キミといつまでも





これからキミと、どれくらいの季節を歩いていくのだろう。

どれくらいの季節を、共に歩いていけるのだろう。



廻り往く季節は過ぎ去ってしまうけれど。
季節は、ただただ繰り返すだけだけれど。


過ぎた季節はいつか、思い出になるから。
独りで過ごす、その時までは。


キミの欲しいものを。
キミが願うのなら。


キミが、求めるのなら。







「なぁ、火村…」


この時期をテーマにした短編を脱稿したので、
忙しくなり始めた大学に勤める准教授を訪ねて春盛りの京都を訪れていた。

この時期の京都は人で溢れているが、 北下川の下宿の窓から見下ろす通りには、人通りが少ない。

幸いにも、二人とも花粉症の心配は無いので、
心地よい風を通す為に窓を開けて縁から空を仰ぎ見た。


雲が、空が、―高い。


研究用の資料か、はたまた、授業用のものか。
手元に視線を落としたままの火村は、
辛うじて目線のみをあげて無言の返事を投げかける。

目線で語るのはやめろというのに…。


「なんか、ほしいもん、ないんか?」
「ああ?」

なんという柄の悪さか。
その返事はいかんよ、センセイ。


「火村、もうすぐ誕生日やろ?」
「あ?ああ、もうそんな時期か…。くそっ」
「だから、キミそんな忙しくしとるんやないか」


心底、忌々しそうに呟いた火村は軽く眉間を指で押さえつつ、そのまま首を回す。


だいぶ、お疲れのご様子だ。仕方がない、揉んでやろうではないか。

火村の背に回り肩に手をやり揉んでやると、
哀しいかな30男のうなり声が聞こえた。


「草臥れ果てたおっさんの嘆きやな」
「失礼な。30を少し過ぎただけじゃないか」


思ったよりも凝っているらしく、がっしりとした肩はがちがちに硬い。
それにしてもなんと男らしい背中だろうか。

思わずしがみ付きたくなる…。


「おわっ、重いぞ。アリス」


うるさいわ。それだけ想ってるんじゃ、重いに決まっとる。


「何が欲しい?」

後ろから抱きついた形のアリスは火村の肩口に顔を寄せているので、
耳元に掛かる優しい声も、柔らかな細い髪が首筋に触れている感触も心地よい。

もっと触っていたくて、腕を上げてアリスの頭を抱えるようにして撫ぜた。


「お前が欲しいよ、アリス」


そうだ、アリス。お前が欲しいよ。

その髪も瞳も声も躰も、全てが欲しい。

いつになっても、手が届かないと思っていたのに、堕ちてきたお前の心に触れていたとしても。

それでも、欲張る自分に嫌気がさすほど、何も残らない位に貪りつくしてしまいたいほどに…。

黙って抱きついていたままのアリスは、ゆっくりと身体を起こすと
火村の前に回りこみ掌で顔を包むと不思議そうに瞳を覗きこんできた。

「オレはキミのもんやで?髪の先から足の爪まで全部や」



その、逸らされることの無い瞳は。


そうやろ?と笑うアリスの唇を性急に塞ぎ、躰を掻き抱いて捕らえる。



お前は知らないのだろう、アリス。


その言葉に。
その瞳に。


何度、救われているか。
どれだけ、癒されているのか。



全てを与えられて、求められて。
今は、肌を重ねることで確かめ合う。
手を伸ばせば、ぬくもりが在る。


お前が居る幸せに。
君がいる幸せに。

おめでとう、を。
ありがとう、を。







おまけ。


そして迎えた4月15日。

いつものように少しリッチなディナーと、奮発したワインと。
近頃お気に入りのパティスリーの小ぶりなホールケーキ。

で、結局こうなんねん。
は?肩揉み券なんて、子供じゃあるまいし、いややって。

ええやん、ソレで。気持ちええで?
気に入らんのやったら返して。

じゃ、文句云うなや。

…。
揉んでやるのはいいんやけど、いつの間にか押し倒されてしまうやろ?
だから。

え?ナニ?


…この、変態性欲がっ!!

変態な要望を告げられたに違いない。
で、なんだかんだで答えちゃうアリスが好きです。

Author by emi