マンダリナ

 果物で何が好きかと聞かれれば、冬なら迷わずミカンと答える。特に好きなのは温州みかんシラヌヒだ。甘くておいしいし、皮を手で剥いてすぐに食べられるのがなによりだ。だから、皮が手で剥けなかったり、剥けても更に内皮まで剥かなければならない種類の柑橘類はチョット苦手だ。

 昔のみかんは酸っぱかった。1970年代にアメリカからオレンジ輸入枠拡大の要請が強まった時に、日本のみかんはオレンジの美味しさに勝てないだろうと言われて、随分反対があったと記憶している。
 以前ギリシャを旅行した時に、どの辺だったか柑橘類が栽培されている地域を案内され、日本人ガイドが自腹でみかんを買って食べさせてくれた。その時はみかんにもこんなに甘い種類があるのかと驚いて、どうしてこの品種が日本に紹介されないのかと思ったものだった。現地で結婚したそのガイドも同じ思いだったかも知れない。
ともかくも、日本のみかんも甘くなったから良いが、反対する前に工夫の余地があったのかと思う。農業関連の巨大な組織があるが、海外情報は入らなかったのだろうか。

 スペイン語でオレンジはナランハnaranja、みかんはマンダリナmandariaと区別がある。英語でもmandarinというが、中国清朝の官吏であるマンダリンが身につけていた服の色が由来という。ならばギリシャのみかんは何と呼ばれていたのだろうか。クレメンティンだっただろうか。

 バレンシア地方はバレンシアオレンジが有名だ。バレンシアを旅行した時に名物のジュースを飲んだが、しぼり機のそばに置いてあった段ボール箱にブラジル産の記載があったのにはがっかりした。沢山絞って量的にはサービスしてくれたのだが…。

 みかんの季節はせいぜい3月までだが、6月に入ってみかん(マンダリン)を食べた。なんとニュージーランドやオーストラリア産で、かの地では旬だという。甘さは今一つだが、みかん好きにとっては嬉しいことだ。シーズンが深まれば甘さは増すだろうか。
 世界的にはオレンジの生産割合が圧倒的に多いようだが、食べ易さではみかんはオレンジに勝るだろう。味は別物だが、良い勝負だろう。食べ方を提案して世界に打って出て欲しいが、時すでに遅しという事だろうか。 (2017/7/1)


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