製図講義
この秋、2年向け基礎製図講義の手伝いを頼まれた。先生が交代したのを機に実務経験がある私が参加する事になった。
設計製図は大学の機械教育の中では特異な存在である。本学でも学科HPのトップにも出てくる通りで、機械工学のシンボルのような存在であり、必修科目である。
本学レベルの学生が製造業に就職した場合、機械製図とどのように向き合うのだろうか。製図やモデリングの専門家になる事はまずないだろが、設計職に就くなら図面を検図する立場になるだろうし、新人の時は製図やモデリングを専門に行なう期間もあるだろう。製図は企業各々の社内規格に則って行なうケースが殆どだ。だから学生達が生まれる前に廃止されたルールがまだ通用している事も多い。最新JISの製図ルールを知っていても役に立たない事があるし、古いJISを知らないために図面を理解できないケースもある。 講義資料作成の機会に機械製図関係のJISを調べ直してみたのだが、最近はISOと整合性を持たせるための改訂がよく行なわれていて、×を使用する事が多くなった。「JIS B 0001 機械製図」で、複数の穴の記載方法だが、昔は「数量−寸法」だったのに「数量×寸法」に変更された。又「JIS B 0002 ねじ製図」では、ねじ穴やその下穴の深さを記載するのに従来は「呼び深さ数値」だったのが「呼び×数値」になった。一方キリ穴や座ぐりは後で改訂されたにもかかわらず、「深さ」で表記するままだ。JIS規格内で整合性に疑問がある。こう書くと「深さ」が残っている事を問題にしているようになるが、実は気持ちは反対で、図面が分かりやすくなるためには日本語表記はもっと残すべきと感じている。
講義資料はJIS規格製図を総花的に並べるのではなく、私が歩んできた分野で使用頻度が高いものをまとめた。又学生達が社会に出てから戸惑わないように、ここ30年位のJISの変更も盛り込んだ。本学には数十年前のJISハンドブックも保管されていて変遷がよく分かった。
2週に分けて計2時間のプレゼンテーションだった。実務経験というスパイスを効かして、学生達に説明した。つもりだった。ウナギの寝床のような部屋の中央で、100人を相手にモニタを視ながらマイクを使って話しをしても、エコーがステレオで帰ってくるだけで頼りないものだ。 本学では研究に必要な部品は学生自身が機械を操作して作るのではなく、全て職員に依頼する事になっている。この事は学生が客観的で分り易い図面を描く意識を高める事になっているのではと考えている。これは他ではまねできない、本学の大きな特徴である。 (2006/10/23) 戻る Home |