機構解析講義後記
振返れば1年前には大地震があった。被災した皆様には改めてお見舞い申し上げたい。私も経験した事のない揺れで、製図室のタワー形パソコンがガタガタ揺れたがなんとか倒れなかった。近くにいた学生が「4くらい?」といったが、「いや…」といったまま続かなかった。東京は5弱だった。その日は製図室に泊まった。翌日に予定していた友人の送別会は流れたままだ。 今年は初めて機構解析の講義を仰せ付かった。採点はTAがやってくれたが、学生達のレポートを読むと講義の反省点も見えてくる。説明は十分だったか。設問は適切だったか。といった事だ。来年度の事は別にして、忘れない内にと検討を始めた。
機構解析ソフトだが、ある解析でチョットした異常値が出る事が分かっていた。計算アルゴリズムに起因するバグのようだ。データを冷静に分析できるようにと、それを指摘することを設問にしたりしたのだが、特異点もあるようなので精度のチェックを始めた。
解析データと比較する正確なデータだが、スライダクランク機構の変位式を使った。この式は機械力学や機構学の書籍に載っている。実は三角関数とピタゴラスの定理を知っていれば中学生でも導く事が可能だ。だから設問にも使った。但し、書籍の丸写しにならないように原点は変更した。すっかり構えてしまい戸惑う学生が多かったが、式は何とか導き出したようだ。
変位のついでにと、速度や加速度の計算チェックも行なった。本学の図書館には機械力学や機構学の書籍は数多ある。何冊か手にとって調べるのだが、速度や加速度は二項定理で簡略化した式しか載っていなかった。工学的にはその精度で十分という事だ。それらの式と解析データを比較するのも面白いのだが、それではソフト精度のチェックにはならない。
最近は便利なソフトで済ますのだろうが、今の私には、変位の式をガチで2回も微分計算する根気も能力もない。学生時代に非常勤で来られて、繊維機械の講義をして頂いたY先生の本が目に止まった。懐かしく思い手に取って見た。その本には、速度も加速度も厳密解の式が載っていた。 戻る Home |