| 「核不拡散条約（NTP）再検討会議」・ニューヨーク行動 参加記 福岡市原爆被害者の会 博多区支部 吉﨑幸惠 私はこの４月、「核不拡散条約（ＮＰＴ）再検討会議」・ニューヨーク行動に参加しました。 「ＮＰＴ」は５年ごとに開かれ今年で９回目。日本からの民間代表団は日本被団協、日本原水協ほか１千数百人で、私たちは４月２５日から８日間、現地でのさまざまな行事に参加し、それぞれの場で奮闘しました。 参加のきっかけは、被爆７０年という大きな節目の年でもあり、出発の４日前に７５歳となった私は、次の機会の８０歳にはもう縁がないと思ったからです。であれば動けるうちに被爆者らしく、被爆者にふさわしい活動をしようと決意をしてのことでした。 ニューヨーク国際空港に着いたのは、13時間の時差の関係から成田を出発した２５日と同じ日で、翌２６日から早速行動開始。午前中はマンハッタンでの署名行動を。 日本被団協の鶴のゼッケンと福岡市原爆被害者の会の腕章をつけ、被爆のパネルを掲げ持ついでたちで、通行人に英文の書名用紙を差し出しながら「プリーズ、サイン」「ニュークリアウエポン、ＮＯ！」「サイン、プリーズ」の単語を連呼しつつ、積極的に呼びかけました。反応は６対４の割合で黒人の方が理解があったように思えます。署名行動は滞在中各所で行いましたが、私個人は３３筆を集めました。  国連本部前に向けての１万人余のパレード 午後からは「核兵器のない世界のための国際行動デー・ＮＹ行動」で、ユニオン・スクエア広場での集会とグローバル・ピースウェイブ行動。国連本部前に向けての１万人余のパレード。 ダグ・ハマーショルド広場での平和フェスティバルと続きました。集結地点の同会場には「核兵器全面禁止のアピール署名」の箱が積まれていて、ＮＰＴ再検討会議に提出する６,３３６,２０５筆の目録を、アンゲラ・ケイン国連軍縮担当上級代表、ＮＰＴのタウス・フェルキ議長に提出しました（その中には、２０１１年の署名取り組み呼びかけ直後から、福岡出発直前までに集約した博多区支部８,８０２筆も、もちろん含まれています）。 アメリカ滞在期間中のすべての行動を網羅するには、かなりのスペースを要しますので省略しますが、それでも私が参加した上記以外の主な行動内容を簡単に報告します。 日本原水協：国際シンポジウム「ともに核兵器のない世界へ新たな地平線を開こう」。日本被団協主催国連本部ロビーでの「原爆と人間」展とレセプション。ペンシルバニア駅前での「沖縄への米軍新基地建設反対を訴える宣伝行動」。ワシントンＤＣに移動してからは（ワシントンコース班員は４３人）、ホワイトハウス前公園での「署名行動」（実は、警官に公園から締め出されて道路での行動に。理由は安倍総理の警護のためであったとか。現地の方たちが公園使用許可を取得されていたにもかかわらず、です）。振り返って目に入ったのは、ホワイトハウス前から４台の黒い車列が通り過ぎ、２台目には日章旗が掲げられていました。こうした不条理に参加者から怒りがわいたのは自然のことです。 （後に判明したことは、まさに同日の４月２９日、安倍総理は米議会上下両院議員合同会議で「希望の同盟へ」との演説を行い、核問題には触れず、「日本はいま、安保法制に取り組んでいます。戦後初めての大改革です。この夏までに成就させます」と表明し、実質的に安保法制化を約束。） ４月３０日にはスミソニアン博物館別館で、「エノラ・ゲイ」と対面、その巨大さに仰天しました。これが広島の人々を“生きながら焼き殺した”一端を担ったＢ２９なのか、と心が震えました。この場ではＵＳＡトゥディの取材を受け、夕方から教会で開催された集会では被爆の実相証言が設定されていて、１５分のスピーチの機会に恵まれたことは光栄でした。被爆者として訪米したもう一つの目的が果たせたからです。  肝心の「ＮＰＴ再検討会議」は、米・英国などの賛同が得られず、残念ながら「最終文書」の採択は実現しませんでしたが、最初の文案では初めて「核兵器禁止条約」にも言及し、討論では条約交渉開始を求める訴えが出されたということで、その意義は大きく評価されています。オーストリア提案の「核兵器の禁止と廃絶」行動呼びかけの「誓約」は、開幕時の７０ヵ国から閉幕時には１０７ヵ国となり、会議の２日目には「核兵器の非人道性を告発し全面廃絶を求める共同声明」を１５９ヵ国が連名で発表（加盟国は１９１ヵ国・地域）、賛同国は過去最多とのこと。これらのニュースを知る限り、日本の新聞が「ＮＰＴ会議決裂」「議論１ヵ月結果ゼロ」との悲観的報道には違和感を抱きました。たしかに、全会一致が原則であるため採択はされなかったものの、反対したのは少数国に過ぎず、核保有国は日に日に孤立し、追い詰められていったとも伝わってきています。 「文書案」の起草に携わったペルーの第１委員会議長は、「核兵器の人道的影響へのアプローチがあったという点では、会議はある程度成功した」と評価。瀋基文事務総長のメッセージは感動的で、「過去５年間、核軍縮を追及し、核不拡散を強める努力が続く中で新たな提案もあった」、「すべての国連加盟国がこの勢いを止めることがないよう求める」と訴え、「核兵器の使用が人道上の破滅的な結果をもたらすことにますます注目が集まれば、核兵器の禁止・廃絶につながる有効な措置を求める活動が必要になるのは当然」と指摘。さらに「…核軍備撤廃の緊急性を疑う者は、核兵器が何をもたらすかもっとよく知るべき。被爆者の警告に耳を傾け、（ＮＰＴ会議では）結果をもたらすよう求める…」とも。 そのほかにも各国代表による前向きの発言は、それぞれ心に響く内容のものでした。 帰国後、「活動記録集」を読みながら、これから活動を進めていく上で勇気と確信を得ました。 私の場合、被爆者代表として送り出されたのではなく、個人の資格で自ら代表団に加わったったのですが、多くのものを学べてラッキーでした。 後になりましたが、現地の人々へのお土産に折り鶴を約５００羽、博多区支部会員さんほか、ご協力くださった皆さま方に心から感謝いたします。ありがとうございました。 |