たいした意味なんて―無い。
珈琲を入れる、キッチンに立つ、長身が狭い空間から食み出してるみたいに見える。
なんとなく片手を棚について、片足にやや重心を落として、でも。
すらり、伸びたライン。
しなやかな筋肉を纏い、綺麗な曲線を描く胸元から腰に掛けて。
無造作に添えられた掌までも。
どこまでも美しい、火村という男。
コポ…、ゴポッ…。
水音が啼くまでの一瞬を、手持無沙汰に―ただ、立っている火村。
本当に、たいした意味なんて無いんだ。
リビングで、私は何をしようとしていたのかなんて…瞬く間に忘れた。
ふらふら、ぼんやりした眼でその空間だけを目指す。
「…ん?」
急に動いた私に訝しげな眼差しを向ける、火村。
でも、構わない。
目指す先、少し傾いで立つ君の…胸元から目を離さずに。
腕を、伸ばす。
自然と拡がる、両手。
アリス?と問いたげな視線を飛び越えて、埋まる。
「……」
薄くも無く、厚くも無い、でも、とても。
温かい、胸。
ただ、何も言わず。
廻された、腕の優しい動きに。
ほう、と息を一つ吐いて…体重を預けた。
肩に掛けた顎から、合わせた胸から、廻されて抱かれた腕から。
どくん、どくん。
温かさが伝わる。
「…そこ、痒いねん」
自分でもかなり突飛な行動に出たのだと、分かっていた。
らしくない、わけでもないけれど…でも、らしくない。思ったよりは。
「…ああ」
照れ隠しに、呟いた言葉に苦笑しながら甘やかしてくれる。
そんな火村の温かさが…さらに居た堪れない恥ずかしさを、安心を、与えてくれる。
「…惜しい、そっちの手じゃないんやなぁ…」
くつくつ、と薄く笑う火村の胸の鼓動、振動がダイレクトに私を揺らす。
埋めた首元から漂う君の香り。
ただ―。
ぎゅうっ、って。
して欲しかっただけ。
いつ書いていたのかすら不明。なんか最近寒いしさ、なんていうかさ、寒いしね。甘い甘いヒムアリが書きたかったんだと思うよ。いちゃこらさっさ。
Author by emi