Love Wish.

'97 Version.
−Everyday,Love Somebody.But Someday,Wanna be Loved by Somebody.−

 

Second Love. "Book Marker"・後編

 

あれからもう五年が経過している。

互いの気持ちを確かめ合うこともできず、後味の悪さと未練だけが残った苦

い思い出が心に甦ってくる。

 

(そう言うたら、あん時・・・最後に貸した本。あれ、何やったかなァ・・・)

 彼女はまだ姿を見せない。拓美は少し気落ちして下を向き、ため息をつく。

目に映ったグラスのアルコールは薄くなり、その海に小さくなった氷が所在な

げに浮かんでいる。

 

 パーティーはとうとう、幕を下ろしてしまった。

 最後になっても、やはり彼女は現れなかった。

 悪友たちは、次の場所へ行こうと強引に誘った。しかし、拓美はどうしても

その気になれずに仲間たちと別れた。しばらくその店で飲んでいたが、二杯目

の氷が溶けると仕方なく席を立った。

 精算を済ませ、店を出ようとドアに手を掛けたとき、勢いよくドアが開いて

誰かが飛び込んできた。

 

―バンッ!―

「痛てぇっ!」

 拓美は開いたドアに強か鼻をぶつけて、たまらず鼻を押さえる。

「あっ、御免なさ・・・あれッ、もしかして拓美クンやない?」

「えっ?あぁ・・・梓やないか」

 痛みに表情をしかめつつ顔を上げると、そこにはあの梓の顔があった。

 髪型も、そして顔の感じもまんま、あの頃の彼女だった。

「なんや、どうしたん今頃。もうパーティー終わってしもうたで」

「・・・そう。まだ間に合うかなと思うて。それに、ねッこれ憶えてる?」

 見ると、一冊の本を胸に抱えている。梓は本を持ち換えて、表紙を拓美から

よく見えるようにした。

「それひょっとして・・・。まさか、わざわざそれ返すために来たんか?」

 それは、紛れもなく拓美があの最後の日、梓に貸したままの本だった。

「ウチな、なんやこれ持ってたらな、きっとまた拓美クンに逢えるような気ィ

がしてたんよ」

「・・・そ、そか。せや、これからどっか飲みに行こか。まだ時間ええやろ?」

「ん?うンッ、ええよ。久しぶりやし、今日はつき合うたげる」

 

 二人は店を出て繁華街を歩き出した。

 ところが、数分歩いた辺りで、突然拓美がクスクスと笑い始めた。梓がいぶ

かしげに拓美の顔をのぞき込むが、それでも拓美は歩きながら笑っている。

「いややわ。なんやの・・・そないに笑うたりして?」

「あ・・・悪い悪い。せやけど・・・なぁ。寺崎・・・お前、少しは色っぽく

なってると思うとったのに、全然変われへんなぁ」

「何言うてんのよォ、失礼やわぁ。それを言うなら、まだ若く見えるて言うた

らどうやの。拓美クンのいけず!」

 梓はぷぅと膨れっ面をする。その変わらぬ愛くるしさに、拓美はふと今夜な

ら言えそうな気がした。

 

 あの日、言えなかった気持ちが。

 あの日、彼女に伝えられなかった”好き”という素直な気持ちが…。

 

 すべての恋人たちにいつの日も素敵な恋愛が待っていることを祈ります。

 それではまた、素敵な恋を見つけに…。                 

 

 

あとがき

まず、これを読んで下さったあなたに、深く感謝します。

いやぁ、恥ずかしい。テレますね、我ながらこういうのを書いて

しまうと・・・。歯が浮くとか、よくこんなものを恥ずかしげも

なく載せられるなとか・・・。自分でも、思うんですけどね・・

(笑)。

でも、こういうのが好きなんですよね、結局。

ま、感想・その他ありましたら、

遠慮なく・・・というか是非、 「ペンギン掲示板」 まで。

 

あとがき補足

関西在住、もしくは関西出身のお客様にお詫びとお願い。

二つ目の恋の物語において、関西弁(もどき?)のセリフを使

っています。これは、関西人でない作者が個人的に関西弁を好き

なのが一番の理由です。

もう一つには関西弁を喋らせることによって、主人公たちの感

情をよりストレートに、またどこか切なく伝えるためです。

 “どこが、関西弁だ”とか”そんな言い方しない”など、多々、異

論や抗議の声もお待ちしています。

比嘉 雅人

 

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1997 Masato HIGA.

 

1997/12/25 Up dated.
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