福岡市原爆被害者の会　博多区支部　吉�ｱ幸惠 　私は2012年以来、被爆柿の木の植樹活動を続けています。 　種をまき、育て、数多くの学校訪問をくり返して、本年3月までに保育園1、小学校13、中学校3、ほかに埼玉県鴻巣市の小学校2、中学校1でも実現（宅配便で苗を発送）。これに福岡県筑紫野の「100年の森を育てる会」が加わり、さらに秋には小学校2、中学校で植樹されますので、今年中に合わせて24カ所になります。 　　　　　　　　　　　　　　　なぜこうも根気よくこの活動を続けるのか。それはほかでもなく、「被爆柿の木」の子孫だからです。一世の柿の木は爆心地から900メートルの長崎市若草町、諌山さんというお宅の前の道路に被爆した5本の柿の木があり、内1本が樹木医により延命治療が施されました。　　　　　　　　　　　　　（小学校での植樹式で説明する筆者） 　幹は黒く焼け焦げてケロイド状態。中は空洞。鉄骨を入れ、表面は削り取ってウレタンで塗装。根っこの土壌も改良し、“あの日”から約半世紀後にようやく普通の元気を取り戻しました。 　たくさんの実をつけるようになったとき、樹木医の海老沼正幸先生はご自分の山に二世を育て、修学旅行で長崎を訪れる全国各地の学校に苗を贈呈。アーティストの宮島達男氏とタイアップして世界各国にも広げ、その数は国内外1,000ヵ所を超えると言います。 中学校の副読本にも取り上げられ、原爆で生き延びた命の尊さ、平和の大切さが説かれています。 　被爆柿の木は原爆の生き証人、平和のシンボル、平和の使者として児童・生徒の目に触れるところで、言葉はしゃべれないけれど、立っているだけで「核兵器はＮＯ！」「戦争はＮＯ！」とのメッセージを発することが出来るのだと思います。 　　私が「被爆柿の木植樹活動」を始めたのは、　博多区支部が「第1回原爆と人間」展を開催し　　た2012年7月、朝日新聞の報道を目にしたのを　きっかけに福岡県京都郡苅田町在住の被爆者川　内七男氏との交流からでした。氏との出会いで　苅田小学校の玄関前に立つ「被爆柿の木二世」　の存在を知り、私自身もこの柿の木を育ててみ　たいとの思いで秋の収穫期に種の郵送をお願い　しました。 ←成長する被爆柿の木 　早速鉢に種を蒔き、翌年3月21日に発芽しました。鉢植えでは無理かと諦めかけていたときのこと、なんと、あの堅い皮を帽子のように頭にかぶって芽を出した姿に、まるで子どもみたいに歓喜の声をあげたことが思い出されます。 　日を追うごとに伸びゆく苗がいじらしく、起床して一番にバルコニーへと足を向けるのが日課となり、15個の“わが子”の成長を見守りました。種は同日に同条件で蒔いたのに苗には大小があり、“みんな違ってみんないい”のですが、その違いは新たな発見でした。 　福岡県筑紫野の「100年の森を育てる会」で今年3月13日、被爆柿の木三世の植樹式が行われ、博多区支部賛助会員さん2人と共に参加しました。山には大人と子ども20数人が集い、苗木は、みんなで代わる代わるスコップを使って、森のシンボルである夫婦桜のすぐ近くの１等地に植えることができました。