スコッチヨーク

 仕事柄、疲労試験機の設計を依頼される事がしばしばある。よく採用していた機構に、スコッチヨークという名前がある事を最近知った。
Scotch Yokeはエンジンの往復運動を回転運動に変換するために、古くから用いられて来たという。疲労試験機は電動機の回転を往復運動に変換するから、逆の動作になる。

 面白い名前だから、何に由来しているか調べてみた。スコッチScotchはスコットランドからきているのだろうか。ヨークyokeはスペルから、イングランド北部の町の事ではなくて、馬具の「くびき」から来ているようだ。Yokeは拘束の意味から何となくスライド部分を連想できるが、どうしてスコッチなのか、語源を含めて、概要は確認する事はできなかった。一方で、イギリスではスコッチヨークがDonkey Crossheadとも呼ばれているとの記述があったクロスヘッドは、最近の内燃機関ではあまり見ないが、蒸気機関車のようにシリンダが複動式の場合、ピストンロッドとコネクティングロッドを結ぶ部品として役割をはたす。 「ろばのクロスヘッド」って何だろうと驚いたが、Donkeyには機械用語で「補助の」という意味もあるようだ。こちらの方が、フィットするような気がするのだが。

 機械の設計をしていると、部品の名前を決める必要が出てくる。使用しているCADは英語しか使えないので、ローマ字もたまには使うが大抵は英語で、部品の形状又はその機能から、名前をつける。
 昔、米国の会社の図面を多く見る機会があった。そんな部品図の中に、ヨークという名称の部品もあった。形状はU字型で先端と底に穴やネジがある部品だ。クレビスとも言っていた。ヨークとクレビスの違いは把握していないが、ヨークとはU字形のものとずっと思っていた。
 2頭の牛馬を繋ぐのがヨークだが、機械部品のヨークは横棒から首に伸びたU字形を表すのだろうか。それともHead Yokeのように個々の牛馬の頭に付けるものが由来だろうか。歴史を感じて興味深いが、これ以上は分からなかった。
 同様に気になる名前で、ベルクランクというのがある。ただの曲がったレバー部品だが、昔、教会の鐘を鳴らしたり、離れた部屋のベルに連絡するために、紐を繋いだ部品のようだ。この名前を部品に付ける時は、音に関連した機能を与える時に限った方がいいのだろうか。(joke)

 最近のCADはその形状から類似部品をリストアップする事ができるようになったそうだが、昔は部品名称から類似部品を割り出していた。これは企業にとって生産性向上のために、部品の種類を増やさないための重要な施策で、名前の付け方にもルールがあった。
 しかし今はそんなしがらみもないから、もっと気の利いた名前を、部品に付けてやりたいと思うのだが、ボキャブラリ不足でよい名前が浮かばないのが残念だ。  (2010/7/1)


戻る  Home