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〇夢と現実のつながる物語

いし(花日和vol.14)

子供の頃、夜中に夢を見て、そこで見たものを現実に持って帰れたら、と何度も思ったことがあります。幼い私は、眠っていて見る夢と昼間の現実とがなぜこんなにもつながっていないのかと不思議に思っていたようなところがありました。実際に、夢に出てきたものを手につかんで目を覚まし、布団の中からそっと握り締めた手を出して、そこに何もなかったことにがっかりしたものです。

『ドリームバスター』
それにしても、夢と現実が何らかの形でつながっている、という物語は、意外とあるのではないでしょうか。最近、『ドリームバスター』宮部みゆき著(徳間書店)を読んでそう思いました。身体をなくした凶悪犯たちが、人の夢の中に潜入する。その夢に入り、犯罪者たちを捕らえるのがドリームバスターです。
夢を渡り歩く犯罪者たちとの戦いという側面より、取りつかれた人と個性的なドリームバスターたちとの交流の方が印象的でした。心の疲れた人がよりターゲットになりやすいのですが、ドリームバスターたちと出会ったことで、彼ら彼女らの心身は何か変化していくような感じでした。続編『ドリームバスター2』も出ています。

『パプリカ』
最近読んだ本でもうひとつ、『パプリカ』筒井康隆著(中央公論社)も印象的です。
精神分析治療に夢を積極的に利用していくのですが、夢探偵パプリカが患者の夢に直接入って、心の問題をさぐり、治療していきます。そのパプリカの活躍のお話かと思っていると(それはそれでおもしろそうだけど)、進むにつれとんでもないことになっていきました。前述した幼い頃の私の考えそのままに、あることから夢の中のものを現実に持ちかえってしまいます。さらには「夢と現実の区別をしてはいけない」と口走ってしまったのも、冗談ではなくなります。
スケールの大きな夢と現実の混ざり合いに圧倒されてしまいました。

『天のろくろ』『ダークグリーン』『ヴィーナス・シティ』
また、現実とは違う夢を見るとその通りに現実が変わってしまうという設定の『天のろくろ』アーシュラ・K・ル=グイン著/脇明子訳(サンリオSF文庫、絶版)もあります。こちらは、宇宙人までが登場してしまいます。
もっと前に読んだ本で思い出すのは、漫画の『ダークグリーン』[全10巻]佐々木淳子著(小学館)です。世界中の人々が同じ舞台の夢を見ます。 "R‐ドリーム"と呼ばれるその場所では、悪魔との戦いがあります。そこでの死は現実の死であり、出られない者は植物人間になってしまいます。
何だかこの辺、映画の「マトリックス」で思い起こしました。横たわった人が、その人の感じている別世界で傷つくと現実に本当に傷つくというのは、それ自体悪夢っぽい感じがします。

さらに思い出すのは、『ヴィーナス・シティ』征悟郎著(早川書房)です。こちらはネット上に作られた都市に五感を持ったまま別人になって入れるという設定で、現実と仮想世界とのギャップがとてもおもしろかったです。話を戻すと、"R‐ドリーム"とは、人類に与えられた警告だったのですが、この物語のメッセージ性も強く印象に残っています。
思いつくものを挙げてみましたが、探したら他にもたくさんありそうな気がします。


スウ(2004.3.15)

本当にいろいろありますね。創作者にとっては「夢」って架空の世界を描くのに便利な舞台なんだろうなあと思いました。

『月の骨』

私が思い当たったのは、ずっと前に読んで記憶がオボロなのですが ジョナサン・キャロルの『月の骨』です。
これは表紙の男の子の絵が異常に怖くてそれをよく覚えています。
若いころ中絶経験があるものの幸せな結婚生活を送っていた女性主人公が、ファンタジーな夢をしょっちゅうみて、その中にどうやら中絶した時の子供が出てきて夢の内容がどんどん怖くなっていって、最後には現実に恐ろしい事が起こる・・というようなものだった気がします。
平穏無事だと思っている日常も、紙一重でいつ何が起るか分らない、という感想をもった覚えがあります。




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