俺の恋人は、割としつこい。
言い出したら頑として譲らない。
しかも、変なことに異常な執着をする。
困ったものだ。
いつだって、結局折れるのは俺の方なんだ。
だがな、譲れないものだってあるんだぞ。
「なあ、って」
「しつこいぞ、アリス」
「一回だけやから、な?」
ほらみろ、まただ。
かれこれ30分は押し問答を繰り返しているというのに。
まったく諦める気配がない。
そんな上目使いでお願い、のポーズをとってみてもムダだよ。
「嫌なものは嫌だ。断る」
「え〜〜、ええやん、減るもんじゃなし」
「いや、減る」
なぜそこでお前が膨れるのか、俺には理解できないぞ、アリス。
「絶っっっっ対、痛くせえへんから、な?」
「だいたい、痛くないって自信はどこからくるんだ?」
「大丈夫やって。自信あんねん」
いや、だから。なぜ。
その根拠の無い自信家ぶりもやめてほしいな。弊害を被るのは俺。
「定説として、不器用なやつは下手と決まっているんだよ」
だから駄目なんだよ。解り易いだろう?いや、この顔は解ってない。
「いつも俺がしてやってるだろ?それでいいじゃねーか。俺は下手か、アリス?」
「…上手やと思う」
「じゃ、俺は不器用だと思うか?」
「……器用デス…」
その通り。俺は器用だな。間違えなくてよかったな。
「では、有栖川有栖。お前は器用か?」
「む…。神に誓って」
「不正解。神はいない」
そう。神は居ないし、お前は確実に不器用だ。
そんなやつに弄くられた日には流血沙汰になるのは火を見るより明らかだ。
留めのため息は盛大に吐いてやる。
「だいたいな、俺は誰にもヤらせたことがないんだよ。初めてが痛いのは嫌だろう?アリース?お前は痛かったか?」
「う…。気持ちよかったデス」
「ハイ、そうゆうこと。この話はおしまい」
「…ケチ!」
ケチで結構。そんな言葉でみすみす俺の皮膚に傷を付けられてたまるか。
お、なんだ。その顔は。なにか思いついただろう。嫌な予感がするぞ。
「なら、ええ。他の人で試すから」
なにっ?他の?聞き捨てならないな。
「他?」
「そう。他の人」
おい、アリス。その顔はやばいぞ。ニタァってのが聞こえるような…。
わざとらしく携帯なんぞ出しやがって。
「森下君あたりやな…」
「あいつは不可」
だいたいなんであいつの連絡先を知っているんだ?
俺も知らないし。必要ないだろ。
「火村がヤらせてくれんのやったら仕方ないやん?」
口を尖らせても…イイ。そそられるな、その顔は。
…いやいや。違うだろ。
くそっ。よりによって森下はいけない。あの年下ハリキリ君はどう見てもアリスに気がある。
きっと、躊躇も無く快諾するに違いない。
ああ、アリス。その顔はやめとけって。
「………はぁ」
わかっているさ。いつだってこうなるのは。
どうしたって適うわけがないのだ、愛しのアリスには。
だから、困っているんだ。
こんなにアリスにめろめろなのに。
解っているのか、いないのか。
いつだってアリスはアリス。
Queen Alice
そして、俺は嬉々としたアリスにホジホジされる羽目になる。
何で?
もちろん、耳かきという細長い凶器で。

ありがちなネタですが…お許しを!孔也様の描かれます素敵なアリスには遠く及びませんが、どこまでもアリスに甘い、可哀想でへたれな火村さんが孔也様の新刊の表紙イメージにぴったりかと…。いや、もっとかっこいいですよ!きりりとした男前な火村先生ですが、たまに見せるこんな一面にメロメロなことでしょう(笑) Author by emi