森 絵都

「宇宙のみなしご」森絵都/講談社

スウ (2004/6/12)
●青き時代を思い出してイテテ

中学生二年生の陽子は一つ下の弟リンと、常におもしろい遊びを考えては実行してきた。
今度の秘密の遊びは、真夜中に屋根にのぼること ―

自分の中学・高校頃の友達関係を嫌でも思い出すリアルさだった。仲がよさそうに見えても突然仲間はずれにされたり、外れた子が流れてきたり、ちょっとでも気を使い損ねるとドロドロになる女子の世界。
この話はドロドロがあることを見せながら寸でのところでさわやかにまとめている所がほっとした。それに、子供は大人が思っているほど歪んでもいないし、あほでもない。ただ、心の中がいつももやもやしている状態なんだよな、というのを思い出したりした。

最後、みんなで屋根にのぼっているときキオスクが言う言葉が、今の自分にとって、ちょっと励まされる感じだった。

「−大人も子供もだれだって、いちばんしんどいときは、ひとりで切り抜けるしかないんだ、って」
「ぼくたちはみんな宇宙のみなしごだから。ばらばらに生まれてばらばらに死んでいくみなしごだから。自分の力できらきら輝いてないと、宇宙の暗闇にのみこまれて消えちゃうんだよ、って」
「でも、ひとりでやってかなきゃならないからこそ、ときどき手をつなぎあえる友だちを見つけなさいって、富塚先生、そういったんだ」

こういうセリフは、耳障りがいいきれいなことばで、ここだけ読んでも当たり前の事・・という感じがしてしまうかもしれないけれど、このお話の、一人ひとりしんどい所をなんとか乗り越えていく様子を読んできたからこそ、心に響くものがあるのだな、と思った。


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