トラックタイヤ離脱事故について

  トラックが走行中にタイヤを留めるボルトが折損して、タイやが飛び出し通行人に当たるという死亡事故が発生した。 しかし最近はボルトの折損よりもハブの強度が不足していて割れを生ずる事の方が話題になってしまっている。ハブとボルトについて考えてみた。

  軸受業界から自動車用軸受としてハブと軸受が一体になったハブユニットが提案されている。第1世代から第4世代まであり、第1世代は従来からトラックなどに採用されているハブと軸受が別々の物である。第2世代では軸受外輪とハブが一体になったものであり、第3世代では更に軸と軸受内輪が一体になっている。第4世代は第3世代に等速ジョイントが一体化したものである。
  ハブユニットは現在第2から第3世代が普及している。普及の過程で、賢くも重要保安部品であるこの部位のリスクを自社で負担する事を避けるために積極的に採用した欧米の自動車メーカーもあったという。普及は小型乗用車から始まり、コストが厳しい軽自動車や大型のSUVにも採用されるようになった。軸受構造は殆ど玉軸受であるが、SUV用ではころ軸受が採用されて負荷能力も向上している。又材料も中炭素鋼に高周波焼入れを施していたが、最近は軸受鋼を使用したものも出てきた。トラックがハブユニットを採用する環境は整ったといえる。

  破損したハブの写真を見てフランジ面に丸く溝が切ってあるのに気がついた。これはタイヤ締付ボルトの回り止を引っ掛けるためのものという。乗用車用ではボルトをフランジの背面から圧入して回らない様にするのだが、トラックではスタッドボルトの中間に四角い部位を付けて溝に引っ掛けるのが主流なのだろうか。
  一般的なボルト締結構造の話しだが、引張り外力が作用するとその負荷をボルトとナットが接触する平面付近が各々のばね定数の比率で負担する事になる。ボルトと同じヤング率の物を締付けるとボルトの負担割合は3割程度である。しかしフランジ側に溝があるとナット接触平面側のばね定数が小さくなるので、ボルトに掛かる負荷はかなり大きくなる。当然それを見込んでボルトサイズを決定しているのだろうが、ナット接触平面内でばね定数が異なるまだら模様が生じているのであれば、ゆるみ易さなどに影響が無いか心配である。一旦ゆるんでしまえばボルトは100%の外力を受ける事になる。
  このホィール回りの点検項目の中に「ホィールナットからのホィールボルトの突出量が均一か」というのがある。ホィールボルトとは前述の中間に四角い部位があるスタッドボルトの事である。スタッドボルトはハブの表側ではホィールを固定し、裏側でブレーキドラムを固定している。ホィールボルトの突出量が大きい時はブレーキドラムを固定する側のナットが緩んでいる可能性がある。そうなればボルトはホィールのみを締付けるだけで、ハブ、ブレーキドラムは分離した状態になる。そのような点検項目が不要になる構造が必要と思う。(2005/2/21)

2005/11/21追記
 私が期待していたトラック用ハブユニットを見つけたので追記しておく。


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