ゴシックアーチ

 スペインにおける建築史の講演を聴いてきた。スペイン語講師のライフワークであるスペイン研究の一環の発表をお茶菓子代だけで聞かせてもらった。

 建築の歴史に偏らず時代背景の説明から始まった。フン族の圧迫による民族大移動の玉突き現象で、415年イベリア半島に西ゴート族が入ってきたところからだ。
 その後、イスラム勢力の北上、レコンキスタと話が進んだ。エル・シドなど他にもいくらか知識があったが、話を聴いて点が線に繋がった。
 レコンキスタには数百年を要したが、イスラムの北上は10年ほどで達成されたという話には驚いた。

 ロマネスク様式からゴシック様式へと時代が移って行ったのだが、簡単な違いの見分け方は窓の形状と壁の厚さだ。前者は半円形のアーチ形状だが、後者はゴシックアーチともいわれる円弧2つを突き合わせた形状だ。他にフライングバットレスの発明により、後者の壁は薄く高くなった。
 柱をつなぐアーチ構造で柱の高さを一定とすると、半円アーチの場合は柱の間隔が変わると全体の高さが変わってしまう。これに対してゴシックアーチの場合は、全体の高さを共通にするために円弧の半径を変化させて柱の間隔を自由に設定できる利点があったという。

 アーチの強度については予てより興味があったが、改めて調べてみた。例えば頂点のキーストーンに垂直な力を加えると、半円アーチではほぼ水平方向に力が分散する。一方ゴシックアーチは尖っている分下に向かって力が分散する。これがアーチを支える柱を横に押す力の差となり、強度に差が出るようだ。これまで窓の形状で比較していたのでなかなか理解できなかった。
最初期のゴシック教会はフランスのサン・ドニで建築された。修道院長はモダン様式と名付けたが、批評家はゴート人が建てたように野蛮だという意味でゴシックと呼んだという。

 これまで十数年に渡り欧州詣をしてきたが、その建築美に魅せられたのも出掛けた理由の一つだった。20ページもの資料を頂いた。講演で全て話できるものではなかったが、改めて資料を読み直していきたい。 (2016/5/18)

2016/6/15追記
 先月の会で終わらなかった残りの話を聴いてきた。ほとんどガウディとその建築についてだ。彼の作品には圧倒されるが、どうしてそれがもてはやされているのか不思議な思いもしてきた。彼は日本でいえば幕末から大正まで生きた。後援者にも恵まれて多くの作品を残した。しかしその後援者が奴隷貿易にも手を染めていて、莫大な収入が援助に回ったことが事が分ると、彼の作品殆どはバブルの産物にしか思えなくなった。


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