「きりえを創っています。」と話すと,ほとんどの人に寄席でおなじみのはさみで切る「紙切り」と勘違いされます。 しかし,絵本や絵はがきにも使われるようになり,最近では関心が高まっています。40年前にはきりえという 名前さえもなく,切り紙や中国の剪紙(せんし)が一般的でした。 紋章の切り型や,染め物の型紙なども長い年月と風土に生まれてきたものです。きりえも,その泉の中から芽をふ き,育ちつつある新しい芸術であると思います。 現在のきりえには,はさみで切っている人や彩色している人,多色の紙を切って重ねたものなど多種,多様です。 また,型を切るものは,藍染めやサンドグラス,陶芸,などにも応用ができ発展できるものです。 きりえの基本は,何といっても白と黒・光と影というように極端に凝縮されたフォルムやコントラストです。 それらは制約の中で生み出されるきりえのみがもつ造形美であるように思われます。 紙を切るという単純な作業で形を表現するきりえには、やり直しのきかない一本勝負の厳しさがあります。 その妥協のなさが明確な強い線を生んでいくのです。一本のナイフに可能性を託して切りあげていくおもしろさが, きりえの世界であるといえます。 |