Happy New Year!



「う…、わぁぁあっ!!」



はあはあはあ…。


じっとりと汗ばんだ躰に、握りしめてた掌までも…濡れた様に感じて、その厭な感覚に震えながらタオルケットで拭った。


拭っても拭っても…拭いきれない、悪夢の感触。


汗ばんでいるのに芯から震えそうな寒気すら感じて火村は思わず、身を、小さく丸めた。





そっと隣で寝居ているアリスを窺い見るも、“起きているのか寝ているのか計り知れない状態”で、
それでも背中は律儀に規則正しい呼吸を繰り返している。



なぜ…。


何故、と思う。よりによって今日というこの日に見る夢が…あんな、酷いモノである意味が…どうしても理解できない。眠る前、嬉しそうに笑って言ったアリスの言葉が頭の中を駆け巡るのに…思わず頭を抱えた。


『今夜見る夢が、初夢やなぁ…!夢占い楽しみやっ!』


見る夢が…どんな意味を持つか、なんて。


知らない。

いや。…知りたくも、無い。


ふう、と息を吐き窓越しに見える空は、未だ薄暗いままだった。













有難うございました〜。


間延びした独特の声かけは女性特有のモノだと思う。ソレはショップに限定されるモノではなくコンビニ然りだ。先日、関わった事件の後処理で府警に立ち寄った帰り、約束をしていた訳ではないけれどなんとなく足が向いて、気がつけばアリスの部屋まであと少しのところまで来ていた。当然、連絡は入れていない…が。

まあ、締め切り間近では無かったから最悪追いかえされるという事はないだろう。



それでも、心の片隅には不安感があったのも確かだ。
立ちよったコンビニでアリスの好きなプリンを買い込んで…ついでに金色に光る缶を適当に放り込んだ。






電光掲示はあっという間に数字を重ねて、見慣れた“7”という表示を叩き出す頃、手元でがさりと嵩張る袋を持ち直すとゆっくりと開く扉を抜けて部屋までの廊下を行く。

カツカツ…。



マンションの廊下は硬質の床を有していて何時も硬い靴音を響かせてしまう。深夜にふたりして帰宅するときなどは随分と気を使うモノなのだが、まだ日が落ちて幾らかしか経って居ない時分、珍しく大出を振って歩けるという状況に思わず苦笑が漏れた。

なんだか、すっかり所帯じみてやがるな…。


住んでいる周囲への人間に配慮するなんて事が自然に出来て仕舞う辺り、それだけ経験を積んである程度年齢が行った事の証明の様な気がして可笑しくなったのだ。そんな事を考えながらアリスの部屋の前に立った、…その時。

「…?」

見えない扉の向こう側に、ふと、何時にない違和感を覚えた。


訝しく思いながらも空いている手を伸ばしてインターホンを押すと、予想と反してすぐ向こうに慌ただしい足音と…テンションの高いアリスの声が聴こえた。

「はい、は〜い。誰〜?」
「俺」


解錠音がしないまま、大きく開かれた扉の向こう側にアリスが居た…満面の笑みを浮かべ、手には黄色いメガホン、目にも鮮やかな縞のハッピを纏ったアリスが。

「火村や〜!」

「…いや、は?」

うはうは、と口を大きく開けて笑うアリスは明らかに出来あがっている状態。酒に強いアリスの事だ、ここまでハイになっているという事は随分と量を呑んだに違いない。ぷーんと漂う酒気を纏わせたアリスが、訳のわからない事を言いながらしだれ掛かってくるのは…別に問題ない、無いのだが、無視できない大きな“問題”が眉を潜める火村の目の前に転がっている。リビングから聴こえて来る誰だか分からない男の横柄な声がアリスを親しげに呼ぶからだ。


「アリ〜ス?どないしたん?」

声から言って30代か、それよりも若いかもしれない、うわうわと小躍りすらする上機嫌のアリスもこれまた嬉しそうな声で「火村や〜」なんて叫んだりしている…のにも。


へえぇ…、間男ってとこか?!

突然来た事でも悪びれもせず、困った様子も見せないアリスに浮気のうの字も無いだろうが“有り得ない”状況に火村の沸点はあっけないほど臨界を突破している。勿論、冷静な判断など出来うる余地も無く、派手ななりしたアリスを小脇に抱える様にして何やら騒がしいリビングを目指して引きずる様に向かっていく。


状況いかんによっては、真っ向勝負も厭わない覚悟を以て。



「おう、おせぇよ、アリスって…誰?あんた」


多少荒々しくドアを開けた先には、虎の衣装を身に纏いすっかり寛ぎモードの見知らぬ男が居た…居た、数人。…数人?

「あは〜、火村いうねん、コイツ!オレの恋人〜☆」

なんだ…?なんだ、この状況は?


何時もならよほどの事が無い限りは綺麗に整理されたリビングには、酒のつまみと空き缶が整然性をつゆも感じない芸術的な配置で転がっていて、その合間を縫う様にして虎のハッピや背番号を背負った人間が一様に頬を酒に支配された風に座り込んでいた。

そして、…脇にぶら下がるは堂々と“恋人”宣言をしたアリス。

いつもなら極度に恥ずかしがり屋で譬え二人きりで居たとしても甘いムードには為り難い…筈のアリス。そのアリスは有ろうことか人前だと言うのに、抱えられた脇で腕を絡ませてすら居る。

なんで?


状況と状態が呑みこめないまま、ぽかんと立ち尽くす俺をさておいて、目の前に繰り広げられている狂乱の宴は益々ヒートアップしていくようで、意味も無く湧き上がった“六甲おろし”に座り込んでいた筈の皆が立ち上がって…踊りだした。

「ちょ、ちょっと待て、待てって!」

『…颯爽と〜蒼天翔ける…日輪の〜、青春の覇気、麗しく〜』


アレは球場でやるからこそ、意味があるし…何より画面を通して見るからこそ“安心”していられるのだ。全力を賭したソレを“目の前”でやられてみろ、あまりの恐ろしさに声すら出せない…というか、声を出しても誰にも届かない。勿論、いつの間にか脇から離れて中心で踊り歌うアリスにだって…火村の声は届かない。

『オウオウオウオウ…、〜フレフレ…』

うわ、と思った時には踊りがラインと化していて…上機嫌というよりはトランス状態の虎ファン達に囲まれていた。


「おいっ、よせって!!なんだよ、なんでだ〜!!」

慌てふためく俺を尻目に、徒党を組んだ虎たちは踊りながらラインを輪へと変化させて俺を取り囲むようにして尚も踊り歌う。

その恐ろしさに…堪え切れずに。







「う…、わぁぁあっ!!」





絶叫しながら…目が、覚めた。




「…最悪、だ」


白々と夜が明けはじめた…明け方。

枕の下から聴こえる微かなあの音に、夢の原因を見た。


ソレは、アリスの携帯から聴こえる目覚ましの音―…六甲おろし。


というわけで、遅ればせながら“初夢”でした〜。のっけから何やら重たい雰囲気を出しつつも結局なんてことなねぇ夢オチで本当に申し訳ありません〜(汗)トラキチに囲まれる夢の意味ってなんでしょうねぇ〜(笑)こんな適当なわたくしと色ものばかりの駄サイトではありますが、今年も一年温かい瞳で見守って頂ければ嬉しいです!!どうぞ宜しくお願いいたします。…いえ、本当なら頂きましたイラスト4コマに絡めて何かお返しを、と思っていたのですが…みん様の描かれます素敵なヒムネコとアリチュウの可愛らしい世界を、文章力の無い私の駄文で汚して仕舞っては申し訳ないと思い、せめて「虎」繋がりで書かせて頂きました☆ご笑納いただけますと幸いです!頂きましたお年賀4コマのお返しにもならないと思いますが(苦笑)どうぞお納め下さいませ。 Author by emi