動する人間というのが魅力的に感じられるのではないか、ということですね。あるいは、全ての人間にとって多かれ少なかれ悪に魅力を感じるところはあるのではないか、という問いに繋がるでしょう」 |
 | 「誰でも思うがままにふるまうことができれば気持ちいですからね」 |
 | 「ただそれでは他人と軋轢が生まれてしまうから人は欲望のままにふるまうことはしないのです。だからこの作品にちょっと足りないと思うのは、一般人の一般的な感性ですね。自分と他人の幸せのために欲望を抑圧しているという視点があった方が、作品に厚みが生まれたようにも思うのですが」 |
 | 「作品にとって必要がないという判断でしょうね」 |
 | 「色々な作品があってしかるべきですからね。この作品はあくまでもギャングを描くことに徹したということなのでしょう。しかしラストシーンでは、ギャング時代への郷愁が独白されます。こうなるともう人の生の、生き方というものへの問いかけになります。ギャングかどうかはともかくとして、欲望を抑圧する生き方が本当に正しいのか、生とはいったい何なのか、という問いですね」 |
 | 「同じ監督の『ウルフ・オブ・ウォールストリート』でも同じような問いかけがなされますね」 |
 | 「決してギャング的な即物的な生き方を否定しているわけではないのですよね。だからもしかしたら、一般人の一般的な感性を描いてしまってはそうしたテーマにとっては邪魔になってしまうのかもしれない。ヒロイズム的には、実体的なギャングは悪でしかないわけですから。一般人の悲惨を描いてしまってはテーマが曖昧になってしまいます」 |
 | 「決してギャング的な生き方を肯定しているわけではないですけどね」 |
 | 「抽象的に捉えると、彼らの生き方にも理はあるのではないか、という問いかけになるわけです」 |
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 | 「完成度が高いのであまり言うことがないですね」 |
 | 「楽しいんですよね」 |
 | 「こっちが理解するかしないかくらいで次の事件、事件というか事態が次々に起こっていくので、とにかく飽きさせないようになっています。難解ということもなく、必要最小限の描写で的確に何が起こっているのかわかるようになっています。それで事態が次々に移り変わっていくので、飽きさせない。職人技を感じさせます」 |
 | 「画面もいいですね」 |
 | 「詳しいことは私にはさっぱりですけど、カメラワークなんかもよくできているんだろうなあと思います。主人公の視点で歩きながら次々に人物が紹介されていくところなんか、たぶんすごい。撮影するの大変なんだろうなあと、小学生的な感想ですけど、すごいですね。素人的に惹きつけられるので、いいんじゃないかと思います」 |
 | 「俳優の演技はどうですか」 |
 | 「演技のことなんてわからないですから、上から目線で良かったよ、なんていえないですよ。すごいと思います。デ・ニーロが主演なんですかね。レイ・リオッタなんじゃないですかね。ウィキペディアではリオッタになってるな。デ・ニーロさんやジョー・ペシさんよりは名声を得ていない人だと思いますけど、この作品はリオッタさんあっての作品だと思います。デ・ニーロさんもすごいですね。彼が画面にいるだけでなんか引き締まりますね。だからなんか大物に感じるんですけど、ジミーのギャングとしての立ち位置が逆によくわからなくなりますね。組長とか若頭的な位置ではないんですよね。でもまあ、小物ではないのか」 |
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 | 「とにかく楽しい二時間でしたね」 |
 | 「ギャングについてちょっと詳しくなれました。勘違いですけど。面白い映画でした。満足です」 |
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