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『源氏物語』 はじめの一歩

いし(2002/8月/花日和12号より)

かなり昔の大学生の頃、一度『源氏物語』を読んでみたいと思いました。しかし、文学部だったせいか、研究書だけでもたくさんあって難しいという話ばかり聞かされるので、結局ほんの少し関連本を読んだくらいで、それっきりになってしまいました。

ところが、たまたま昨年暮れに会社の同僚から『あさきゆめみし』を全巻貸してもらう機会があり、急に『源氏物語』をもう少し知りたいという気持ちになりました。

●あらすじをつかむのに便利なもの
まずは抄訳を読もうと『2時間でわかる源氏物語』(明治書院)から始めました。抄訳もいろいろあって、書き方もさまざまです。私が読んだなかでは『源氏物語 全一巻』島村洋子著(双葉社)が分かりやすかったです。
著者は少女小説の書き手ですが、この本は本文以外に解説もついているし、実際に原文に書かれていなくともあったことになっている場面も織りこまれていて、物語のあらすじをつかむにはとても便利だと思いました。

●奥行きを感じる周辺のこと
次に、『源氏物語みちしるべ』中野幸一著(小学館)といった周辺のことまで書かれている本を読むと奥行きを感じて面白味が増しました。

●紫式部からの考察
さらに、作者紫式部から考察した本もいろいろ見つけました。インパクトがあったのは『紫式部のメッセージ』駒尺喜美著(朝日選書)で、フェミニズムを踏まえ、この時代の「結婚」制度に対する批判が描かれているとあって、びっくりしました。結婚する立場にある私としては、考えさせられました。
『紫式部の手品』は、物語をどのように書いていったのかを推測していて興味が湧きました。「紫式部という稀有の魂を持った女が物語を書いたそのプロセスを追体験できるような"語り(騙り)"をしてみようと思い立った」と著者は明かしています。
また『紫マンダラ』河合隼雄著(小学館)は、『源氏物語』を光源氏の物語ではなく、紫式部の物語として読み解いています。物語全体の構図は、女性による「世界」の探求の結果であり、物語の女性たちは紫式部自身の「個としての女性」の現れとしていて、とても興味深く思いました。

それにしても、関連する本を探していくと、同じ著者が『源氏物語』について何度も本を書いていることがよく分かりました。一度では語り尽くせないものがあるんだなと思います。

●田辺聖子、瀬戸内寂聴 語る
一般の人に語るような本もよかったです。
『田辺聖子の源氏がたり(一〜三巻)』(新潮社)はホテルで開かれた講座、
『わたしの源氏物語』瀬戸内寂聴著(小学館)は読売新聞に連載したものが元になっているそうです。

そうそう、まるさんの本棚には村山源氏がありましたね。さまざまな人がいろんな形で語りたいのは、それだけ魅力があるからだと感じました。

私も多忙なはずなのに、最初の一歩だったこの半年間で、思った以上に『源氏物語』の関連本を読まされてしまいました。みなさんも機会あれば、ぜひはまってみてください。

■LIST
『2時間でわかる源氏物語』(明治書院)
『源氏物語 全一巻』島村洋子著(双葉社)
『源氏物語みちしるべ』中野幸一著(小学館)
『紫式部のメッセージ』駒尺喜美著(朝日選書)
『紫式部の手品』
『紫マンダラ』河合隼雄著(小学館)
『田辺聖子の源氏がたり(一〜三巻)』(新潮社)
『わたしの源氏物語』瀬戸内寂聴著(小学館)

マンカ゛や絵で視覚に頼り楽しむ編

スウ(2002/8月/花日和12号より)

大掴源氏物語 『まろ、ん?』 小泉吉宏/幻冬舎
●これ一冊ですべてを読んだ気になれます!
五十四帖ある源氏物語をかわいいマンガですべて見開き二頁で表現してあります。
マンガといっても適当なのではなく、相当綿密に下調べした上でこだわりを持って書かれていて読みごたえ充分です。
さらりとは読めずそれなりに時間はかかりますが、円地文子訳を挫折して「あさきゆめみし」も薫あたりから頓挫の私が、やっと通しで読んでこういう物語だったのか〜と納得できました。◎オススメ◎!
蛇足ながら 著者曰く
  「いつの時代も男は女々しく、女は潔く」


『源氏たまゆら』 田辺聖子/岡田嘉夫 絵/講談社文庫
●さらっと読むなら
光源氏が「おれ」の視点で現代文で物語っていて、岡田嘉夫さんによる絵も妖艶で美しくさらっと読めてしまいます。
源氏物語のすべてではなく、有名な「おいしいところ」を集めて短くまとめられていますが、ちゃんと宇治十帖の一部までありファンも納得の一冊でしょう。
それにしても、男性からすると、
”賢いけれども気取らず素直、ちょっとすねるくらいの女がかわいらしい”
というのがよく分かりました・・・。

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