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ファウンデーション(前期三部作)

<ウィキペディア>


レヴィ笑み「『ファウンデーションシリーズ』前期三部作読了しました」
ネムコ笑み「アシモフの代表作の一つだね。アシモフは読んだことあった?」
レヴィ笑み「初めて。まぁ読書家ではないです。kindleでセールしてた時に買って、ちまちま読んでましたよ」
ネムコ笑み「電子だとセールがあるのがいいよね」
レヴィ笑み「本は情報の集まりだと思っているので、紙の本にこだわりはないです。もちろん紙の本も好きですが」
ネムコ笑み「本題に入りましょう」
レヴィ笑み「いやさすが有名作品。SFというジャンルを代表する作品ってことでいいんですかね。何より気宇が壮大ですね。銀河帝国の規模がね、すごい」
ネムコ笑み「ええと、読み直すのめんどいのでウィキペ引用」

  時代は数万年後の未来の話で、人類は銀河系全体に進出して約2500万個の惑星に住み、人口は兆や京の単位で数えられるほどになっている。

レヴィ汗「ちょっと何言ってるかわからないですね」
ネムコ笑み「わからないですか」
レヴィ笑み「私が仮に未来史を創作するとしても、万年規模は無理ですね。数百年か、せいぜい千年くらい」
ネムコ笑み「物語は銀河帝国の衰退から第二銀河帝国成立までの千年の間の話ということになってますけどね」
レヴィ笑み「それが『ファウンデーション』の上手いところでしょう。壮大な銀河史が背景になっているから、読者は物語を読み進めながらも、これがある歴史の一部分であることを意識せざるを得ない。ちょうど歴史書を読んでいるような気分にさせられます。章ごとの最初に第二銀河帝国時代に発行された百科事典からの引用があるのも、歴史を感じさせる演出になっていますね。今読んでいる時代の後も、歴史は続いていく、と」
ネムコ笑み「何も言うことはない大満足ですか」
レヴィ笑み「そうでもない。ということを今回突っ込んでみたいと思うのですが。ただその前に言っておきますが、熱狂して寝食を忘れて読み込んでしまった、みたいなものでもなかったです。暇なときにちょっとずづ読み進めていっただけのことで。十分面白かったですが、エンタテイメントとしてハラハラドキドキ大満足! って感じではないですね。教養として、読んでおいてよかったとは思いますが。エンタテイメントもいろいろありますし、うーん、得点化するようなものでもないですけどねえ」
ネムコ困り「一言多いなあ」

ネムコ笑み「で、何を言いたいわけですか」
レヴィ笑み「最後の章ですね。第一ファウンデーションと第二ファウンデーションとの戦い」
ネムコ笑み「こういう時は軽くあらすじを書くべきものなんですけど…うーん、まぁ軽く……。銀河帝国衰退を予見したハリ・セルダンという人によって、速やかに新たな銀河帝国が樹立されるための第一ファウンデーションと第二ファウンデーションという二つの組織が設立されました。で、セルダンの予見通りに第一ファウンデーションは順調に成長していくわけですが、五百年くらいたった後でザ・ミュールという人の精神に干渉できる突然変異が現れて第一ファウンデーションは破れてしまうんですね。で、第二ファウンデーションがミュールを阻止するんですけど、そのことによって第二ファウンデーションの存在が第一ファウンデーションの人たちに知られてしまう。最後の章はそのあとのお話」
レヴィ笑み「精神に干渉してくる存在なんて認められるか、ってことで第一の一部の人たちが第二を探し出して抹消しようとするわけですけど、色々あって第二が勝つわけですね。勝ちにも色々ありますけど、第二は完全に思惑を達成するわけです」
ネムコ笑み「で、それがどうなのですか」
レヴィ困り「気に食わない」
ネムコ汗「はい、まあ、そうですね」
レヴィ笑み「何が気に食わないのかなあ、ということを考えたいんですけど」
ネムコ笑み「どうなんですか」
レヴィ笑み「個人の精神に干渉する=個人の尊厳を冒涜する存在が勝つ=是とされることが気に食わないのかあ、と」
ネムコ笑み「そうですね。基本的にはその考えでいいのではないかと。個人の人格を意のままに操ることは個人の尊厳への攻撃でしょうか」
レヴィ笑み「そうです。個人の尊厳とは個人の人格であり、人格を攻撃することへ嫌悪感を覚えるということは個人の人格を尊重するという価値観を有しているということです。この価値観がどこから来たのか、ということは問題になります。時代なのか、場所なのか、個人的なものなのか」
ネムコ笑み「アシモフはアメリカの人間で、ファウンデーションが書かれたのは1940年代でした」
レヴィ笑み「ただ、そもそも第二が勝ったことを作品が第二を是としていることが必ずしもイコールで結ばれるわけでもありませんからね。あの終わりがバッドエンドあるいはビターエンドである、という捉え方も別に構わないのです。私にとっては、バッドは言い過ぎにしてもビターエンドと捉えざるを得ないところですね」
ネムコ笑み「エンタテインメントがハッピーエンドでなければならないなんて法律はないですからね」
レヴィ困り「ただ、うーん、もやもやするなあ」
ネムコ笑み「ただ、第二ファウンデーションはそもそもハリ・セルダンが第一とともに設立したものでした。第二の勝利はセルダンプランの勝利なのではないですか」
レヴィ笑み「そう。んでセルダンプランのことは応援していた」
ネムコ笑み「第二の勝利を喜ばないこととセルダンプランを応援していたことは矛盾する」
レヴィ笑み「この矛盾はどこから来るのか。仮説としては、1.セルダンプランについての誤解。2.セルダンに対する英雄崇拝。3.視点(主人公)補正。の三つかな」
ネムコ笑み「まず1。セルダンのプランについて誤解していた。これは第二の実態が明かされるまでってことかな」
レヴィ笑み「うん。まずセルダンの心理歴史学は群れとしての人間の行く末を見通し、導くもので、個人の人格をどうこうする、どうこうできるものではない。だから心理歴史学を是とすることと第二ファウンデーションの人格操作を非とする態度には矛盾がない」
ネムコ笑み「第二ファウンデーションの実態が明かされたことで初めて違和感が芽生えた」
レヴィ笑み「うん。そもそもシリーズの第一巻は列伝のような筋立てで、セルダンのプランに導かれながら個人がどう考え、行動し、危機を乗り越えていったかが主題となっていた。だから一巻を読んだ段階で個人を尊重する価値観と読後感の快さとは相反しなかった。しかし第二の実態は個人尊重とは相いれないものだった。こう考えていけば、セルダンプラン自体への評価にも影響が及ぶことになる」
ネムコ笑み「今はセルダンプラン自体にも違和感がある?」
レヴィ汗「うーん、そんな簡単に割り切れるものでもないけど」
ネムコ笑み「次行きましょう。2はどうですか。英雄崇拝?」
レヴィ笑み「そもそも私の嗜好として英雄崇拝があります。歴史小説、もっと具体的に言うと司馬遼が好きなんだよね。当然歴史上の英雄が好き。なので創作作品の英雄、この場合英雄じゃなくて偉人だろうけど、偉人のことを好きになる傾向がある。だからこの作品における偉人であるセルダンについても好意を抱きやすい」
ネムコ汗「歴史小説好きなら好きになりそうな小説ですよね」
レヴィ笑み「だからセルダンのこともセルダンプランのことも応援したくはなりますね。ただ、前時代の人物としてのちの世の中に方向性を与えることと、同時代の人物の思考に強制的に介入して操作するのは、やっぱりやっていることは違う」
ネムコ笑み「結局プランの全容が明かされていなかったことが問題なのかな」
レヴィ笑み「創作の方法論としては全く間違っていないですけどね。表現の成否は、特にエンタテインメントは、いかに受け手の興味付けをするかにかかっているから。だからアシモフは間違っていない」
ネムコ笑み「実際人気作になりましたからね」
レヴィ汗「というかねえ」
ネムコ笑み「はい」
レヴィ困り「精神操作ができるんなら第一ファウンデーションいる? って思っちゃうんですよね。いやまあ、わかるよ、理由付けならできるでしょうよ。例えばあまり多くの精神操作はできない、とか。でもなあ、心理歴史学の、個人は予想できないが群体は予想できる、という理論が結構納得できて感動しただけに……というか個人は予想できないって、もうこれは矛盾じゃないですかね。操作できるんだから……」
ネムコ困り「皇帝を操作すりゃいいじゃんって」
レヴィ笑み「セルダン時代では精神操作がまだ発展途上だったなど言えるんだろうけど。というか第一ファウンデーション設立の許可を得たのも、大きく言えば精神操作なのか。でも交渉と介入はやっぱり違うんじゃないか。うーん」
ネムコ笑み「3は? 主人公補正?」
レヴィ笑み「小説を読むときって、大体主人公に感情移入するじゃん。主人公というか、視点人物に。だからセルダンがメインならセルダンに肩入れしちゃうし、少女がメインなら少女に肩入れしちゃう。これはいい悪いじゃなく、そういうものだから」
ネムコ笑み「最後のエピソードは第一ファウンデーションの少女が主要人物だね」
レヴィ笑み「明確かどうかはわからないけど、大体あの女の子が主人公なんですよ。特に14歳の早熟とはいえまだ未熟な女の子が孤立無援で敵(第二ファウンデーション)に立ち向かっていくんだから、読者としては応援したくなる。それがねえ……」
ネムコ笑み「ぶっちゃけてしまえば、負けてしまいますからね。全部第二の掌の上でしためでたしめでたし」
レヴィ汗「ふざけんな!」
ネムコ汗「バッドエンドと思いましょう。嫌な最後だったねと」
レヴィ困り「もう殺されたりとかの方がましじゃない? 生まれた時から操作されてましたって……」
ネムコ困り「人形ですよ。人間じゃないですよ」
レヴィ困り「生身の人間だよ。生きた人間だよ」
ネムコ笑み「小説ですよ。ただの文字ですよ」
レヴィ困り「それは禁句!」

レヴィ汗「長い。もうやめましょう」
ネムコ笑み「じゃあ総評」
レヴィ笑み「面白かったですよ。特に第一巻は列伝風で、歴史小説のように読める。SFのことは詳しくないので他と比較してどうこうは言えないけど、詳しくない人間としては世界観もすごいと思う。第二巻以降は趣向が変わりますが、一巻の焼き直ししても仕方がないですからね。展開は納得がいかないけど、歴史上の出来事と思えば、納得いこうがいくまいが関係がない。読んでよかったと思います。特に架空の歴史ものの金字塔なので、教養として読んでおくべきだったし、そのすごみはよく感じることができました。納得いかない部分は、むしろ自分の課題として何かに昇華できればいいんじゃないでしょうか」
ネムコ笑み「ありがとうございました」

2020年10月5日作成


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