猫の庭で

 

-悪童・チェザーレ-

 

猫のアルベルトは ただいまお昼寝中

白い壁のサルバトーレさん家の屋根でくた寝している

アズーロに塗られた屋根にポツンとネロ そんな感じ

*アズーロ(azzurro):晴れた空や海(アドリア海)の青/ネッロ(nero):黒

今日はとっても良い陽気 ぽかぽかといい気持ち

アルベルトは“ふにゃ顔”で寝そべっている

南部のこの町には もうそろそろ夏の足音が聞こえてきそうだ

 

ビアンカが鼻をくんくんと鳴らす

なるほど どこからかオリーブのいい匂いがしてくる

穏やかな風に運ばれてきた匂いに誘惑され

鼻先をあちらへこちらへと忙しなく動かしている

いつもはおしゃまな彼女も 今だけは“食い気”らしい・・・

 

向かいの塀の上で 仏頂面のベッペがそろりと起き上がる

まだ半分眠って居るような顔をして なにやら下の方へと降りていった

 

ははあ なるほど・・・

 

角にある赤屋根のメッシーナさんが 厨房で昼食の準備をしていたようだ

悪戯坊主のチェザーレが テーブルでお待ちかねのご様子だね

ポモドーロソースの良い香りが 小さな王様の食欲をかき立てている

*ポモドーロ:トマト

ところで・・・

アルベルトは 実はチェザーレが苦手である

“悪童・チェザーレ”は この近辺でも名の通ったやんちゃもので

猫仲間の内でも 彼の被害にあったものは少なくないのだ

なかでも アルベルトは大の“お気に入り”ということらしい

“洗濯”されたことは数知れず 体中にオイルを塗られたこともある

 

厨房では ますますイイ匂いがしはじめている

バジルとオリーブ 隠し味のヴィーノも香りをいっそう良くしているね

*ヴィーノ (vino):ワイン

茄子と挽き肉を炒めてソースに加え もうひと煮立ち

大きめのパスタパンでは ぐらぐらと音がしている

きょうは あのソースをペンネにからめるようだ

ぐらぐらの中で たくさんのペンネが踊り狂って出番の来るのを待っている

*ペンネ(penne):パスタの一種 形がペンの先に似ている

ほどなく 匂いを嗅ぎつけた仲間達は厨房が見える近辺に集まりだした

しかし ・・・それ以上は誰も近づこうとしない

そう 食卓にいるやんちゃな王様に目を付けられたくないのである

 

アルベルトは ゆっくりと起きあがって 塀の傍まで

眠そうにアクビをして ビアンカの方を見る

ビアンカは 横目でアルベルトを見るが フンと鼻をならして

メッシーナ家の食卓に 向き直ってしまった

 

仕方なく アルベルトもチェザーレの方を見る

瞬間 目の前に火花が飛び散る ・・・そして激痛!

たまらず アルベルトは前足で鼻を押さえた

 

見ると チェザーレの手にお手製のゴム鉄砲が

なるほど “お気に入り”に挨拶代わりの一発

アルベルトはというと・・・・

まだ鼻をさすっている なんとも情けない表情だ

 

そんな様子に呆れたのか ビアンカが腰を上げる

アルベルトの方を見向きもせず ただ フンと鼻を鳴らして歩き出す

 

つられるように 他の猫たちも何処かへと散ってしまった

 

残ったのは・・・・

長老ベッペと アルベルトだけ

 

そのベッペも とうとう起き上がる

ゆっくりとした歩調で アルベルトの脇を通り過ぎていく

 

去り際 ベッペの尻尾が頭を叩いていった

アルベルトは その後ろ姿を見送りながら 鼻をさする前足を止めた

 

悪童・チェザーレの方を向く

そして 鼻をひと舐めした

 

 

街を一望できる 高台の牛小屋の上

アルベルトは ひとり佇んでいた

 

遠くの方で メッシーナさんの金切り声がしている

通りでチェザーレが 怒鳴りながら駆けずり回っているのが見える

どうやら 何かを探しているようだ

 

アルベルトは ふわぁ・・・とアクビひとつ

街並みを見下ろしながら 前足をぺろりと舐めた

 

前足は ポモドーロの味がした

Happy Happy Birthday.

Presented to YUI SOBUE from Alberto.

 

−おしまい−

 

猫の庭で。続きは、次のお話で。

 

編集後記

ふう。手こずりましたが、やっと完成しました

これは、猫のアルベルトと仲間のお話です

これから色々な猫や登場人物が出てきますよ

楽しみにしていて下さいね♪

とはいっても、連載ではないので

いつ次のお話が書かれるかは未定です(笑)

気ままにのんきに待ってみて下さい

 

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2001/11/05 Masato HIGA.

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