高く澄んだ秋晴れの日
紅葉した葉の舞う中
キミと一つの約束をした





約束は秋の色


朝、窓を開けると外があんまりにもいい天気なので、ボクはお弁当を持って森のほうへと向かった。
「こんないい天気の日に外に出ないなんてもったいないよねっ」
肩の上の小さな友達はその言葉にぐ、ぐーとうなずいた。
本当にいい天気だ。
空は高く、青く、どこまでも澄んでいて、その中に小さな雲たちがちりばめられている。
冷たい風が頬をなでると、ボクはそれだけでうれしくなって駈け出した。
「森まで競争しよう!」
舗装された道は緩やかに上下して、軽くカーブを描きながら森へと続いている。
ボクの前にあの、なじみのある竜巻が現れたのは森の手前だった。
「お前が、欲しい!」
恥ずかしいセリフを人目もはばからず口にするお兄さん―シェゾ―は禍々しい妖気を放つ剣でこちらを指しながらいきなり呪文を飛ばしてきた。
「うわっ。あっぶないなぁ。お弁当にあったたらどうするんだよ!」
「ふん。そんなの俺の知ったことか!」
相変わらず自分勝手な・・・
小さく呪文を唱えながら、ボクはいいことを思いついた。
「ボクが勝ったら今日、用事に付き合ってね!・・・・・ファイヤー!!」
「ほざけ!今日こそ必ずお前をもらってやる!!・・・・・サンダーストーム!!」
・・・・・まったく、このオニイサンは〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!
「恥ずかしいセリフを真顔で言うなー!!
じゅげむ!!
盛大な爆音とともに閃光がほとばしりシェゾは吹っ飛ばされた。



「またボクの勝ちだね。約束どおりつきあってね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
落ちてきたシェゾにヒーリングをかけながらそう言った。
「くっ・・・・・・」
「つきあってね?」
「・・・・・・・・わかったよ・・・・・」
大きくため息をつきながらシェゾはゆっくりと立ち上がった。
まだぶつぶつと小言を言ってるようだけどその辺はムシ。
「んで?用事ってのは一体何なんだ?」
マントについたほこりを払いながらうんざりした口調でそういうキミは、それでもちゃんとついて来てくれて。
あぁ、今日は本当にいい日だなぁ、なんてことを考えながらボクはキミにお弁当を見せた。
「紅葉狩りにね、行こうと思ったんだ。せっかくこんなにいい天気なんだから家にこもりっぱなしじゃもったいないでしょ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
あぁ、またその目だね。あきれ返ったような眼。いや、実際あきれ返ってるんだろうけど。
「ボクと紅葉狩りに行くのがそんなにいやなわけ?」
ため息をつきながらそう言うと、シェゾは言葉に詰まったようで、ごまかすようにそのまますたすたと歩き出してしまった。
「ちょ、ちょっと!どこ行くんだよ!」
あわてて後を追う。
「どこって・・・・・・・森に行くんじゃないのか?」
まるで当たり前のことのようにそんな事を言うもんだから、ボクは一瞬なんて言われたのか分からなかった。
でも、その言葉が心の奥底にじんわりとしみこんでくるとボクはいてもたってもいられなくて、シェゾの手を引いて走りだした。
「お、おいっ?」
抗議の声を上げるシェゾ。でもその抗議の声さえもどこか愛おしくて。振り返って笑って見せた。

キミにどうしても言いたいことがあった。なぜだかわからない、けど、どうしても、今言いたい言葉が。
「?」
急に立ち止まった僕を不審そうに見つめるシェゾ。うん、やっぱり言いたい。少し、変かもしれないけど。

「ありがとう!」

「・・・・・??」
あぁ、その表情一つでキミの思ってることが手に取るようにわかるよ。どうせ「お前が無理やりそうしたくせに」とか思ってるんだね。
うん。それでも構わないよ。

――キミと一緒に今日という日を過ごせるのなら。

綺麗に紅葉した葉を見ながら、食べるお弁当はやっぱりおいしい。さっきまでぶつぶつと文句を言っていたシェゾもお弁当を分けてあげたらおとなしくなった。
カー君がいるからいつでもお弁当は大目に持っていく。これからもそうしようと思った。
「紅葉、綺麗だね」
「・・・・・・あぁ」
言って、始めてシェゾはお弁当から顔をあげる。
「そうだな・・・・・・」
ゆっくりと、どこか遠くを見つめるかのように遠くなる瞳の色がきれいで、やっぱり黙ってればかっこいいのにな、なんてことを考えてしまう。

「また来年も来ようね」
帰ってくる答えもすべて承知の上で。
「・・・・・・来年、か。それまでに俺がお前の魔力を奪ってしまえばそれでおしまいだがな」
はっ、と鼻で笑う。
「ボクはキミなんかにやられないよーだ!」
それにその言い方だと・・・・・・・・
「キミがボクの魔力を奪えなければ来年も一緒ににいてくれるんだね?」
「なっ、あっ、ち、違う!そうじゃない!いや!違くはないが・・・・!!」

ねぇ、キミは気付いてるのかな?キミがそうやって一生懸命弁解すればしようとするほど墓穴を掘ってるってことに。

「約束だよ?」
「・・・・・・・・・・・・・っ」
「ボクがキミに魔力を取られるまで毎年一緒にここに来ようね」
ううん、ほんとは紅葉狩りだけじゃない。お花見だってお月見だって、キミと一緒にいたい。
「・・・・・お前が俺に勝てるんならな」
「負けないよーだ!今までだって一度も負けてないもん!!」

そう。来年も、再来年も、ボクたちはきっとここでこうやって紅葉を見ながらお弁当を食べる。

だって、ボクは絶対キミには負けないから!!




あとがき

葵 千紘様へ
やっと、書きあがりました!お待たせしてどうもすいません!
くだらない文ですがこんなのでよければもらってやってください。

カー君の存在が空気な件やアルルがやたらと落ち着いてることに関してはノータッチで(笑)

背景はhttp://homepagefreesozai.blog120.fc2.com/blog-entry-28.html様よりお借りしました。

葵 千紘様のみお持ち帰り可とさせていただきます。