被爆体験証言者の一人として、今思うこと

               福岡市原爆被害者の会 東区支部 島野道次

  84歳となり、膝が悪く歩くのにも難儀をしていますので、無理をすることもないかと弱気になっていました。
 被爆70周年となる今年は、各地で平和の集会がありました。現在世界の核弾頭は、15,700発といわれています。しかしこの核兵器は使えないと、皆知っています。それはもしも使用すれば、人類の終末になることを知っているからです。それを訴えているのは、原爆投下の瞬間の悲惨な実態を語っている「被爆者」の方々の影響があるとの識者の言葉を聞いた時、私共の活動が核兵器なき世界の実現に貢献できているのかと思い、元気が出た私でした。

 すでに亡くなられた方々を含め先輩被爆者たちのたゆまぬご努力のおかげで、世界中に核兵器廃絶の思想はかなりの広がりを見せています。これが核兵器使用の抑止力として一定の効果を発揮していると確信しています。
 爆発と放射線の影響で、広島では推計14万人が死亡し長崎では7万4千人と多くの人が命を無くした中で、生き残った自分に問いかけてみました。なんのために生き残ったのか、それは無念の思いで亡くなった多くの方々の声なき声を代弁するためではないかと気付きました。その使命が私達にはあったんだ、と。 

 私たち被爆者は、国内はもとより世界中に核兵器廃絶を強く訴えていかなければなりません。しかしながら今や、平均年齢80歳と高齢になっています。一方被爆証言を聴く側も戦後70年を経過し、全体的に関心が薄れ、風化していく傾向が見られます。このような背景で今後証言活動を継続していくためには、後継者の養成が急務です。
 幼児被爆で記憶がない方や人前では話が苦手だと思われている会員の方々、更には
2世・3世の方々に一日でも早く証言活動に参加していただきますようにと、ただ祈る日々です。