始まりの日



第一志望に受かり、後は卒業を待つだけ、というその矢先の出来事だった。

彼女が死んだ。

病死でも事故死でもない。自殺だ。
もっと詳しく言うと飛び降り自殺だ。
彼女は僕の目の前で柵を越え、宙に身を躍らせた。

僕ははるか下方にある彼女だったものを見つめて小さく息を吐いた。

「あー・・・君は直前まで彼女と話してたそうだが・・・彼女とはどんな話を?」
中年の警官は義務的にそう言った。
「夢のことです」
「夢?
これからのこととかやりたいこととか、そういうものかな?」
僕は無言で肯定する。正直、話すのが面倒くさかった。
「具体的にはどんなことを?」
「これからどうするとか、どういうふうになりたいかとか」
「ええ・・・と・・・彼女は自殺だったんだよね? 事故じゃなく」
僕はうなずく。
「彼女の自殺の原因について何か思い当たることは?」

「・・・彼女が生きていた。理由なんてそれだけで十分じゃないですか」

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2010.8.29