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『アドルフ』 ベンジャマン・コンスタン/新潮文庫

スウ(2004..25)
●惑いっぱなしの彼
アドルフの優柔不断でしょうもないグズグズぶりにあきれて笑った。
伯爵のお妾さんにモーレツアタックして落としたはいいけど、彼女が子供も生活も捨ててアドルフに走ったとたん恋熱が冷めて別れたくなってしまう。
ここまではよくある話だねと思っていたら、なんと別れるつもりがどうにも気が弱くて別れきれない。彼女が払った多くの犠牲に対して正面から応える事も出来なければ、まったく無視して捨てる事もできずに「束縛されてやだあ」「僕の才能が朽ちてしまうう」等などうじうじ不満ばかり募らせているのだった。

この本は最近の映画『イザベル・アジャーニの惑い』の原作本で、映画は見ていないけれどちょっと気になっていたので読んでみた。しかしこの邦画タイトルは失敗ではないのかな。タイトルに話とは関係ない主演女優の名前を冠するというのは20年ぐらい前の話ではなかろうか。
第一、原作だけみればイザベル・アジャーニ演じるエレノールは、全然「惑っ」たりしてないのである。確かにアドルフになびくかどうかという所では惑いはあったろうが、この本の中ではアドルフこそが徹頭徹尾まどいっぱなしで私ゃあきれるやら情けないやら、こんな事言ってるけどどうせまた別れられないぞ、と思っているとまったくその通りになるし、自分で分かってて悪いほう悪いほうへとずるずる流れてしまうのだった。

「愛した人を傷つけるのが怖い」とアドルフは言うけれど、結局別れる時の修羅場が嫌だっただけなんじゃないのかなあと思ったりした。でもいざ別れようと想うと離れがたくなったり愛しく思ってみたりと、まるっきり単純に別れたいと思っている訳でもなさそうで、やっぱり人間の心理は一つに束ねられない、という表現が巧みな気はした。それが傍から見てて一番イライラするんだけど。

あとがきを見ると著者はアドルフ以上にまどいっぱなしで女性との付き合い方も輪をかけてグズグズなのでした。なるほどね!



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