ふゆのさくら

とある冬の夜 外には風花ちらちらと

TVでは流れる深夜放送 僕は

映る1本の桜の木を ぼんやりと眺めていた

 

桜は立っていたんだ 木の葉をまとわずに

真冬の寒空に 木肌をさらして

恥ずかしそうに一人立っていたんだ

 

僕はそんな彼女を見ているうちに

とてもとても 切なさでいっぱいになった

 

でも その時ふと

誰かが言っていた言葉を思い出した

 

「桜はね 冬の寒さがつらいときの方が

春になってから 鮮やかな花を咲かせるんだよ」

 

そうだね

きっときっと そうだね

冬の桜は 寒さに耐えながら頑張ってるんだ

 

頑張って また頑張って

しっかりと根っこを張りながら

色んな栄養を吸収してチカラを蓄えてるんだね

 

そうして 春が訪れたなら

元気いっぱいに 誇らしげに

綺麗なうす桃色の花を

たくさんたくさん咲かせるんだ

 

少女の優しい笑顔のような

愛らしい小さな花を 

たくさんたくさん咲かせるんだよね

 

寒さを耐え抜いた桜は

花の季節が過ぎても 冬のつらさを忘れない

 

萌える若葉の季節には

瑞々しい緑の葉を 体いっぱいにまとって

人を癒す木陰を作る そんな優しさを持っているんだ

 

花咲け 花咲け さくら咲け

寒さを乗りこえ さくら咲け

 

花咲け 花咲け さくら咲け

キミは春待つ ふゆのさくら

 

僕は そんなキミを

ずっとずっと ここで見まもっている

 

 

あとがき

「さくら」から連想するイメージには

「春」、「成功」、「希望」、「卒業」や「別れ」

実に様々な物がありますね。

楽しいイメージもあれば、悲しいイメージもある。

この作品が掲載される日、小さな卒業式があります。

(といっても、学校を卒業する訳ではないのですが)

俺がとても大好きで、妹のように思っている女の子が

小さな、けれどもとても大事な一歩を歩み出すための

大事な大事な節目となる卒業式です。

その女の子の進む道は、成功など約束されない

厳しく長い道のりです。

でも、冬の桜のように、つらいことに負けないで

きっと花を咲かせて欲しいと願っています。

 

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Updated 31/Jun./2004

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