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バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)

<ウィキペディア>


レヴィ笑み「アレハンドロ・G・イニャリトゥ監督『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡 )』視ました」
ネムコ笑み「かつてキャラクター映画で一世を風靡した俳優が、再起をかけて演劇に挑むお話です」
レヴィ笑み「なんだこのタイトル。変なタイトルだ」
ネムコ笑み「褒めています」

レヴィ汗「うーん」
ネムコ笑み「第一声がうなり声ですか」
レヴィ笑み「評価に困る作品ですね。なんだこんなもの見せやがってという気持ちもあれば、凄い映画だなあという気持ちもあります」
ネムコ笑み「気持ちの良い映画ではないですね」
レヴィ笑み「ブラックユーモアなのか、と途中まで気づかずに見てましたので、趣味が悪いというか、気持ちの悪い映画だなあと思ってたんですが、いや、やっぱり気持ちの悪い映画ですね。こういう趣向もあるんですかね」
ネムコ汗「あまりこういうものを見る経験がないですからね」
レヴィ笑み「<こういう趣向>なんていわれたくないんだろうなっていうのは、伝わってきますけどね。誰もやったことのない、新しいものを作ろうとしているのだろうと思います。クリエイティビティは、やっぱり伝わってきました。ただ、うーん、やっぱり気持ち悪かったですね。うん、気持ち悪い」
ネムコ笑み「では、気持ち悪かったということで」
レヴィ笑み「“気持ち悪かった”が、褒め言葉かどうかはわからない、というところですけど」
ネムコ笑み「あまり経験したことのない感覚を経験することは出来ましたね」
レヴィ笑み「エンタテインメントは視聴者を気持ちよくさせるもの…いえそんな決まりはないですね。これもエンタテインメントでしょう。いやあでも、気持ち悪いですわ。ちょっと吐きそう」
ネムコ笑み「吐かないでくださいね」

ネムコ笑み「ではどういうところが気持ち悪かったかですけど」
レヴィ汗「うーん、やっぱりまずは登場人物たちですね。露悪的とでもいうんでしょうか。どうも良心的な人物がいないし、平気で人間の醜い部分をさらけ出してくるので、どうにも見ていて気持ちが悪いです」
ネムコ笑み「カタルシスを得られるようなところがなかったですね」
レヴィ汗「あと、演出的にも、ちょっとマジックリアリズム的なところがありながら、特に説明されることもなく話が進んでいくので、そういう点でも、違和感を持ちながら視聴を続けていかなくてはいけません。これはもちろん、そういう趣向なんだと思います」
ネムコ笑み「説明してほしいわけでもないんですよね」
レヴィ笑み「例えば超現実的な描写は主人公の主観であって、第三者視点では現実的な動きがされている、なんて描写があれば、ああそういうことか、くらいは思ったかもしれないでしょうけど、そんなことをしてもつまらないだけですからね。これでいいですよ。でも気持ち悪かったなあ」
ネムコ汗「ちょっと気持ち悪いと言い過ぎですね」
レヴィ笑み「ちょっと気持ち悪いと言い過ぎですね」

レヴィ笑み「あまり解釈しないほうがいいというか、解釈を確定しようとしないほうがいいと思うんですけど、テーマ的には、生みの苦しみ、でしょうかね」
ネムコ笑み「主人公は名声を得たくて四苦八苦しますね」
レヴィ笑み「ただどうも曖昧な感じになるのは、主人公は案外今も名声があるところですね。だから単に、また有名になりたいだけなのかどうかは、ちょっと簡単に捉えていいのかは迷うところです」
ネムコ笑み「“バードマンの人”として、今でも道を歩けばサインを求められたりしていますね」
レヴィ笑み「“かつての人”という評価を払拭したいということなのでしょうけど、ちょっと解釈を進めて、“新しいもの”を作ろうともがいていたんじゃないか、という気もします。観客の入りは良かったみたいだし、単にお金が欲しいとか、有名になりたいというだけではないように思えるんですよね」
ネムコ笑み「新しいものを作ろうともがく、という点では、この映画自体にも重なるテーマですね」
レヴィ笑み「ちょっと二重写し的に感じられますね。そういう趣向だったかどうかは知りませんけど」

ネムコ笑み「役者さんは、みんな良かったですね」
レヴィ笑み「みんな良かったんじゃないでしょうか。露悪的な描写を、違和感なく演じていたと思います。みんな、まあ嫌な人間たちなんですけど、でも人間ってこういうものだよなと思わせる存在感がありました。見ていて気持ちのいいものではないですけど」
ネムコ笑み「マイケル・キートンのキャリアと主人公のリーガンの設定とが二重写しになっているらしいですけど」
レヴィ笑み「キートンはあまり聞いたことがなかったので、私にはよくわからないですね。向こうの人やバットマンファンには、面白い趣向だったのでしょう。存在感のある役者さんだなとは思いました」

レヴィ笑み「映画界と演劇界の確執みたいなものが描かれていましたけど、それもブラックユーモアの一つなんでしょうけど、そういうものなのでしょうか」
ネムコ汗「どうもこの辺は、業界人が内輪で盛り上がる話のように思いますけどね」
レヴィ困り「興行でやる以上はどれだけお金が儲かったかが全てで、<低俗な>映画が演劇界の<本物の>演技に劣る、みたいな言説はおかしいだろうと思いますけど」
ネムコ笑み「その辺もブラックユーモアなんでしょうね」
レヴィ困り「低俗だろうと子供だましだろうとお金儲けは大事ですよね。うーんでも、興行ではなく芸術と捉えるなら…でもだったら観客を入れる必要もないのではという気も…。うーんなんにせよ、生きていかないと芸術も作れないし、生きるためには大体の場合お金を稼がないといけないので、お金儲けを軽視するのは良くないと思いますね。まあ、あまり突っ込んで考えるのはやめましょう」
ネムコ笑み「ブラックユーモアの一つということで」

レヴィ笑み「全体的に新しいものを作ろうとする気勢に満ちた作品だと思いました。ただそうした“新しさ”も相まって露悪的なストーリーの気持ち悪さも感じました」
ネムコ笑み「気持ち悪い、は必ずしもネガティブな評価ではないというところで」
レヴィ笑み「必ずしもポジティブな評価でもないですけどね。娯楽なんだから、楽しい思いをしたいですよ」
ネムコ笑み「でもたまには嫌な気持ちになるのもいいでしょう」
レヴィ笑み「そういうものですかね。あとちょっと思ったのが、“新しいもの”を古さを持ったもの(かつてのバットマンの役者)で作ろうとしたっていうのも、面白いところですね」
ネムコ笑み「新しさを追い求めることは、古さを顧みないことじゃない」
レヴィ笑み「新進の気概に満ちた、強い作品でした」

2021年12月2日記述

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