CD 1には、ベートーヴェンの劇音楽《エグモント》を、なんと舞台をルワンダ紛争に置き換えて演奏した《ザ・ジェネラル(司令官)》という作品が収録されています。
構成と台本は、現代音楽の研究家として有名なポール・グリフィス。
早い話が、《エグモント》を映画『ホテル・ルワンダ』にして演奏したと思えばよいです。
ご存知の人も多いかと思いますが、ルワンダ紛争が起きた時、国連のPKO部隊を率いていたのが、カナダ陸軍中将ロメオ・ダレール。ルワンダで大虐殺が起き始めた時、ダレールはPKOの“人道的介入”を国連に訴えかけたのですが、いわゆる“大人の事情”というやつで、PKOは手をこまねいて虐殺現場を見ているしかなかった。帰国後、ダレールはトラウマで苦しみに苦しんだ挙句、自殺未遂まで追い詰められるのですが、現在は回復し、カナダ上院議員と国連ジェノサイド予防諮問委員会委員を務めています。
そのダレールのルワンダ体験を、ゲーテ原作の《エグモント》の主人公エグモント伯爵(これも実在の人物)に重ね合わせて演奏するという、なんともすごい作品なんです。ちなみに、演奏の合間にはダレール役を演じる俳優の朗読が入るのですが、それを担当しているのは、かの名優マクシミリアン・シェル。
そしてCD 2は、《運命》全曲と、《エグモント》の序曲と2曲の歌(クレールヒェンが歌う)、それにソプラノと混声合唱と管弦楽のための《奉献歌》Op.121bという、大変珍しい曲が収録されています(CD
2は、朗読なしです)。
オリジナル・ライナーノーツと《ザ・ジェネラル》の台本はポール・グリフィスが書いていますが、今回、ぼくがそれを日本語に訳しました。プラス、日本盤独自の解説として、4月にケント・ナガノにインタビューさせていただいた時の話をもとに、ぼくが書き下ろした原稿が収録されています。
[CD1]
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)/ポール・グリフィス(b.1947)
1.「ザ・ジェネラル(司令官)」(オーケストラ、ソプラノ独唱、合唱と語りのための)
音楽:ベートーヴェン~悲劇「エグモント」のための音楽Op.84、祝典劇「シュテファン王」のための音楽Op.117、劇音楽「レオノーレ・プロハスカ」WoO.96、奉献歌Op.121bより(全16曲) |
[CD2]
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)
2.交響曲第5番ハ短調Op.67
3.悲劇「エグモント」への音楽Op.84より
(1)序曲
(2)第1曲:クレールヒェンの歌「太鼓は響く!笛は鳴る!」
(3)第4曲:クレールヒェンの歌「喜びにあふれ、また悲しみに沈む」
4.奉献歌Op.121b |
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