プッツマイスター(モルタル職人)

 被災した福島原発に放水する機材として、プッツマイスター社コンクリートポンプ車を使用するという。高圧放水車が出動した時に、コンクリートポンプ車を思い出したが、プッツマイスター社の機械を使う事までは思いつかなかった。カタログで知っている程度だったが、我ながら不覚だった。

 コンクリートポンプ車とは、一般にトラックのシャーシにコンクリートを圧送するポンプと、コンクリートを打設するための配管付の折りたたみ式ブームを備えた建設機械を指す。ブームが付かないものもある。日本国内でも数社が製造している。しかし、今回福島原発に投入されるような大型機は製造していない。
 その理由は国内の規制が原因だ。道路運送車両法の保安基準第四条では、車両総重量(GVW)が25トン以下と定められている。この規制に従えば、ブーム長さは最大地上高で33mが限界だ。昔(30年前)は20m弱だったが規制が緩和されるたびに伸びてきた。
 更に、第五条に機械が転倒しない限界角度30°の規制がある。日本独自の規制と記憶している。重心を低くする必要があるから、GVWと併せて設計上の大きな制約だ。

 今回使用のような大型機の場合はトレーラー構造にする必要がある。機動性が悪く、移動するたびに申請が必要だ。そんな機械は超大型プロジェクトでもない限り必要ない。だから日本には輸入機が数台あるだけなのだろう。
 ブームはポンプの構造に起因する振動に耐えられる疲労強度設計が重要だ。国内メーカーに設計製作する技術力がないわけではないだろうが、出遅れてしまった。

 ポンプの構造だが、ピストン式とスクィーズ式がある。ピストン式は2本のシリンダにコンクリートを交互に吸入・吐出する方式だ。吸入・吐出を切替えるバルブが肝で、昔は各社が様々な方式を開発していた。中でもプッツマイスター社のバルブはHPに象が出てくる通り、象の鼻を連想するJ型の吐出管を2本のシリンダ間に揺動させる機構だった。シンプルで独創的だった。80年代にはドイツの同業を企業買収してブームなどレパートリーを広げた。
 現在は各社ともこの揺動型の応用だが、偏心した吐出管をシリンダの延長方向に配置する構造に収束してきているようだ。
 一方、スクィーズ式だが、その名の通り二個のゴムローラーでゴムホースをスクィーズする事でコンクリートを押し出す方式だ。高圧は出ないが、静かで機械が軽量等、長所が多い。日本のK社がコンクリートの吸入を良くするために、ゴムホースを外側から減圧する特許を取って独占状態だ。

 原発への放水は多いに期待はしてるが、コンクリート用ポンプを水に使用する事には懸念している。それは水の潤滑性の無さだ。コンクリートも同様だが、長時間の使用に耐えられるとは思わない。別に水用のポンプを用意して、ブームの配管に繋ぐべきだろう。それに、ホッパーに一旦受けるのでは、制御が複雑だ。 (2011/3/22)


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