朝、掲示板の前で見知った背中を見つけ
火村はいつものように声を掛けた。
「おう、早いな」
「あ、火村や。おはよ〜さん」
いつものように返ってくる声、そして
振り向いたアリスの姿に瞠目した。
「珍しいな、どうしたアリス」
「ん?昨日な、髪切ってん…だから、なんか顔がいっぱい出てんのが恥ずかしくて…で、メガネでごまかしてるんや」
「へぇ…、別に変じゃねぇよ?」
「…似合う?」
ちょっと首を傾げて尋ねるアリスの仕草に、咥えていた煙草を落としそうになるわ吸い込んだ紫煙に咽そうになるわ…物凄い動揺だったが、そこは悟られない様ぐっとこらえていつものポーカーフェイスをはじき出す。そして極力気障にならないよう気を付けながらにやり、笑って見せた。
「…ああ、似合うぜアリス」
「ほんま?火村に言われるとめっちゃ嬉しいなぁ…あ、そうや!なぁなぁ火村!キミもメガネ、かけてみたら?」
「は?」
延びてきた髪が邪魔なのと、寄せられる不躾な視線がうっとうしいのとで最近はアリスが選んできたハットを目深にかぶるようにしている。
もちろん、食事や授業で被るなんて無作法はしないけれど、それでも大抵は顔を隠すように被ったままだ。
先ほど顔を綻ばせ嬉しい、といって笑っていたアリスは何を思ったのか自分のかけていたメガネを外すと、「コレ!」と言って手渡してきた。
「大丈夫やって!それ、伊達やし…キミにきっと似合いそうや!」
「…でも、なぁアリス…」
一応躊躇するもそこは心得たモノ。ほんの少しの上目使いと猫撫ぜ声。
「…見て、みたいねん。…ダメ?」
ダメなわけが無い。
あっさり受け取ったメガネをかけるとモデルよろしくポーズまでしてやった。
Author by emi