これから家庭菜園をはじめる方にやさしい園芸の知識を季節ごとに連載しています。
服部作成のレジメですので、自由に印刷して、活用していただいても結構です。

園芸の知識

    





長い文章ですみません。保存用です。必要なところを印刷してください。




 ダイコン、ハクサイ、
    キャベツ、ブロッコリーの栽培

       

                   (2018,8,11 茨木市市民農園講習会で使用したレジュメです)


秋どり(9月まき)ダイコンの栽培


 秋から冬にかけての気候は、春から夏にかけてとは逆に、気温が冬に向って急激に下がり、日長も冬至きか

けてだんだん短くなります。この時期(9月)は、ダイコンにとって1年の中で最も栽培しやすい季節です。


 生育の特徴

 ダイコンは冷涼な気候を好みますが、生育初期には低温を嫌い、肥大期には高温を嫌います。しかし、肥大
期の温度が低すぎると寒害を受けたり、気候の変化を敏感に感じて花芽分化し、開花することがありますので
、タネまき時期に気をつけます。例えば、茨木市の山間部では9月1日、私の農園がある近江今津では9月7日
がダイコンのタネをまく日と昔から農家の間でいい伝えられています。

 また、栽培の主要な作業(間引き、土寄せ、病害虫防除など)が、タネまき後40日くらいの間に集中します。こ
の間の作業適期を逃さずにおこなうことが、ダイコンを上手に作れるかどうかのポイントになります。


タネまきの適期

 ダイコンの発芽適温は15〜30℃(発芽可能な温度は4〜35℃)で、8月に入ればいつでもタネをまくことが可
能ですが、タネまき適期の幅が比較的狭く、早まきすると病害虫の発生が多くなり、遅まきすると生育の遅れに
よる肥大不良の危険があります。

 私は8月のお盆過ぎにタネをまいて、葉に小さな穴をたくさんあける「キスジノミハムシ」や発芽直後に芯葉を
食べる「ダイコンシンクイムシ」の発生によって全滅させてしまった失敗の経験があります。
 ダイコンのタネまきはあわてずに在来品種は8月下旬〜9月上旬、F1品種は9月中旬までにタネをまくようにし
ます。

 ダイコンはタネをまいて約60日前後、根長40pくらいまで生長します。収穫は青首ダイコンの「YRくらま」で
55日、「耐病総太り」で60日、辛味ダイコンの「辛之助」で60日、丸ダイコンの「冬どり聖護院」で75日、白首ダ
イコンの「干し理想」で80日から収穫可能です。

 なお、最近は広い用途にむく青首ダイコンを中心に栽培しますが、子供たちにダイコン抜きを体験させたい場
合は白首ダイコンの根の長い(45p、しかも中太り)品種を栽培すれば、なかなか引き抜くことができず喜びま
す。また、最近はプランターでも作れる長ダイコンとして比較的根長の短い三太郎という品種(30p前後)も売り
出されています。


直まきと間引き

 ダイコンは必ず直まきにします。移植すると直根が切れてほとんどが岐根(またわれ)になってしまいます。
 直まきには、点まきとすじまきとがあります。私はマルチを張って、25p程度の株間でビール缶大の穴をあけ
、そこに十字架(十字まき)のように、1ヵ所3〜5粒程度のタネを点まきしています。(一般にFl種で3粒、在来
種で5粒程度といわれています)

 ダイコンは「共育ち」といって1ヵ所に1粒まきより数粒まきの方が互いの助け合って発芽し、その後の生育に
もよい影響を与えますので、必ず数粒まきにします。
 なお、すじまきの場合は間引きに少し労力を要しますが、生育に応じて自由に株間が調節でき欠株が少なく
なりますので、ダイコン専門の農家は株間が自由に調節できる「ごんべえ」という播種器を使ってタネをまいて
います。

 また、シーダーテープといって種苗会社で事前に適当な株間、粒数を包み込んだ紐状のものも販売されてい
ます。

 間引きは生育を揃えるために大切な作業です。これまでは奇形になったものを取り除き、形の整った優れた
苗を残すのが間引きのおもな目的でしたが、育種技術が向上し、奇形などの変形した芽はほとんど出なくなり
、間引きは生育のよいものを残すようにしています。
第1回目の間引きは本葉2枚のころに子葉の形が良いもの(ハート形)を残し、3本程度にします。養分を吸収
する土の中の側根は子葉の開いているのと同じ方向に出ますので、子葉が畝と直角になっているものを間引
き、残すダイコンの根群を伸びやすくしてやります。
 タネまきから20日くらいたった、本葉5〜6枚のころに1本立ちにします。


初期の生育と葉の展開

 ダイコンの発芽は15〜30℃ですが、生育の適温は18〜20℃です。子葉はハート形で、開くとともに葉緑素が
あらわれて緑色となり、光合成を始めます。
 子葉の役割は大きく、子葉に障害があると初期生育が抑えられます。私はこんな大胆な実験はできません
が、間引きの時に子葉を全てちぎってしまって栽培された方がおられますが、ほとんど生育しなかったとのこと
です。
 子葉が開いたあとは、すでに生長点で分化していた葉が生長しはじめ、次々と新しい葉が展開していきます。
ダイコンの葉は、第1葉は切れ込みが少なく、第3〜4葉から品種特有の葉が出るようになります。


耕耘・整地

 ダイコンは地下部を真っ直ぐに伸ばし、よく肥大させることが大切です。このため「大根十耕」といわれ、深さ
30p以上耕すことが大切です。堆肥の施用は高品質なダイコンを生産するうえで極めて重要なことですが、未
分解の有機物と根が直接接すると岐根、裂根などの症状が現われますので注意します。


栽植密度

 限度を越えて栽植本数を多くすると株が過密になり、光合成が低下し収量は減少しますので、それぞれの野
菜に見合った株間を取ることが大切です。ダイコンの裁植密度は、うね幅90pで株間25p、2条まきを標準に
します。


除草・防除

 生育初期に雑草の発生が多くなると生育が目に見えて悪くなりますので、雑草の発生を抑えることが大切で
す。また、病害虫の発生も多いので、なかなか無農薬で栽培することは困難です。私はタネまき時と15日後の
2回に殺虫剤(オルトラン粒剤)を施用していますが、農薬による防除に頼るだけでなく、不織布やカンレイシャ
などの被覆資材を使う、耐病性品種を利用するなどの対策を組み合わせて病害虫の発生を抑えましょう。

根部生長と肥大

 ダイコンの根部は根とその上部の胚軸が肥大したものです。根部の肥大は葉が3〜4枚のころからはじまり
ます。このころから本葉5〜6枚の間に初生組織から肥大のための組織に変わり「初生皮層はく脱」という現象
が見られます。 ダイコンはタネまきからこのころまでの管理と肥料の与え方がその後の生育に大きく影響しま
す。

 肥大は主根の上部からはじまり、順に下部も肥大して品種特有の根形ができます。肥大が収量するのは品
種によって違いますが、おおむねタネまき後90日くらいです。葉の生育が悪かったり、逆に葉が繁りすぎて養
分が葉の生長に取られ過ぎたりすると根部の肥大が悪くなります。
 肥大するための適温の幅は案外狭く、20℃前後で、高温でも低温でも根の発育障害を起しやすい野菜です
。なお、耐寒性は比較的強いのですが、マイナス5℃以下になると凍害が発生しますが、ある程度肥大した根
は0℃以下で凍害を受けますので、それまでに収穫をすませましょう。


吸肥特性と施肥

 ダイコンの吸肥特性はチッソに対しては多くの野菜同様敏感ですが、リン酸、カリについては鈍感で、土壌中
のリン酸、カリ含量がかなり低い状態でも収量は他の多くの野菜ほど低下しない特徴を持っています。従って、
ダイコンの施肥はおもにチッソ肥料について配慮すればよく、収量に及ぼすチッソ欠除の影響は生育初期に著
しく、チッソ肥料は生育初期に重要です。

 施肥量は10uあたりチッソ150g、リン酸100g、カリ150g程度で、リン酸は全量元肥、チッソとカリは半量元肥
、半量を本葉5〜6枚の頃に追肥するのが一般的です。
 私自身はマルチ栽培をしており追肥施用はできませんので、10uあたり油かす1s+高度化成(チッソ13くら
い)1sを元肥として全量与えています。


す入りの原因

 チッソ肥料が多すぎたり、植え付け間隔が広すぎたり、土壌湿度が高すぎたりすると根が急激に肥大し、根
の生長に葉の光合成が追いつかなくなり、十分な養分が補充されないために根の一部の組織が老化して「す
入り」になります。

す入りは、早生品種ほどなりやすく、また、収穫が遅れるとなります。
 収穫の時につけ根から2pほどの葉の軸を切ってみて、切断面が空洞になっていたら根もす入りになってい
ますので、これで判断します。


                         

夏まき秋冬どりのハクサイの栽培


 ハクサイはアブラナ科の野菜で、原種の原産地は地中海沿岸とされ、ハクサイとして発達したのが中国北部
で7世紀頃に地中海原産のカブラと中国原産のチンゲンサイとの交配で誕生したといわれています。

 我が国で栽培が始まったのは明治時代になってからで、日清戦争に従軍した兵士が中国で食べたハクサイ
の味が忘れられず、タネを持ち帰ったのがきっかけとされています。ところが、持ち帰ったタネでいくら栽培して
もうまく育ちませんでした。大正時代になってやっとハクサイは虫媒花で、他のアブラナ科野菜と交雑しやすく、
日本三景の松島の離れ島で採種が成功して栽培が全国に広まりました。現在の品種は野崎早生系か愛知系
とが交雑された品種が多いといわれています。なお、関西では昭和25年にタキイ種苗が「長岡交配1号」を育
成しました。

 ハクサイの品種は、これまでおもに漬け物として利用されていたため球内部の色が白い「無双」「金将」など
の品種がおもに栽培されてきましたが、最近は多用途に利用され、鮮黄色の黄芯系品種で葉質が柔らかく甘
みのある「黄ごころ」「きらぼし」などが栽培され、さらに600g程度のミニハクサイ「お黄にいり」やキムチ用の品
種などが知られています。


この時期の栽培環境と生育の特徴

 この時期の秋から冬にかけての季候は、春から夏にかけてとは逆に、@気温は冬に向かって急激に下降し
ていくA日長が冬至にかけてだんだん短くなるB春から夏にかけてより気温・日照時間・降水量などが大きく
異なります。
 実はこの条件がハクサイの栽培に一番適しているのです。
 家庭菜園でのハクサイの栽培は、8月中〜8月下旬にタネをまき、9月上〜9月中旬に植えつける「夏まき秋
冬どり栽培」の作型が、ハクサイの生育に最も適した気候条件で栽培するため、作りやすく、しかも品質のよい
ものが収穫出来ます。

 ハクサイの発芽可能な温度は4〜35℃ですが、発芽適温は18〜22℃で、タネをまく時期は最低温度が15℃
になる日から逆算して35日前くらいが適期といわれ、私たちのところでは8月15日〜9月10日頃です。
 ハクサイは冷涼な気候を好み、生育初期には低温を嫌い、結球期は高温を嫌います。生育適温は生育初期
は20℃くらいで、外葉発達期は30℃以上にも耐えられますが結球する時期の生育適温は10〜15℃です。な
お、昼夜の温度差が大きいほど充実した葉球がえられます。

 耐寒性には比較的強いのですが、4〜5℃以下になると生育が停止し、急激に夜温が低下したときはー3℃
でも凍害の被害を受けますが、ー8℃以下になると凍害にあいます。
 一方、暑さにはめっぽう弱く、15℃以上の高温下で結球をはじめると軟腐病(22〜23℃で一番発生が多く、
はじめに葉柄部が腐敗して下葉が枯れ、のちに葉球全体に腐敗が進み、悪臭を放つ病気)が発生しやすくなり
ます。
 家庭菜園では防除の方法はありません。発生したらすぐに株を引き抜いて他の株にうつらないように場外に
出しましょう。
 生育日数は約80〜85日前後です。早まきすると発芽、生育期間に高温・乾燥の害を受けやすく、病害虫も多
くなります。逆に遅まきすると低温によって葉球の肥大と充実が悪くなり、寒害を受けやすくなりますので、タネ
まきや植えつけ時期に気をつけましょう。


栽培のおさえどころ

タネまき

 ハクサイは育苗して苗を植えつける場合と直まきする場合とがあります。
 育苗する場合は、植え傷みを少なくするために9pのポリ鉢にタネまき用土を入れ、2〜3粒ずつまき、本葉
が出はじめた頃に1本にします。セルトレイで育苗する場合は128穴のものに1粒ずつまきます。
 いずれも育苗日数は約18〜20日 本葉4〜5枚 草丈8p前後になった苗を定植します。なお、ハクサイの根
は再生力が弱く、直根性が強いのでキャベツのように地床育苗(畑の畦のはしにタネをまき、苗を育てるやや
粗放な育苗方法)よりもポットやセルトレイの育苗方法をとります。

 直まきの場合は1カ所に3粒ずつまきますが、好光性種子ですので薄く覆土します。タネまき後2〜3日で発
芽します。本葉4〜5枚の頃に1本にします。 葉ははじめ葉身の幅が狭くて葉柄の長い縦長の葉ですが生育
が進むにつれて丸みを帯びてきます。
 植えつけ本数の少ない場合は、9月上旬に園芸点から苗を購入すると便利です。私は9月上旬に少し購入、
大部分は直まきして栽培しています。


畑の準備

 ハクサイはおもに平原で、キャベツは岩場でと育ち方が少し違います。キャベツは少々ごつごつした畑でも育
ちますが、ハクサイはきれいな整地されたところを好みます。また、ハクサイの根は非常に細く、根系は広く深く
、深さ1m、幅3mにも広がります。

 従って植えつけ前には丁寧な整地が必要で、整地が不十分だと土が硬くなって土中の酸素が不足し、根の
伸長が妨げられます。
 排水がよく肥沃なところを選定し、堆肥1uあたり2sを施用し、さらに酸度を6,0程度となるよう苦土石灰約
100g程度施します。
 必要な照度は2万〜4万ルックスで、光線が十分あると葉や株が充実し、弱い光では葉が立ち上がり、貧弱
な生育になりますので、出来るだけ日の当たるところに栽培します。(ちなみにトマトは7万ルックス)

株間の考え方

 株間を広くとると株に十分日光が当たり光合成が高まります。この方法では1株あたりの重量は大きくなりま
すが、栽植本数が少なくなるため面積あたりの収量は低下します。また、初期収量が少ない、雑草の繁茂が著
しい、土壌の乾燥が激しいなどの欠点があります。

 一方、株間を狭くして本数を多くすると、1株の重量は小さくなりますが、収量はある程度まで多くなります。し
かし、限度を超えて栽植本数を多くすると株が過密になり光合成が低下し、不結球株や病害の発生が多くなり
、収量は逆に減少してしまいます。

ハクサイはうね幅60〜70p、株間45p 1条植えの初期収量の増加を目的とした密植多収型の株間にします
。うね幅1m以上では2条植えが可能です。


養分吸収と施肥

 ハクサイの根の働きは結球開始期頃から活発になり、養分の吸収が急速に増加しますので、生育初期に肥
料切れを起こすと葉の巻きが弱くなり、しまった球になりません。

 標準的な施肥は、元肥に10uあたり油かす1sと化成肥料1sの計2sを施用します。また、肥大充実期に
養分が十分吸収されることが必要ですので、追肥として@定植15日後(9月中〜9月下旬)A葉が結球しはじめ
る頃(10月中旬)の2回にわけて油かす500gと化成肥料500g計1sを株と株の間に与えることが大切です。な
お、施用するときは傷口から軟腐病菌は入りやすいので外葉を傷めないように気をつけます。



中耕・除草・病害虫防除

 中耕は土を柔らかくして通気性をよくし、根の発達をうながし雑草の発生を防ぐなどの効果があります。ハクサ
イは生育初期に雑草の発生が多くなると生育が目に見えて悪くなりますので、雑草の発生を抑えることが大切
です。

 ハクサイは病害虫の発生が多く、無農薬で栽培することはなかなか困難な野菜です。特に、植えつけ後に大
きな被害をおよぼす害虫に「ハイマダラノメイガ(シンクイムシ)」があり、生長点付近を食い荒らします。この害
虫は高温時期に発生が多く、防除は被害を受けてからからでは遅く、植えつけ時にオルトラン粒剤を施用した
り、さらに防虫シート、寒冷紗などのトンネルを被せます。また、この時期の栽培は、高温、多湿条件で発生し
やすい軟腐病や生理障害である「葉にゴマ粒状の斑点がでるゴマ症」(チッソ過剰)、「新葉の縁が褐変する」(
石灰欠乏症)、「生長点部や葉柄部が褐変する」(ホウソ欠乏症)が発生しやすくなります。


ハクサイの結球

 ハクサイの葉には外葉と葉球を構成する結球葉とがあります。外葉は光合成によって作られた養分を結球葉
に送り、葉数の肥大充実をうながす役割を果たします。

 タネまき後30日頃の外葉の葉数が20枚くらいになると、内部から新しく生長してくる外葉によって遮光される
ようになり、内部の葉が立ち上がり、さらにタネまき後50日頃にはお互い抱合して結球をはじめます。そしてタ
ネまき後70〜85日後には何と80〜100枚の葉による結球が完成します。
 このハクサイの結球には、植物ホルモンのオーキシンの働きが重要です。オーキシンは一般に植物の生長を
促しますが、光を嫌い、葉の表に光が当たると葉の裏側に移動し、葉の裏側の葉の生長を促し、次々と葉が立
ち上がり丸くなっていきます。
 なお、葉の立ち上がりが起こっても葉がお互いに抱合しあうだけの数、大きさ、形を持っていなければ結球を
はじめることができません。

 このため、充実した葉数を得るためには結球葉の分化が順調におこなわれなければなりません。日照不足、
チッソの不足・過剰、土の乾燥、過湿などで結球葉の分化が遅くなると結球態勢に入っても球が充実せず、し
まりのない球になったり結球しなかったりします。
 無農薬で栽培していて外葉が虫に食べられて穴だらけになったハクサイが十分結球出来ないのはこのため
です。


収 穫

 頭部を手で押さえて固くしまってくれば収穫適期で、球を斜めに押し倒し、外葉との間に包丁を入れて切り取
ります。なお、1月まで冬越しさせる場合は結球部の頂部をわらやひもで結束すると収穫期間を延長することが
できます。

 ハクサイにはビタミンCが多く含まれ、風邪の予防や疲労回復の効果が期待出来ます。最も甘みがあるのは
中心部の小さな葉で、うまみ成分のグルタミン酸も多い。これは、結球しているときに外側の葉が作った栄養
分を内側、内側に供給されるからです。
 また、ハクサイを多べ続けると「100歳(ヒャクサイ」まで長生きができるとか。
 


キャベツとブロッコリー(カリフラワー)の栽培

(キャベツ)


1,キャベツの歴史

 キャベツはアブラナ科ブラシカ属の野菜で、原種は地中海沿岸やヨーロッパの大西洋沿岸の岩場に自生して
おり、結球しないキャベツの原始型ともいえるケールに似た植物から変化し、栽培は紀元前6世紀頃に地中海
地方ではじめられ、現在のような結球性のキャベツ13世紀のイギリスで誕生しました。
 我が国では赤ちゃんはコウノトリが運んでくるといわれますが、西洋では赤ちゃんはキャベツ畑で生まれると
いわれていました。
 我が国に結球性のキャベツが入ってきたのは明治になってからで、現在野菜の中では作付け面積、出荷量
ともダイコンについで多い品目(世界ではトマト)になっています。


2,特 徴

 キャベツの発芽適温は15〜30℃、生育適温は15〜20℃で冷涼な気候を好みます。30℃以上の高温では生
育遅延や病気などが増えます。土壌の適応性はきわめて広く、ハクサイは雑草を嫌いますが、キャベツは他の
植物と共生しながら適応進化してきた野菜で雑草とも共存して育ちます。
 好適PHは6,0〜7,0で石灰の施用は欠かせず、PHが低くなると根コブ病の発生しやすくなり、一方PHが過度
に高くするとホウ素欠乏などの生理障害が出やすくなります。


3,私たちが栽培する作型には2つがあります。

 初夏まき年内どりの栽培

 7月〜8月にタネをまく「夏まき年内どり」の作型で、育苗に30日、植えつけから収穫まで60〜80日と比較的短
期間の栽培で収穫が可能な作型です。しかし、この時期は高温、乾燥期にあたりますので病害虫の発生が非
常に多く、しかも台風の被害にあう場合もありますので気をつけます。

 植えつけの準備(土づくり)は7月下旬からはじめますが、アブラナ科野菜の連作には気をつけます。スイート
コーンやジャガイモの跡地に植えますとアブラナ科特有の病気である根こぶ病の発生を抑制しますので、輪作
野菜として優れています。


 夏まき冬どり栽培

 8月中旬以降にタネをまく「秋冬どり」の作型で、冬にむかっての栽培のため病害虫の発生が少なく栽培しや
すいのが特徴で、育苗期から生育初期に適正な防除をおこなえば、後半の病害虫の発生が少なく栽培が容
易です。


4,栽培のおさえどころ

@育苗期と植えつけ後の結球開始頃までがキャベツの生育適温の15〜20℃より かなり高い時期になります
ので、良質な苗の確保が重要となります。
 そのために、堆肥の施用とPHの矯正による苗床の土づくり、苗に光が良く 当るようにするためのタネまきの
間隔、病害虫の防除対策、地温の上昇と乾 燥防止対策、降雨により苗がたたかれるのを防ぐための寒冷紗
のベタがけな どの工夫が必要となります。

A育苗のために幅1,2m、高さ10pの苗床を作るか畑のはしに地床を作ります
 このとき、1uあたり堆肥60g、苦土石灰4g、化成肥料3g程度を施用し、よく耕しておきます。

Bタネは寿命が短いので、毎年新しいタネを使います。条間6p、株間4pに 1粒ずつ丁寧にまき、5o程度
の覆土をおこないます。タネまきが終わった らかん水し、すぐに寒冷紗をベタがけしておきます。基本的には
間引きする 必要はありませんが、混み合う場合は本葉2枚目が出る頃までに4〜6p間 隔に間引きをおこ
ないます。

C植えつけ予定の3〜4日前にフォークで苗の根を少し持ち上げて軽く断根処 理をおこなったのちに十分かん
水し、細根の発生を促しておくと植えつけ後 の活着がよくなります。

D植えつけは苗の本葉が5〜6枚程度の大きさになった頃におこないますが、 深植えにならないように注意
しておこないます。苗の子葉付近までを土に埋 め、まわりの土を軽く押さえるように植えつけます。軸の長い
場合は少し斜 めにして植えつけます。この時期は高温・乾燥で雨が降らないことが多いの で、畑が適度な
湿り気のある状態が理想的ですので、降雨後か雨が予想され る日に植えつけます。晴天の日に植えつける
場合は気温が下がる夕方近くに なったからおこないます。乾燥具合によってかん水の多少を決めますが、多
 くすると根の張りが悪くなりますので必要最小限として、この場合は植えつ け後と翌朝、夕方の3回かん水し
ます。

E苗齢が大きいほど乾燥に強いのですが、本葉10枚以上の大苗を植えると植え つけ後十分な外葉ができず
、小玉で終わることが多いので苗の大きさに注意 します。

Fキャベツの一般的な株間は40〜50pです。

G肥料の吸肥力は強く、とくに結球開始頃から急速に増加するため、葉数の肥 大充実期に肥料切れさせな
いような施肥をおこなうことが大切です。肥料は 半分を元肥として(化成肥料1,5s)施用し、残り半分を追肥と
して植えつけ後15日後(700g)と結球をはじめる頃(9月末ー700g)の2回与えます。

Hキャベツは害虫が好んで食べる野菜ですので、育苗中の予防散布と植えつけ 時の粒剤施用により初期の
害虫防除をおこないます。とくにコナガやハイマ ダラノメイガの発生が予想される時は必ずおこないます。
 人間が生で食べておいしく感じる柔らかいキャベツは害虫も好んで食害しま す。硬くて炒め物にむく品種を
栽培すると害虫の被害も比較的少なくなります。

Iキャベツにはアオムシ(モンシロチョウの幼虫)、ヨトウムシ(ヨトウガの 幼虫)、コナガの幼虫などがよく発生
します。キャベツの近くに、これらの 害虫の嫌いなレタス、サニーレタス、シュンギクなどのキク科の野菜やサ
ル ビアを混植します。(コンパニオンプランツ)
 こうするとキャベツばかりでなく、ハクサイなどのアブラナ科野菜の害虫を 忌避させ、防虫ネットと同じくらい
の効果があります。

4,キャベツの結球について

 結球とは、葉が何層にも重なった状態のことで、葉球の茎はほとんど伸びなず(ロゼット型)、葉の増加に伴
い葉が重なりあって結球します。
 結球ができるには20枚以上の外葉ができていることが必要で、その後に展開してきた葉が立ち上がって結
球態勢をとるようになります。この態勢をとるきっかけに光の明暗と植物生長ホルモンのオーキシンが関係し、
成熟葉の裏側の先端が最も敏感に感じるといわれています。

 まず、外側の葉が立ち上がって結球態勢をとることで、内部葉は外葉によって光を遮られさらに暗くなり、これ
が一層も重なりあうようになり、結球程度がどんどん進んでいきます。
 従って、しっかりと固く結球させるには十分な施肥をおこない、たくさんの葉を作らせて旺盛に生育させておく
ことが大切です。


5,収 穫

 十分に結球し、結球部を上からさわって固くなっているものから順次収穫します。収穫が遅れると裂球してし
まいます。
 球重0,7〜3sのものが一般的ですが、品種によって5sを超える大球になるものもありますが、1,5s前後の
ものが好まれます。




 ブロッコリー・カリフラワーの栽培

 ブロッコリーやカリフラワーはキャベツの一変種で、花蕾を収穫して利用します。カリフラワーはブロッコリーを
改良したものと考えられています。
 キャベツと同じようにヨーロッパで発達し、我が国には明治時代に導入されましたがあまり普及せず、戦後に
なって急速に栽培が増加染ました。
 花蕾の色はブロッコリーには白、緑、紫があります、我が国では緑色のものが好まれ、カリフラワーにも白、黄
緑、紫などがありますが純白のものが好まれます。


1,生育と環境

 発芽適温15〜30℃、生育適温18〜20℃、花蕾の発育適温15〜18℃、好適酸度6,5前後で、耐暑性、耐寒性
は比較的強く、25℃以上や5℃以下では生育が抑制されます。根系は浅く分布しますが、吸水力が強いので、
乾燥には比較的よく耐えます。逆に土壌水分が多すぎると生育が著しく悪くなりますので、乾燥気味に栽培し
ます。


2,花蕾の発育

 一般に茎葉のよく成長した株には大きな花蕾ができますので、栽培にあたっては花蕾の発育に必要な茎葉
を十分確保することが大切です。


3,栽培管理

 ブロッコリーの品種には、主茎の先端に着生する頂花蕾を主体に収穫する品種(頂花蕾種)と頂花蕾を収穫
したあと、葉えきから伸びる茎(側枝)の先端に着生する側花蕾も収穫する品種(頂側兼用種)とがあります。
家庭菜園では頂側兼用種を利用すると便利です。
肥料はキャベツとほぼ同量を施しますが、元肥には有機物を十分に施し、追肥は花蕾の発育期の前半頃まで
におこなうようにします。ブロッコリーやカリフラワーは施肥の効果が大きく、生育初期にチッソが欠乏すると茎
葉の成長がすすまず、花蕾の発育が悪くなりますので、チッソとカリを十分施します。株間は35〜40p程度で
す。


4,収 穫

ブロッコリーは花蕾の直径が12〜15pくらいになり、小花がきっちりとしまり、開花しないうちに収穫します。
 カリフラワーは花蕾の中心が見えはじめたら葉を結束し、軟白し花蕾を白色に仕上げます。なお、紫色の品種
は光線がないときれいに着色しませんので、軟白をおこないません。花蕾の表面に小さな粒があらわれはじめ
る直前に収穫します。