「なるほど・・・それで・・・」
うまくまとまらないアルルの話をラグナスは相槌を打ちながら辛抱強く聞いてくれた。
「まあ、確かにルルーはわかりやすいよね」
そういって苦笑する。アルルも、つられて笑った。
あ、とちいさくラグナスが声を上げた。
「え?」
「やっと笑ったね」
「ほぇ?」
「俺と会ってから一度も笑ってなかったろ? だから、さ」
そう言えばそうだったかもしれない、とアルルは思う。
「やっぱり笑ってるアルルのほうが可愛いと思うよ」
可愛い、といわれてアルルは少し赤くなった。
「・・・そうかな・・・・・・」
「うん。笑ってるアルルが一番かわいい。だから、それでいいと思うよ」
「・・・・・・え?」
「そうやって暗く悩むなんてアルルらしくないと思うんだ」
「・・・・・・」
「悩むな、っていってるんじゃない。ただそうやって、ネガティブになる必要はないんじゃないのかな。
アルルはアルルのやりたいように、アルルのやり方でやればいいんだと思う。そうすればきっとできるよ」
「ボクの、やりかた・・・」
小さく、繰り返す。その言葉が胸に染みた。
「うん! ありがとう。ラグナス。ボク今年こそはちゃんと手作りチョコを渡してみせるよ!
それじゃあ、そろそろかー君が暴れだすころだから帰るね。ひきとめてごめん。話を聞いてくれてありがとう! またね!!」
「うん。また」
笑顔で駆けていくアルルをラグナスはいつも道理のやさしい笑みを浮かべたまま見送った。
完全に姿が見えなくなってから、自分の隣に視線を移した。・・・さっきまでアルルのいた場所。
「失恋・・・かあ・・・・・・」
力なく笑う。
「まあ、シェゾじゃあ・・・仕方ないかな・・・?」
それでもやっぱりそんなすっぱりと気持ちが割り切れるはずもなく。
「とりあえず今度会ったら一発殴っとかないとね」
アルルにあんな顔をさせたんだ。それくらいやっても罰は当たらないだろう。
自分のいら立ちも含めて。ラグナスはゆっくりと街のほうへと歩き出した。




次の日

「シェゾ! ボクと勝負だ!!」
「ああっ? なんだいきなり」
「ボクがかったらボクの願いをひとつ、聞いてよね!!」
「え? ちょ、おまっ、待っ・・・・・・」
「待たないっ!! ダダダダイヤキュート!!」
そこにはいつもと少し違う風景が広がっていた。だからと言って誰かがそれを気にするわけでもないのだけれど。
だた、その時のアルルの顔がやたらといい笑顔だったことは言うまでもないだろう。

「じゅじゅじゅじゅげむっ!!!!」
「なんなんだーーっ!!??」

今年こそは君にチョコを上げよう。ボクの手作りのとっておき。
愛しさも、苛立ちも、希望も、苦悩も全て詰まったボクの心の隠し味をそえて。

君は気づかないかもしれないけれど。

今はそれでもいい。

だけど

「その時になったら、覚悟してねっ」


著:白螺
2010.02.02