最近ずいぶんと日が長くなったなぁ、とか。
吹く風に夏の匂いを感じる、とか。
街ゆく人の袖が短い、とか。
いわゆる季節の移り変わり。
それを感じる事が出来るのは、
外出を日常としているモノだけだろう。
玄関から先の世界。
そこへ踏み込んでいく開拓者だけに許される情景だ。
蕾が綻び始める春。
新緑が目に眩しい夏。
彩り鮮やかに映える秋。
そして、吹く風に肩を竦める冬。
道端に咲く花さえ様相を変える。
「今は、夏」
小さな小さな声で独り語ちたアリスは足元を見つめ、
そして角ばった空を見あげた。
ビルの隙間に映る空はどこまでも青い。
見上げた先に、燃える陽を捉えてしまったと思う。
まともに目に入った強い光にぐわりと世界を奪われそうになる。
うっかり空も見れん。
このところ、直接陽の光を浴びることなく過ごしてきたせいだろう。
肌を射す夏光線に目も眩む強い光。
いささか刺激が強すぎる。
「なにをアホな・・・」
たかだか数百メートルの買い物にすら
なんだか身の危険を感じるなんて、どうかしている。
どうかしているのだろうが・・・。
自分で感じた危機感に自身で突っ込みながらも
「否」と言いきれない不甲斐なさすら感じる。
籠りきり、ともすれば一歩も外に出ずに生きていけるこのご時世だ。
人として、社会を回す歯車の一つとして生きるのであれば
意識的に動かなければなるまい―・・・。
まったくおかしな仕組みだとも思うが
そうしないという事は、逸脱者と見られ
しまいには偏屈扱いだろう。
「世捨て人のミステリ作家」
・・・悪くないかもしれん。
暑さで蕩けそうな脳みそから垂れ流れる思考を
そのままにアリスは炎天下のアスファルトをひた歩く。
目的のコンビニまであと少し―・・・。
必要最低限の生活物資を仕入れたら
また焼けつく暑さを越えて往くのだ。
私を待つ、城へ。
私が持つ、繭へ。
そこは、社会から切り取られた絶対の空間。
何物をも受け入れず、何物をも拒まない。
私が私自身で明りを灯し、私自身が世界を回す。
そこにあるのは、私の全てだ。
「偶に煙草くっさいおっさんが来るけどなぁ」
染みついた香りすら、私の世界を彩る欠片に過ぎない。
だが、それでいいのだ。
「ありがとうございました〜」
店内にこだまする間延びした声。
押し出される様にアリスは灼熱砂漠へと戻る。
踏み出した足元に、かげろう。
世知辛い世界を反映するかのような―・・・。
「さぁ、帰ろう」
手にしたビニルをしっかりと握って
アリスは溶けたアスファルトを進む。
目指すは根城。
ヤニ臭いソファで蹲る、キミの元へ。
毎日、本当に暑いですよね・・・(>_<)暑くてちょっとそこまででも歩いていく買い物は大変。そんな中、何故アリスが買い物に出たのか。火村さんはソファで寝ています。きっと事件明けで徹夜明けなんでしょうね。冷蔵庫も空っぽだったので仕方ないんですよ、奥さん(誰っ)愛ですね。
Author by emi